【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

24.秘匿事項

「つまりこの子はグランの番で、グランを助けた魔術師もこの子で、魔の森に住んでいて、ここも魔の森で、あり得ない治癒術を持っていて、黒竜の番でもあって、魔獣に好かれていて、うちの大叔父がこの子のお爺ちゃんで、うちの大叔父が黒竜の母竜である白竜の番····」

 団長、副団長に着替えを勧めたレンは料理を始めた。
俺はさりげなくレンの後ろに立つ。
むさ苦しい野郎共の裸なんぞ見せられん。
着替えてベッドに腰掛け、頭を押さえてブツブツ呟く副団長は無視だ。
腹のあたりが破けている服よりはと、ここに置いてあった俺の服を貸しただけ有り難く思え。
団長はテーブルの椅子に座って静かに俺達を観察している。

「グランさん、これ」

 レンは向こうを向いてご飯を作り、皿に盛っては後ろ手に俺に渡す。
俺の意図には気づいているようだ。
にしても手際も良いし、良い奥さんだな。

 最後にいつものお茶を淹れると、ドアを開けた。

「僕はご飯いらないから、3人で話してて。
昨日の月花が月夜花に変わってる頃だから、ちょっと行ってくる。
森を出る時にウォンちゃんを呼んで。
間違ってもそのまま出ようとしちゃ駄目だよ。
確実に襲われるから」

 それだけ言うとウォンと一緒に出て行った。

「幼いのに、随分と気が回る子ですね」
「一応14才らしいですよ」
「····嘘でしょう」

 やっぱりそうなるよな。
見た目10才いかないくらいの可愛らしいあの子は俺の番なのだ。

「····せっかく用意してくれたんだ。
報告を聞きながらいただこう」

 何か言いたげに俺の方を見た割には団長の言葉は普通だったが、もちろん従うに決まっている。
俺は頷いて、食べながら報告をしていく。

 が、しかしだ····2人とも食べるの早くないか?!
報告で俺ばっかりが話すから、全然食べられないじゃないか!
いつもの2倍速でたいらげる団長と副団長の皿を見る目が獰猛だ。
熊はともかく、兎って肉食か?!

「グランは私達が魔の森でワイバーンごと落ちたのを聞いて1人で来たんですね。
他の第5隊は森の外で待機中、と」
「はい、魔の森に1番近かったのも俺の隊でしたから。
2人とも、もっとゆっくりよく噛んで食べて下さい。
俺が魔の森に1度入った事は周知の事実なので、入りやすかったです。
でもまさかファルと速攻で出くわしたとは思ってませんでした。
ほら、急いで食べると消化に悪いですよ」
「あぁ、レンが来なければ殺されていただろう。
あんなに戦慄したのは初めてだ。
心配しなくとも俺は消化不良を起こした事はない」
「団長達が完全な侵入者ならレンがいても間違いなく瞬殺されたと思います。
レンも基本的には自然淘汰に口は出しませんから。
病み上がりですし年齢的にもそろそろ食べると胸焼けしますよ」
「なるほど、確かにワイバーンは瞬殺だったな。
俺の胃はまだ現役だ」

 俺は団長との密かな牽制をやめ、改めて2人を見つめる。

「団長、副団長、レンの事ですが····」
「秘匿しましょう」

 思わず副団長を見やると、やれやれと困った顔をする。

「あの子の魔力や人属である事は獣人にとって魅力的です。
しかしそれ以上に火種になりかねません。
本人もこの森から出る気はないようですしね。
私をお爺ちゃんなどと呼ぶのは不埒な事ですが、ここまで獣人を清んだ目で見る世間にすれてない人属もそうそういません。
正直外に出る方が危ない。
それに私達騎士3人の命を救い、2人の騎士を敬意を払って弔ってくれたのもあの子ですからね。
まぁ私をお爺ちゃんなどと呼ぶのは不埒な事ですが、大叔父の家族のようですし、彼の親戚としても庇護してやらねばならないでしょう」

 よっぽどお爺ちゃん呼びが嫌なんだな。
2回も言ってる。

「ともかく、お前の番の件は3人だけの秘匿事項で良いな」
「ええ、私の名に懸けて誓いましょう」

 良かった。
この2人が魔の森に入ったと聞いた時から心配だった。

「しかしワイバーンの襲撃とジャカネスタの奇行はきな臭いな」
「はい。
第5隊の半分はドルドラ国の王族を王都に送り次第、ジャカネスタ国の密偵として潜ませた者と連絡を取るよう副隊長に命令しておきました」
「わかった。
ではまずは森を出よう」

 団長の言葉でウォンを呼ぶとレンを乗せて戻って来た。
ん?
何かウォンが咥えて····大斧?

 団長はウォンが咥えていた大斧を見て顔を綻ばせた。

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