死に損ないの私は孤独なネクロマンサーに拾われる

黒月白華

第21話 魔力封印を解きます

森の朝…。
目が覚めると低血圧なバルトルトは昼過ぎまで起きないので寝ている。
良かった。安心した顔。
手は繋いだままで少し恥ずかしい。
昨日彼と初めてキスをしてしまった。
そう…初めてのキス。
短かったけどなんか凄く嬉しかったな。
後、ようやく恋人になれたんだと思うと嬉しくて堪らない。

余韻に少し浸っているが、こんな寝坊助はさっさと置いて朝食を食べよう。

するりと手を解きキッチンに向かう。
朝食を作り食べて洗い物をして洗濯して畑の様子を見て陽が真上に来た頃ようやくバルトルトが起きてきた。半目である。
そして私をみると顔を赤くした。
昨日のことをようやく思い出したようだ!

「おっ…起きてたのか!」
と言うからこっちも半目になった。

「当たり前ですよ。もう昼ですよ。バルトルトさん?私ちゃんと朝食食べて掃除やら洗濯やらして畑にいるんです」

「ん…ご、ご苦労様…」
とポリポリ頭を掻いた。

「ほらさっさと顔洗って昼食にしましょう!」
と促しバルトルトは顔を洗いに行く。その間に昼食をジュージューと作る。

バルトルトは身支度を済ませてコホンと一つ咳払いした。

「食べる前に言っておくことがある!」

「なんですか??」
改まってどうしたというのか?

「……ヨハンナ…。俺たちはせ、正式に恋人同士となった!これは結婚前提でいいのか?」
と確認してくる。

「はあ。もうほとんど結婚してるようなものですけどね。やっと昨日告白してキスされたし」
と私は素直に言うと顔が真っ赤になるバルトルト。しまった。なんかもうちょっとしおらしくしたら良かったかな?

「う…お前…俺がこんなに思い詰めているのをあっさりと!!なんて図太い女だ!!……まぁ…わかった…そういうことにするとして!!」

「まだ何か?」

「あるから話してる!ロイ先生のことだ!」

「!!?」

「あいつはまた俺たちの前に現れるだろう。ここも何とか探してくるかもしれない。奴は執念深い」

「まぁ…確かにあの様子だし、バルトルトさんも見目は美しい人ですからね。私だって確かに貴方の見目がいいことは自覚してますけどやっぱり中身がねぇ、ほんと子供っぽいというか、守ってあげたくなるというか」

「なっ!俺は大人だ!!バカにすんな!!」

「ええ…そうですね、大人ならちゃんと生活してください!」

「む、むう……」
と少し反省するバルトルト。

「でも…そうですね。ロイ先生は厄介ですね。また襲いに来るかもしれないし…あの変態。…そうだ!私も魔力を使うことを覚えてみようかな!」
と言うからバルトルトは驚いた。

「お前…魔力なんて持ってたのか?」

「あ、はぁ。一応。でも上手く使えないから今まで使ってなかったと言うか…」

「なんだそりゃ!?貴族の娘なのに魔力操作を教わらなかったのか?平民産まれじゃあるまいし」
と不思議がるバルトルト。

貴族に産まれ魔力を持っている者は大体小さい頃から魔力操作を覚えさせられるものだ。バルトルトは王子だったしもちろん影の魔法を覚えたり今はネクロマンサーとして生活しているが。

「まぁ…その…私は…魔力を使うのが上手くないと言ったでしょ?コントロールが人よりも下手で被害が出るからとお父様に昔魔力を使うなと言われて…普通に過ごしてたんです」

「何!?お前まさか暴走型の魔力持ちだったのか!?」
暴走型…コントロール出来ずに人を傷付ける恐れがある魔力持ちである意味嫌われるのだ。モテない上に魔力までこんなのだと知られるとますます評判は悪くなるので私は使わずにいた。その方が平和だし。

昔、魔力テストの時皆をめちゃくちゃな風の刃で傷付けて自らも怪我したのだ。止め方がわからなくて私はその後なんとか先生に気絶させられて回復士にも迷惑かけまくり私の力は封じられた。

「まぁ…その…いろいろとあって…とにかく私力を使うことは慣れてないし、危ないんですよ。使うとわけわからなくなるし人や自分さえ傷付けてしまいますし」

「………なら俺が教えてやる」
と言うから首を振る。

「そんな!ダメです!!バルトルトさんの綺麗な顔とか身体に傷付けるとか!!私はともかく!」

「いや、もう暴走確定のように言うな!コントロールを覚えれば平気だろ!?お前みたいに最初に暴走して人を傷付けるのが怖くて魔力を封印してる者は他にもたくさんいるだろうが。

きちんとした手順で集中していけばコントロールできるようになるから」
とバルトルトが言う。

「………でも私…本当に大丈夫かな?」

「もし傷が付いても気にするな。お前に付けられた傷なら俺は嫌じゃない!」
と真剣な顔で言うから照れた。バルトルトったら!そんなに私のことを!!やだーー!もう!これがラブラブってやつなのねー!
と妄想してたら半目になられた。

「よし、さっさと飯食って森で練習だ!家だと被害出そうだしな」

「やっぱり暴走すること確定!?」
と言うと

「まぁ…お前が大人しく集中できれば森も無事だろうよ…。そういや、バプティストの野郎が数日後に来るらしいぞ」

「ああ、そうですか。そういえば彼にも相談するんでしたね」

「お前…他の男の話をするな!元婚約者だからって!」

「話振ってきたのそっちなのに」
横暴だわ。

「ともかく…お前の魔力封印印どこだ?」
魔力を封じた者は身体のどこかに封印印があり、それを取り除かないと魔力を使うことができないのだ。しかもそれは自分ではできなくて他の人の魔力で印を消すのだ。

「あ…はぁ…その…胸の真ん中ですね」
ガタンとコップをひっくり返すバルトルト。

「何でそんなとこに!!」
と赤くなるバルトルト。

「いや…小さな頃だったし一生魔力使うことないかな?って思ってたからそうそう他人が触れない所にしたんだすよ。ここなら服で隠れるし」

「おまっ!そんなの!そ、そこに触らないと解けないじゃないか!!それこそ恋人…あ、俺たち昨日から恋人じゃねぇか!!!」
と一人で悶えているバルトルト。

「まぁ…バルトルトさんには女の人とか男の人とかの身体に抵抗があるでしょうからそんな無理しなくても…。私は別に待ちますけど。別にバルトルトさんに触られても嫌でもないし」
とポッとすると

「そ、そりゃ…他の奴らの身体なんか見たくもないけど!お前だけなら俺だって緊張する!すすす、好きだから!」
と真っ赤になって言う。なんて可愛いんだろう!!と思ってしまうがダメだ。ここでからかったら。

あのロイ先生は私から見ても危険すぎる。もしかしたら私の知らない魔力を隠してるかも。そうなると戦いは避けられない。こんな怯えまくる王子様を守れるのは私しかいないのだ!
王子様を守る女騎士像が頭に浮かぶ。

「大丈夫です!ちゃちゃっと封印解いてください!!バルトルトさんを守るナイトになりますから私!」
と自分から服を脱ごうとして彼は慌てた。

「わぁ!辞めろ!自分から脱ぐな!絶対!なんか思い出して嫌だ!女達はいつも自分から脱ぐし!俺が脱がせてやる!これなら初めてだし!」
とかわけわからんこと言い出した。
仕方なくソファーに座り待っているが下を向きブツブツと赤くなるバルトルト。

「バルトルトさん?練習する時間無くなっちゃいますよ?」
と言うとようやくこちらにギギギと向き直るバルトルトは

「わかってる!イメトレしてた!!」
と言う。どんだけ!!

「封印消すだけなのに…」

「そんなこと言ってもみ、見えるし…」
と言うから

「いや、じゃあ見えないようボタン外すだけでいいですよ。シャツで真ん中だけ開けて隠しとけば胸見れませんから。私そんな胸もないですからね…貧相ですいませんけど」

「確かに!そうだな!お前は本当にないな!絶壁だ!あの女達みたいに肉よかではないしこれならいけるな!!」
となんか失礼なこと言ったので頭をを叩いた。

「絶壁で悪うございましたねぇ!!ふん!」
と怒ると

「別に…怒ることはないだろ。絶壁でも好きな女の胸だし!」

「また絶壁って言うな!!」
ともう一度叩いてからようやくそろそろとシャツに手を伸ばすバルトルト。とりあえず見えないよう私は手でシャツの上から胸を押さえているのに必死にボタンを赤くなり震えながら外すのになんかこっちまで恥ずかしくなった!!
いちいちバルトルトが綺麗な顔して赤く頰を染め困っているのは大変に色気がある!

これはロイ先生や他の奴らが襲いたくなるのもなんとなくわかった。

ようやくシャツのボタンがはだけて印が現れた。そこにバルトルトの手を当てる。

「封印よ…解かれよ!!」
とバルトルトが己の魔力を少し流し印が熱くなりシュウウウウと消えて綺麗になった。

「はぁ…お、終わったぞ!!」
くるりと直ぐに後ろを向いてしまうので私はボタンを自分で止めた。

「バルトルトさん…本当は私の胸見たかったんじゃあ…」

「は!?そそそそんなわけないだろ!!まだ昼間だぞ!あっ!!…いやなんでもない!!行くぞ!!森に!!」
とバルトルトは焦り立ち上がった。

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