【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語
51.坊主~ジェロムside
「何だ?」
保冷庫から食材を取ろうと入ってみれば、何やら黒い影が薄黄色の円い果物を持って立っていた。
ーーーー
俺はジェロム。
城の料理長をしているが、ザガド様の宮の料理人でもある。
元はザガド様の近衛騎士隊長兼側近で、兄君である陛下が500年ほど前に即位した直後に産まれたザガド様が成長してからは主君と仰いだ彼と共にこの国を駆け回った。
ザガド様は生き生きと国中を回っては鎖国によって不満を抱えがちな国民に寄り添い、時に陛下の判断を仰ぎつつ問題を解決し、尊敬する王であり兄でもある陛下に臣下として支える事を生き甲斐としていたんだ。
だが事態が急激に変容しちまった。
陛下は約6年前に番を求めて召還魔術を行った。
竜人の王にのみ伝わる秘術らしく、異世界に番がいた場合のみ成功するものらしい。
その番を伴侶に迎えた後、彼が余命幾ばくもない事がわかった陛下はその命運を共にする選択をした。
当然次代の王を定めなきゃならないが、陛下はザガド様を王太子に据えようとしたところでザガド様は猛反発して権力から遠ざかるように奔放になって、城から出て放蕩する事も増えちまった。
おかげで末の王弟である野心家のペネドゥル様が権力を自らに集中させていくのを陛下も止められなかった。
俺達ザガド様の側近数名も主君の王位を敬遠するその気持ちを昔から知っていた背景もあって散り散りになった。
俺が料理人を選んだのは料理が昔から好きでよく城の調理場を手伝っていたからなのと、当時の料理長が年齢的に引退を考えていたからだ。
元々1人で身の回りの事をこなしていたザガド様は離宮を返上し、陛下達が住まう本城の一角で客室の幾つかを繋げて自分の宮とした。
陛下は我が国屈指のザガード様の結界内で弱っていく伴侶を守りたかったのもあったんだろうな。
居室近くの一角に認めたのだ。
王位を狙うペネドゥル様を警戒しての事だろう。
そんなこんなでこの数年、城の料理長をやってる俺はまだ薄暗い早朝に厨房へやって来た。
もう少ししたら下っ端達が来るんだが、ザガド様が昨日の夕方に商人数名とふらっと帰ってきたと思ったら、自らの客人として招いてしまった。
昨日の夕食は本城の方で共同で作って事なきを得たが、ペネドゥル様からやはり嫌がらせのような命令が厨房に下された。
ザガド様の客人はザガド様付きの料理人のみで対応せよ。
本当に藍色の王弟は王に向かねぇな。
城の召し使いがここ数ヶ月で殊更少なくなっているのは陛下が眠って彼が取り仕切るようになってからだって気付いていねえのか?
ラスイードも何であの王弟の側近になんかなりやがったんだ。
まぁそんな訳で俺は厨房の下っ端よりも早く厨房入りしたのだ。
昨日のうちに下ごしらえだけはやらせといて良かった。
そうして薄暗い保冷庫に足を入れてからの黒い影との遭遇。
良く見れば、珍しい黒髪に黒目の小さい人属の子供だった。
俺みたいなありふれた赤茶の髪と深緑の目とは大違いだ。
黒いフードを軽く羽織り、中着は白い寝間着?
素足に····チラッと見えてんの、手錠か?!
目を凝らせば魔力拘束具だとわかったが、こんな幼子に誰が何の目的で····奴隷?
····にしては小綺麗だし顔つきも擦れてはいない。
坊主は両手で果物を持ち、少し潤んだ目で特に怯えた訳でもなく2mを超える筋肉質で強面な竜人の俺をただぼうっと見上げていた。
随分と肩で息をしているが、具合でも悪いのか?
「坊主、腹減ってるのか?」
果物から手を離す気配がないから一応聞いてみるとコクリと頷く。
「剥いてやるから、こっち来い」
ひとまず保冷庫から連れ出そうと声をかけるとちゃんとついて来た。
厨房の片隅に椅子を置いて座らせてやる。
顔が赤いが、熱でもあるのか?
触れて確めようかと思ったが、多少は警戒しているようなのでやめた。
驚いて騒がれると後が面倒だ。
皿と包丁を取ってきて皮を剥いて切り分けてやった。
「自分で食えるか?」
拘束具が擦れたせいだろうが手首が赤くなっているのが痛々しい。
坊主は頷くと力もあまりないのか鉄でできたそれを重そうに動かしながら、手に取ってシャリシャリと食べ始めた。
「リスみてぇだな。
上手いか?」
口をモグモグ動かしながらの上目遣いにおっさんは胸を撃ち抜かれちまったぞ。
俺はこの厳つい外見に似合わず可愛い物好きなんだ。
大昔に1度見たが獣人のリス属がリスの姿になった時の衝撃は未だに忘れられない。
俺の質問にコクコク首を縦振りする姿もたまらん。
2切れほど一気に、といっても俺にはかなり遅いペースだったが食べ終わったところでほぅっと息をついた坊主は我に返ったようだ。
「ありがとう、おじさん。
勝手に忍び込んでごめんなさい」
ペコリと頭を下げる。
声も可愛らしい。
「まだ他の奴らは来ねぇから安心して取り敢えず食え。
俺は今から調理しなきゃなんねえんだ。
何かあれば呼べ。
それと事情は後で聞かせろよ。
勝手にいなくなって他の獣人に見つかる方が危険だと思ってろ」
俺は坊主がわかったと返事をしてから上着を坊主に頭から被せ、今度こそ準備を始めた。
保冷庫から食材を取ろうと入ってみれば、何やら黒い影が薄黄色の円い果物を持って立っていた。
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俺はジェロム。
城の料理長をしているが、ザガド様の宮の料理人でもある。
元はザガド様の近衛騎士隊長兼側近で、兄君である陛下が500年ほど前に即位した直後に産まれたザガド様が成長してからは主君と仰いだ彼と共にこの国を駆け回った。
ザガド様は生き生きと国中を回っては鎖国によって不満を抱えがちな国民に寄り添い、時に陛下の判断を仰ぎつつ問題を解決し、尊敬する王であり兄でもある陛下に臣下として支える事を生き甲斐としていたんだ。
だが事態が急激に変容しちまった。
陛下は約6年前に番を求めて召還魔術を行った。
竜人の王にのみ伝わる秘術らしく、異世界に番がいた場合のみ成功するものらしい。
その番を伴侶に迎えた後、彼が余命幾ばくもない事がわかった陛下はその命運を共にする選択をした。
当然次代の王を定めなきゃならないが、陛下はザガド様を王太子に据えようとしたところでザガド様は猛反発して権力から遠ざかるように奔放になって、城から出て放蕩する事も増えちまった。
おかげで末の王弟である野心家のペネドゥル様が権力を自らに集中させていくのを陛下も止められなかった。
俺達ザガド様の側近数名も主君の王位を敬遠するその気持ちを昔から知っていた背景もあって散り散りになった。
俺が料理人を選んだのは料理が昔から好きでよく城の調理場を手伝っていたからなのと、当時の料理長が年齢的に引退を考えていたからだ。
元々1人で身の回りの事をこなしていたザガド様は離宮を返上し、陛下達が住まう本城の一角で客室の幾つかを繋げて自分の宮とした。
陛下は我が国屈指のザガード様の結界内で弱っていく伴侶を守りたかったのもあったんだろうな。
居室近くの一角に認めたのだ。
王位を狙うペネドゥル様を警戒しての事だろう。
そんなこんなでこの数年、城の料理長をやってる俺はまだ薄暗い早朝に厨房へやって来た。
もう少ししたら下っ端達が来るんだが、ザガド様が昨日の夕方に商人数名とふらっと帰ってきたと思ったら、自らの客人として招いてしまった。
昨日の夕食は本城の方で共同で作って事なきを得たが、ペネドゥル様からやはり嫌がらせのような命令が厨房に下された。
ザガド様の客人はザガド様付きの料理人のみで対応せよ。
本当に藍色の王弟は王に向かねぇな。
城の召し使いがここ数ヶ月で殊更少なくなっているのは陛下が眠って彼が取り仕切るようになってからだって気付いていねえのか?
ラスイードも何であの王弟の側近になんかなりやがったんだ。
まぁそんな訳で俺は厨房の下っ端よりも早く厨房入りしたのだ。
昨日のうちに下ごしらえだけはやらせといて良かった。
そうして薄暗い保冷庫に足を入れてからの黒い影との遭遇。
良く見れば、珍しい黒髪に黒目の小さい人属の子供だった。
俺みたいなありふれた赤茶の髪と深緑の目とは大違いだ。
黒いフードを軽く羽織り、中着は白い寝間着?
素足に····チラッと見えてんの、手錠か?!
目を凝らせば魔力拘束具だとわかったが、こんな幼子に誰が何の目的で····奴隷?
····にしては小綺麗だし顔つきも擦れてはいない。
坊主は両手で果物を持ち、少し潤んだ目で特に怯えた訳でもなく2mを超える筋肉質で強面な竜人の俺をただぼうっと見上げていた。
随分と肩で息をしているが、具合でも悪いのか?
「坊主、腹減ってるのか?」
果物から手を離す気配がないから一応聞いてみるとコクリと頷く。
「剥いてやるから、こっち来い」
ひとまず保冷庫から連れ出そうと声をかけるとちゃんとついて来た。
厨房の片隅に椅子を置いて座らせてやる。
顔が赤いが、熱でもあるのか?
触れて確めようかと思ったが、多少は警戒しているようなのでやめた。
驚いて騒がれると後が面倒だ。
皿と包丁を取ってきて皮を剥いて切り分けてやった。
「自分で食えるか?」
拘束具が擦れたせいだろうが手首が赤くなっているのが痛々しい。
坊主は頷くと力もあまりないのか鉄でできたそれを重そうに動かしながら、手に取ってシャリシャリと食べ始めた。
「リスみてぇだな。
上手いか?」
口をモグモグ動かしながらの上目遣いにおっさんは胸を撃ち抜かれちまったぞ。
俺はこの厳つい外見に似合わず可愛い物好きなんだ。
大昔に1度見たが獣人のリス属がリスの姿になった時の衝撃は未だに忘れられない。
俺の質問にコクコク首を縦振りする姿もたまらん。
2切れほど一気に、といっても俺にはかなり遅いペースだったが食べ終わったところでほぅっと息をついた坊主は我に返ったようだ。
「ありがとう、おじさん。
勝手に忍び込んでごめんなさい」
ペコリと頭を下げる。
声も可愛らしい。
「まだ他の奴らは来ねぇから安心して取り敢えず食え。
俺は今から調理しなきゃなんねえんだ。
何かあれば呼べ。
それと事情は後で聞かせろよ。
勝手にいなくなって他の獣人に見つかる方が危険だと思ってろ」
俺は坊主がわかったと返事をしてから上着を坊主に頭から被せ、今度こそ準備を始めた。
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