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秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ

嵐華子

51.寝顔~闇の精霊side

「だ、駄目!」

 フェルやゼスト、大人達が騒がしいなと思ってたら、アリーがほろほろと泣いていた。
僕は闇の属性だから他人の精神状態がわかるんだけど、少しずつ苛ついてるって感じてたら拒絶する感情が急激に膨らんでびっくりした。
何か良くない方に傾倒していってるみたいだけど、もしかして僕の加護が影響したのかな。

 気がついたら、アリーを正面から抱きしめてた。
すぐに頭を撫でながら、精神に癒しの力を使う。

 あぁ、魔力がないから僕の加護が吸収される時に副作用で感情が不安定になったんだね。
魔力があれば加護の力と融合してすぐに体に吸収されるんだけど、今は本当に魔力がないんだね。
先に光の精霊の加護を貰ってたから、それと相剋し合ったのもあるのかも。
僕とフェルは対極属性だから仕方ないか。

 周りにもうやめるように叫んだら、今度はアリーがギュッてしてくる。
柔らかくて、心地良い。
首筋にかかる柔らかい髪の毛がくすぐったい。

 途端にフェルとリューイ以外は皆黙っておろおろし始めた。
フェルは色々気づいてるからだろうけど、リューイは····何だろう、改めて覗いてみてもやっぱり感情の起伏が鈍い。

 にしても、そんなにおろおろするならもっと早く解放してあげてよね。
普段は利発そうなしっかりした子だからわからなかった?
それとも僕が闇の属性だからわかるのかな。
アリーはこのお城に来た時からずっと気を張ってて、不安だったんだ。
僕は指輪の中にいたけど、元々は僕の主だったんだからすぐ気づいたよ。

 ユランと出会ってなければ、すぐにでも駆けつけて、また正式な契約をしたかった。
ゼストに出会ってなければ、またアリーに名前をもらって僕の事を呼んで欲しいんだ。
でもユランはもういなくなっちゃったけどゼストがいるし、昔のゼストに戻ってくれたから今はまだ名前は決められない。
精霊の9年なんて短いのに、ずっと命も心も危うい立場にいるゼストとの9年ですっかり絆されてしまってる。

「もうこの子と寝る、眠い。
邪魔したらもう嫌いになる。
もう金輪際お城にも来ないぃ」

 アリーの僕を絶対離すまいとする腕に意識を浮上させる。
義父と義兄が物凄い顔で睨んできてて、ちょっと腰が引けちゃった。
でも大事な女の子だから、求めてくれる限り僕だって離さないよ。
今の僕なら、人1人くらい別空間を作って囲うくらいできるんだからね。

「すぐに部屋を用意させるから、アリーを連れてってくれるかな?
皆も嫌われたくはないでしょう?」

 さすがに王太子も大人げないって思ってるんだね。
この場の全員から、ごめんなさいって意識がアリーに向けられてる。
リューイもちょっと思ってるんだ。

 僕は侍女に連れられて人払いされた廊下を歩く。
念の為、認識阻害の強いやつを侍女も含めてかけた。
もちろんアリーはお姫様抱っこだよ。
首にしがみつかれてるけど。
僕はこんな姿だけど、精霊って普通に力強いから、大人達の助けなんていらないよ。
それにアリーは軽すぎる。
ここにきて最初に食べた大量のスイーツはどこに入ってるのかな?

「んぅ~····」

 ベッドに運んだけど、宣言通り離してくれない。
離そうとすると可愛い唸り声でさらに引っ付いてくる。
今日はよっぽど心細かったみたいだね。
こんな風に求められた事が今の生になってからなかったから、凄く嬉しい。
愛されるって精霊には命の糧なんだ。

 アリーと自分に浮遊の魔法をかけて、ベッドの真ん中で一緒に横たわる。
あの時の僕はもっとずっと大人の大きさだったし、アリーは赤ん坊だった。
大きくなったね。
中身が大人な赤ん坊にはさすがに驚いたけど、今は少し退行したみたいだ。
僕の加護で心が体に合わせて調整してるんだろうな。

 ゆっくり頭を撫でて、ちゃんと熟睡できるように魔力で誘う。
体の方はフェルの祝福で安定してるみたいだけど、それがなかったら高熱を出してたはずだ。
今の体は昔と全然違ってて、脆すぎる。
何でこんなことになったの?
あんなにあった魔力が全くなくなっちゃうし、絶対死にかけたよね。
これじゃ僕に限らず全ての精霊と契約出来ないじゃないか。
元々契約してた精霊王達は契約をどうしたのかな?
今度フェルに聞いてみよう。

 それにしてもあの時と髪も目も色が違うけど、寝顔はあんまり変わってないね。

「可愛いな」

 ついつい口に出ちゃった。
ゼストの事が落ち着いたら、やっぱりあの頃みたいに側にいたいって思っちゃう。
今度こそ、この子が犠牲を強いられないように守りたい。

 僕はふと、リューイを思い出す。
フェルももう気づいてるはずだ。
どうしてそんなに感情がないの?
本当に記憶がないの?
アリーを見ても、思い出さない?

 君が本当に守るべきなのは、アリアチェリーナなんだよ。

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