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秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ

嵐華子

40.競技場から今まで~ゼストゥウェルside2

「な、何が!
どうしたのだ?!」

 慌てて指輪と精霊殿を両手で包み込む。
何故こんなにも欠き消えそうになってしまったのだ?!
原因が全く思いつかない。

 魔力を両手に込めるように流すがほんの少し影が濃くなった程度で、いつものような少年の姿とはほど遠く、それが更に焦燥感をかきたてる。

「····ゼスト····ありがとう。
少し、休む、よ」

 靄となった精霊殿が指輪の黒曜石に吸い込まれて消える。
念のため黒曜石に魔力を流しながら、考えを巡らせる。

 思えば彼の姿は初めて白銀の少女を目にした時から見ていなかった気がする。
それに彼が珍しく知らない人間に興味を示したのも、あの時の少女のあの目も気になる。
これまでの彼との生活を考えても、突然こうなったタイミングを考えても、原因にあの少女が関わっているような気がしてならない。

 しんとした暗い部屋で、私は眠れぬ夜を過ごした。

 翌日から精霊殿は話しかけても返事がなく、姿を現さなくなった。
黒曜石の中にいるのを彼の魔力で感じる事だけが唯一存在を確かめる術となっている····。

 私の中に得体の知れない不安が漂う。
このまま姿を現さなくなれば、第三王子が立太子されてしまう。
他の誰が立太子されてもいい。
だがあの第三王子だけは駄目だ。

「あなたを失うわけにはいかない。
私の魔力を全て注いでもかまわない。
どうか元気を取り戻されよ」

 私は指輪に向かってそっと呟き、小箱に入れて上着にしまう。
2日間は学園も休みだったため、私はリューイを連れて初日の朝早くに王城内の書庫に行き、精霊関連の書物を大量に読みふけった。

 何か打開策が見つかれば····。

 夜は離宮に用意されている留学中の滞在部屋にも持ち込んで夜通し読みふける。
けれどやはり精霊については書かれている内容も薄く、打開策は見つからない。

 寮へ戻る前に留学中の私の対応をしてくれているギディアス王太子へザルハード国第一王子として面会の申請を出す。
もちろん原因に関わる可能性のある、あの少女との面会だ。
理由は謝罪としておいた。

 翌日寮の外でリューイと落ち合い、いつも通り学園へ向かう。
学生寮の中まで護衛はつけられない為、いつもここで落ち合う。
護衛には護衛宿舎があり、彼は毎日そこで寝起きしている。

 道中、何事かを感じたのかリューイからは何か言いたげな視線は感じたが説明する気力が湧かない。
いや、言葉にすると精霊殿が消えるかもしれない現実を突き付けられそうで怖いのだ。

 午前中は表面上はいつも通り授業を受けたが頭には全く入って来なかった。

「グレインビル殿」

 昼の休憩に入り足早に訪れた食堂であの日大敗したレイヤード=グレインビルに声をかけた。
王族、生徒会役員、侯爵以上上位貴族達は食事メニューが豪華な2階での食事をとるのがほとんどだが、彼はいつも庶民が食すような大衆メニューばかりの1階での食事を好んでいる。
目立つ存在だったからか以前から何となくだが目に止まり、知っていた。

「何か用かな?」

 浮かべる微笑みがとにかく冷たく感じて背筋に嫌な汗が伝う。
こんなものにこの学園の貴族令嬢がキャーキャーと興奮するのが理解できない。
確かに成績だけでなく顔も整っているのだが····。

「私が先日あなたの義妹殿に働いた無礼について、是非謝罪させて欲しいと思い声をおかけした。
ぜひ本人にも、父君にも直接謝罪する機会を許して欲しい。
体が弱いと聞いているので、私の方から出向きたいのだが、いかがだろうか」

 他国の王族の私が言うのだから、ここまで言えば手はずを整えられるはずと高を括っていた。

「お断りに決まってるでしょ」

 な、何だと?!

 予想に反して冷たく一刀両断され、愕然とする。
私はグレインビル一家を見誤っていたのだ。

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