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秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ

嵐華子

41.競技場から今まで~ゼストゥウェルside3

「な、何故?!」
「直接の謝罪を受け入れる理由がないから。
そもそもそうするのが当然、て態度で近寄る男を妹に近寄らせるほど不甲斐ない兄じゃないよ。
他の貴族は知らないけど、少なくともここは学園で君は学生だ。
僕は君という人間を判断してそう結論を出した。
話がそれだけなら、行くね」

 図星をつかれ、取り付くしまもなく、呆然と見送った。
そして私は翌日も、翌々日も玉砕した。

 そして今日。
つい先程の事だ。

「それだけしつこく食い下がる事でどういう意図を振り撒くか、君はちゃんと考えているのかな。
身分は関係ないとしながらも、この場は貴族社会の縮図だよ。
僕達グレインビル家は妹を危険に晒す人間には容赦しないし、王子としても至らなすぎるよ」

 最終通告だと、手厳しく指摘された。
言われずとも理解はしているのだ。

 しかしいまだに精霊殿は姿を現さず、私はただ指輪に魔力を込めて呼びかけるだけの状況に焦っていた。

「ゼストゥウェル殿、少々よろしいか」
「ルドルフ殿」

 この国の第二王子に後ろから呼びかけられ、空き教室へ連れていかれた。
込み入った話だろうからと、リューイは外で待機させた。

「何をそんなに焦っている?」
「それは····ただ妹殿に一目会って直接謝罪を····」

 苦しい言い訳だ。
しかし精霊殿の事を話す事もできない。

「アリアチェリーナ=グレインビルに婚約を申し込むつもりでは?」
「····何を····そんなことあるはずが!」

 まさかそんな勘違いが?!

「すでに口さがない者達はそう噂し始めた。
否定すればしただけ下衆な尾ひれがついて一気に広まるのが貴族社会だ。
特にその身はザルハード国第1王子で、アリアチェリーナ嬢は貴殿があの大会で人目も憚らず告げたように魔力のない幼い侯爵令嬢だ。
それにザルハードの事情を考えてもゼストゥウェル殿に敵味方双方から監視の目があるだろう。
真実など関係なく悪意と謀略の良い種となる。
当然傷つくのはアリアチェリーナ嬢だ。
先ほどのレイヤードの言葉はそういう意味だが、理解しているのか。
それに彼女に会ってどうしたい?」
「それは····言えない」
「言えないのはゼストゥウェル殿の都合か?」
「そう、なる····」
「ならば今回は諦めるべきだ」
「それも、できない」

 私の言葉に憤るような、訝しむような表情をする。

「何を隠しているのか俺にはわからんが、少なくとも俺は王族として立場のある者が弱い者の立場を考えずに行動する事はあってはならないと教えられている。
王族としてアリアチェリーナ嬢は守るべき弱者であり、そしてこの国の王族それぞれが友と認める者達が常に守る家族だ。
これ以上学園で俺の友人とその妹を危険に晒すのは許さない」

 思わず息を飲んだ。
確かに王位継承問題が発生している私には、敵味方関係なく監視の目がある。
実際、聞いてもいないのにザルハード国に縁者のいる者が数名グレインビル領での少女について進言してきたが、まさかあの領内を探ったのか。

(利用価値があると判断されれば、魔力を持たないか弱い少女が命の危険に晒される!)

「····わかった。
しかし私にも引き下がれない理由がある。
後見のギディアス殿には直接会う許可をいただきに行く」
「留学中は兄上が後見だ。
兄上が判断されるだろう」

 ルドルフ殿もどこかほっとしたようだ。

「1つ教えて欲しい。
グレインビル一家とはどのような者達だ?
先ほどの話を聞く限り、君達王族にとって単なる友人だとは思えない」
「俺達王族を立場関係なく1人の人間として接してくれる稀有な者達だ。
たまに不敬であっても、彼らは立場で俺達を見ないし、魔術だけじゃなく知略も含めて優秀なのに地位や立場に興味もない。
そもそも王族に義理立てして貴族でいるようなもので、気に入らなければ平気で身分など捨てかねん。
同じ王族ならそのような者がどれほどに得難いかわかるだろう」

 確かに大会や学園で見る彼らは、王子である私にも対等に接していた。
私にも彼らのような友人がいれば、少しはこの件を話せて、手を借りる事もできただろうか。

「ああ、わかるよ、羨ましい限りだ。
色々とありがとう」
「····いや」

 泣き笑いのような顔をしていると、王族としては余裕のある仮面をつけ直すべきだとわかっている。
わかっているが、すぐにはできなかった。

 「先に俺が教室をでる。
少し休んでから出るといい」

 そう言って彼はそのまま踵を返して教室を後にし、私は己の中の孤独と無力感を背負ってしばらく立ちつくした。

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