【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

52.新作料理~ジェロムside

 ザガド様からは品数は少なめで肉料理をメインの大皿料理を獣人5人分と聞いているから、下味をつけて焼くだけの状態にしておく。

「おじさん、僕もお礼におじさんの朝ごはん作ってもいい?」

 坊主が声をかけてくる。

「坊主に作れるのか?
気持ちは嬉しいが、体調悪いんじゃないのか?」
「果物食べたら落ち着いたよ。
やっぱり駄目?」

 確かに少し顔の赤みは引いたか。
他の奴らが来るにはまだ早いし、まぁいいかと果物包丁とまな板と食材を出してやる。
思った通り坊主の小さな手には果物包丁が丁度良い大きさだったな。
早朝勤務は賄いを作ってかまわない規則だから坊主に作らせても特に問題はねえ。

 作り慣れているのか、坊主は手早く食材を切って見たことのない料理を作ったのには驚いた。

 2種類の肉に下味をつけて1つは卵にくぐらせから昨日の残りで固くなったパンを細かく砕いてまぶし、もう1つは残った卵に小麦粉を溶いてそれぞれ油で揚げた。
ソースも果物に幾つか調味料をたして煮詰めた黒っぽいものと、卵と酢を混ぜた白っぽいものに酢で茹でた葱を混ぜたものの2種類あった。
トンカツとチキンナンバンというらしい。

「旨いな!
こんなの初めて食った!」

 やばい、すげえ、全部旨いぞ。
普段使うのと同じ食材でこんなにも違う料理ができるのか!

「良かったぁ!」

 花が咲いたように笑う坊主に俺はメロメロだ。

「はよーっす!
あれ、料理長この子誰っすか?」
「え、人属?!
しかも黒?!」
「何でこんなちっさい子にそんなもん手首に着けてんですか!
人手不足で買って来るにしても酷すぎです!」

 と、ここで騒がしい下っ端3人が登場しちまったな。
2人は狼獣人で最初に話したのがペペで次がモンテ、最後のが竜人のダルシンという。

 つうか何で俺が責められるんだ!

「買うか!
こっち来る時拾ったんだ!
手首のも俺じゃねぇぞ!
それよりこれ食ってみろ」

 坊主が作った料理をすすめてやる。
初めて見る料理だと口々に呟きながら1切れずつ口に運ぶ。

「「「めちゃくちゃ旨い!」」」

 3人とも絶賛していく。

「よし、俺の方はこの料理を出す!
本城の方はいつも通りの調理だ。
坊主、名前は?」
「····レン」

 少し間を置いて答える。
もしかしたら偽名なのか?
まあ本名名乗りたくないならそれでいい。

「レン、俺はジェロム。
こっちの2人は狼属でデカイのがペペ、普通のがモンテ。
こっちは竜人のダルシンで、王族とその客人に関しては原則俺達と別の班で手分けして回してる。
なあ、レンのレシピ貰ってもいいか?」
「うん、いいよ」

 今度はすんなり答えてくれたな。

「レンは誰かに買われてここに来たのか?」
「ううん、拐われたの。
熱出て意識無くなってて、気がついたら大きいお部屋のベッドだった。
手首のコレも起きたらついてたんだ」
「大きい部屋のベッド····誰に拐われたかわかるか?」
「青っぽい竜。
川を渡ったの」
「····わかった。
その部屋に戻りたいか?」
「嫌」

 即答だな。

「俺といるか?」
「いてもいいの?」
「レンがそうしたいなら」
「いたい」

 青っぽい竜と川を渡ったとなるとザッカルード国からペネドゥル様が拐ったってとこか。
それ以外の国から拐うには竜体では無理だが、あの国から拐うなら魔の森に関係してるのか?
黒髪黒目なら孕み腹にする為····大きい部屋のベッドって事は城の客室から逃げたんだろうが、熱が下がったら坊主の身が危ないな。
手を出すには幼すぎると思うが。
いや、それ以外にも何かあるな。

「なら取り敢えずは俺が面倒見る。
手首のそれは魔力拘束具だから力任せに取るのは反動で手首がぶっ飛びかねない。
必ず外すからちょっと待ってくれるか?」
「うん、ありがとう」
「お前ら、レンの事は他言無用だ。
俺が預かってる間は料理のレシピを教えて貰う。
これは料理長権限だ」
「「「はい!」」」

 この3人は近衛隊の時から面倒を見ていて信用できる。

「レン、これから朝の戦場になるからお前は厨房の休憩室で寝てろ。
また顔が赤くなってるから熱が上がったんじゃないか」

 今は詳しく聞く暇がねえ。
俺はレンを抱え上げて休憩室へ運ぶ。
やっぱり体が熱いな。
片手でレンを抱えたまま、空のコップを持って休憩室に行く。
仮眠用にソファも入れてあるのでそこで寝るよう伝えた。

 空のコップをサイドテーブルに置き、手をかざして水と氷を出すと、レンはへにゃりと笑う。

「氷だぁ····」
「ちゃんと水分補給しろよ」

 そうして厨房に戻った俺はレンのレシピでザガド様達の朝ごはんを支度した。

 初めての料理は作っててもやっぱり楽しいな。
他の3人も俺の手元を興味深そうにずっと見ていた。

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