秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ
31.黒い靄の正体
ちゃんと言ってくれないとわからないよ」
「レイヤード兄様····」
あれから帰って僕の部屋のソファで義兄様と2人きり。
僕はお膝に横向きに座って義兄妹でイチャイチャしております。
「ほら、アリー。
さっきからいっぱい触ってるんだから、どんな感じか教えて」
「んふふ。
ふわふわの犬耳と尻尾がとても癒されるし、逆立てた時の毛の具合も本物の触感で何度触っても飽きないよ。
兄様の本物の髪の毛の手触りもお耳と少し違う分さらさらしてるのが強調されて指先がくすぐったくなるの」
「アリーに髪の毛触られると眠くなっちゃうね」
「今日は兄様大会で魔力使ったし、もしかして疲れてる?
僕が黒い靄を見ちゃったせいで変な人にからまれたし、棄権させてごめんなさい」
レイヤード義兄様なら、絶対優勝できたはずなのに、申し訳なさがこみ上げる。
「何言ってるの?
僕は優勝なんてしたくなかったんだよ。
兄上みたいに王宮で働く気もないしね。
そうそう、僕こないだA級冒険者になったんだ」
「本当?!
兄様すごい!
お祝いしなきゃ!」
「その言葉だけで十分だけど、せっかくだからアリー特性オムライスが食べたいな」
「卵がふわとろなやつ?」
「そう、それ」
「すぐ作ってくるね!」
僕は義兄様のお膝から飛び降り····ようとして、腰に腕を回して抱き止められる。
「ぎゅーってして欲しいな、アリー」
「いいよ、甘えん坊な兄様」
僕は義兄様の首に掴まって抱きしめた。
ちょっと長めのさらさらな髪の毛が頬にかかってくすぐったい。
義兄様は覆い被さるように僕を抱き込む。
「アリー、教えてくれないかな。
アリーが見た黒い靄は、何?」
あ、それが聞きたかったのか。
僕が養女になる前の話に繋がるから、聞きづらかったのかな?
「兄様達には何でも話すって言ってたでしょ。
あれは指輪についてた精霊石に宿った精霊さんだよ。
色からして、闇の精霊さんかな。
まだそんなに強い力じゃないみたいだから、生まれて100年たってればいい方だと思う。
一瞬だけちゃんと姿が見えたけど、お互い望んで一緒にいるみたいだし、精霊が望んでいるようなら悪い人ではないはずだよ」
「闇の精霊なら、危険じゃない?
闇って物騒な言葉に聞こえるけど」
「全然違うよ。
光の対義語として闇は悪いって連想する人もいるだろうけどどちらも必要で、どちらかだけでは成り立たない。
1つの側面だけで言うなら光が肉体的なものに作用しやすくて、闇は精神的なものに作用しやすい。
それだけの違いだし、どんな魔法にも必ず良い面と悪い面があって、結局は使う人次第。
闇の魔法を使う人が今は少ない?
でないとそんな疑問はおきないよね?
今の魔法の価値観は僕より兄様のが詳しいと思う」
「うん、闇の魔法を使うのを僕は見たことない。
昔は使う人がいたみたいだけど、迫害された歴史があるんだ」
「····そう、なの?」
ふと、僕の大事なあの子を思い浮かべてしまう。
見つからないのは、どうして?
「アリー、今何を思ったか教えて?
どうしてそんなに不安そうなのかな?
僕はアリーを信じるよ」
「····何で歪められてるのかなって、思ったの。
他のこともそうだけど、精霊も精霊石もすごく少ないし、理の魔法のはずなのに歪に感じる。
僕の常識からは外れすぎてて····怖くなる。
それにずっと探してるあの子がこんなにも見つからないのは····その····」
「アリー?」
「····今はちょっとわからない、兄様。
時々夢を見てて、嫌な予感しかしなくて····ごめんね····やっぱり考えがまとまらない。
どう言えばちゃんと伝わるのかな····わからないよ」
そう、僕は昨年のあの発熱以来、同じような夢を時々見ている。
目を覚ます度に焦燥感に駆られて泣きたくなる。
ふと、義兄様の腕の力が強まった。
「アリーは何か不安になってるのかな?」
「う····ん、多分そう、かもしれない」
「どんな夢をいつから見てる?」
「真っ暗な中で小さい子供の声で、助けを求めてる夢。
商業祭の後に体調崩してからかな」
「そっか。
随分長い間見てるね。
ちゃんと教えて欲しかったな」
「ごめんね、兄様。
最初はただの夢だと思ってたの」
「もっと頼って欲しいんだ。
僕達の大事な家族で、僕のかけがえのない妹なんだから」
「うん、僕にとってもそうだよ。
母様も父様もバルトス兄様も、もちろんレイヤード兄様も愛してるよ。
皆初めて僕に見返りのない愛を与えてくれたの。
愛情を持って僕に名前を付けてくれた。
皆に出会えて本当に嬉しいんだ」
僕も義兄様に抱きついてる腕に力を込める。
どうか、義父様や義兄様達だけは今までの人達のような目で僕を見ないで。
僕のことを離さないで。
「可愛いアリー。
僕達はずっと家族だよ」
それから義父様とバルトス義兄様が帰ってくるまでレイヤード義兄様は僕を抱きしめてくれていた。
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