【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

68.レンカの目覚め

「目が覚めたか?」

 胡座をかいてレンを抱き抱えた状態で獣気を体に流しつつ、こっそりと乳の匂いのその奥に隠れている、この可愛らしくもいじらしい幼い体が発する甘く心地の良い匂いを堪能していると、うっすらと瞼が開き隙間から垣間見えた黒目に気づいて声をかける。

 眉が訝しげにひそめられ、いくらか細くなった左腕を気だるそうに持ち上げる。
と、こちらへ伸ばしてくるからてっきり顔に触れたいのだろうかと顔を近付けるが、そこを素通りしてそっと俺の右耳に触れてきた。

 やばい、この可愛らしい手の平の感触だけで夢心地だ。
もっと触って欲しくなって今度は頭を前に俯ける。

 レンは暫くぼうっとした顔で両耳を交互にふにふにと触っていたが、不意にピクリと強ばって心地良い小さな手が離れていく。
めちゃくちゃ名残惜しい。
むしろ俺の方から膨らみは減ったが触り心地の良さげな頬に頬ずりしたい。

 頭を戻すとレンは意識を覚醒させたのか体を起こそうとするので手伝ってやる。

「ここ、は····」

 掠れた声も愛らしい。
用意されていた脇机の水差しから小さめのコップに水を入れて差し出す。

 大人しく両手に受け取ってコクリコクリとゆっくり飲みほす。
やばい、小動物がいる。
色々食べたい。

 喉が潤ったのか、ほぅっと息をつく様がここ1番に色っぽくて心臓が跳ねる。
くそ、たまらなく可愛いが過ぎるんだが、ちょっとだけ食べていいだろうか。

 飲み終えたコップを受け取ってテーブルに戻すが、何だか雰囲気がいつもと違うのか?

 レンは暫く無言で周りを見回していたが、やがて右手で顔を覆って盛大なため息を吐いた。

『アノ、クソガミ····』

 聞き取った発音はこうだったと思う。
多分少し前にゼノリア神に誘われて見た夢の中で話していた言葉だろうが、夢の時のように何を言っているのかは理解できなかった。

「レン?」

 躊躇いがちに呼び掛けるとゆっくり手を下ろしてこちらを向いた。
うん、物憂げな表情も愛らしいな。

「状況は理解した。
とりあえず体が楽になったのは君のおかげだね。
ありがとう。
私の方はもう大丈夫だから、トビドニア達と決めた通りに行動してくれ」

 え、私とかトビドニアって、いきなりどうしたんだ····。

 別人のような雰囲気と口ぶりに思わず唖然としていると、不意にガチャリと奥の部屋のドアが開く音が聞こえた。

「せやな。
兄さんはそろそろザガド様の所に戻らんと、夜が完全に明けてまうわ」
「え、ちょっと待て、どうなってる?!
レン、だよな?」

 奥から出てきたトビとレンを交互に見やってしまうが、湧き起こるレンへの妙な違和感が気持ち悪い。

「ああ、レンだ。
君の知るレンではないってだけだが、それもすぐに戻るから心配はいらない」

 何だ?
レンが別人?
いや、でもさっき獣気は渡せたから番なのには違いない。

「せやな。
何年ぶりやろ?
15年ぶりくらい?
ホンマお久しぶりやな、レンカちゃん。
まさか出てくるとは思ってなかったわ」
「そうだね。
もうそんなになるのか。
無理矢理叩き起こされた。
暫く危機回避したらまた引っ込むからトビドニアも心配はしなくていい。
というか私が出てくる事が2度と無いようレンを支えて欲しいと言ってその舌を再生したし、あの国を潰してしがらみからも解放したはずなんだけど、どういう事だ?」
「そんな睨まんといてや。
これでもかなり頑張ってたんよ?
もちろんレンカちゃんにも感謝してるって」
「まぁいいや。
とりあえずすぐに君は戻らないなら2人とも今すぐ奥の部屋に行って、良いと言うまで出てくるな」
「え、俺も?」
「どういう····」

 事だ、と続けようとしてこの部屋の扉の向こうに気配を感じた。

「兄さん、行くで!」

 トビが俺の腕を掴んでベッドから引きずるように奥の部屋へ連行する。
トビはやはり相当鍛えているようで引きずる力が俺達と変わらない程に強かった。

 こちらのドアが閉まると同時にレンの部屋に誰かが忙しなく入った気配がした。

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