前世が最悪の虐待死だったので、今生は思いっきり人生を楽しみます
第28話:思い出の味
美味しい、とても美味しい、美味し過ぎて涙が流れる。
「素晴らしい、とても素晴らしいです、イーライ様
天然醸造の米酢と白味噌で分葱と青柳を和えたぬた。
二年以上の長きに渡って天然醸造された豆味噌を使った肉味噌。
大豆と米麹を使って天然醸造された白味噌で銀鱈を漬けて焼いた西京焼き。
天然醸造の醤油と味醂と日本酒と黒砂糖を使って鰤と大根を煮た鰤大根。
他の料理も全て本格的な天然醸造の最高級調味料を使っております。
これらが全て再現できれば、本格的な日本料理をこの世界で作れますぞ」
セバスチャンが珍しく心から感情を高ぶらせている。
あいつが俺に差し入れてくれていた弁当は、そんなに凄いモノだったんだ。
確かに何時食べても、ほっぺたが落ちるかと思うくらい美味しかった。
あの時は、普段ろくなものを食べさせてもらえなかったから、常に飢えていたから美味しいのだと思っていたけれど、違ったんだな。
凄く手間とお金がかかっただろうに、ありがとう。
もう一度会いたいけれど、不可能なのだよな。
あいつの事だから、殺された俺のために戦ってくれているんだろうな。
あいつやあいつの家族が、母と母の愛人に狙われてなければいいのだが。
自分たちの悪事を隠蔽しようとしたテレビや新聞に、俺を殺したと罪をなすりつけられていなければいいんだが……
「イーライ様、もうお食べになられないのですが。
イーライ様が食べられないと、他の者が食べられません」
「……ああ、食べるよ」
セバスチャンは感傷に浸ることも許してくれないのか。
いや、哀しみに沈みそうになっている俺の事を気遣ってくれたのだな。
生れた時から養育係として世話してくれてたセバスチャンの表情くらいは分かる。
心配してくれているのだ、いじける事も八つ当たりする事もできない。
それに、せっかく創り出したあいつの料理を食べないなんてありえない。
美味しい、本当に美味しいのだけれど、何かが違う気がする。
味も香りも食感も、とても美味しいのだが、想い出の味とは微妙に違う気がする。
あいつが作ってくれた弁当と同じとは絶対に言えない。
何故なんだ、俺は想い出の味を再現したくて、必死で思い出したはずなのに。
魔力も惜しむことなく注ぎ込んだというのに、何故なんだ。
絶対に認めないが、俺があいつの事を大切だと思っていないと言うのか。
「イーライ様、気になさることはありませんよ。
前世の世界と今生の世界では、食材が同じではありません。
中には同じ食材もありますが、美味しく品種改良された前世の食材とこちらの食材では、とても比べものになりません。
特にイーライ様の想い出料理を食べさせていただいて、この料理を創られた方が、最高の食材を使われて、手間暇惜しまずに下拵えされたのが分かりました。
そんな料理を同じ物を、この世界の食材で完全に再現する事などできません。
限りなく近い料理は創り出せますが、全く同じ料理は無理でございます」
よかった、本当によかった、俺が身勝手で恩知らずな訳じゃなかった。
でも、とても残念だ、哀しい、哀しいよ。
美味しいのだけれど、本当に美味しいのだけど、微妙に違うのが嫌だ。
食べている間に哀しくなって涙が流れてしまう。
こんな姿をセバスチャンや職人たちに見せたくない。
職人たちには俺が転生者だとは言っていないとセバスチャンが言っていた。
俺が夢に見た美味しい料理を再現しろと無茶振りしたのだと笑っていた。
それなのに、俺が泣いているのはおかし過ぎる。
だけど、涙を止められない、このままでは号泣してしまいそうだ。
「いいか、イーライ様のこのお姿をよく覚えておくのだ。
貧しい民に少しでも美味しいモノを食べさせてやりたいという、イーライ様のお優しいお気持ちを絶対に忘れるな。
まずは、わたくしが以前から開発を命じていた調味料を全て再現しろ。
そしてその調味料を使って、安い食材から美味しい料理を完成させるのだ。
分かった、職人たちよ」
酷い大嘘をつくんだな、セバスチャン。
俺の女々しい涙を美談にしようというのか。
セバスチャンほどの悪人は他にはいないと断言してやる。
「「「「「はい」」」」」
「素晴らしい、とても素晴らしいです、イーライ様
天然醸造の米酢と白味噌で分葱と青柳を和えたぬた。
二年以上の長きに渡って天然醸造された豆味噌を使った肉味噌。
大豆と米麹を使って天然醸造された白味噌で銀鱈を漬けて焼いた西京焼き。
天然醸造の醤油と味醂と日本酒と黒砂糖を使って鰤と大根を煮た鰤大根。
他の料理も全て本格的な天然醸造の最高級調味料を使っております。
これらが全て再現できれば、本格的な日本料理をこの世界で作れますぞ」
セバスチャンが珍しく心から感情を高ぶらせている。
あいつが俺に差し入れてくれていた弁当は、そんなに凄いモノだったんだ。
確かに何時食べても、ほっぺたが落ちるかと思うくらい美味しかった。
あの時は、普段ろくなものを食べさせてもらえなかったから、常に飢えていたから美味しいのだと思っていたけれど、違ったんだな。
凄く手間とお金がかかっただろうに、ありがとう。
もう一度会いたいけれど、不可能なのだよな。
あいつの事だから、殺された俺のために戦ってくれているんだろうな。
あいつやあいつの家族が、母と母の愛人に狙われてなければいいのだが。
自分たちの悪事を隠蔽しようとしたテレビや新聞に、俺を殺したと罪をなすりつけられていなければいいんだが……
「イーライ様、もうお食べになられないのですが。
イーライ様が食べられないと、他の者が食べられません」
「……ああ、食べるよ」
セバスチャンは感傷に浸ることも許してくれないのか。
いや、哀しみに沈みそうになっている俺の事を気遣ってくれたのだな。
生れた時から養育係として世話してくれてたセバスチャンの表情くらいは分かる。
心配してくれているのだ、いじける事も八つ当たりする事もできない。
それに、せっかく創り出したあいつの料理を食べないなんてありえない。
美味しい、本当に美味しいのだけれど、何かが違う気がする。
味も香りも食感も、とても美味しいのだが、想い出の味とは微妙に違う気がする。
あいつが作ってくれた弁当と同じとは絶対に言えない。
何故なんだ、俺は想い出の味を再現したくて、必死で思い出したはずなのに。
魔力も惜しむことなく注ぎ込んだというのに、何故なんだ。
絶対に認めないが、俺があいつの事を大切だと思っていないと言うのか。
「イーライ様、気になさることはありませんよ。
前世の世界と今生の世界では、食材が同じではありません。
中には同じ食材もありますが、美味しく品種改良された前世の食材とこちらの食材では、とても比べものになりません。
特にイーライ様の想い出料理を食べさせていただいて、この料理を創られた方が、最高の食材を使われて、手間暇惜しまずに下拵えされたのが分かりました。
そんな料理を同じ物を、この世界の食材で完全に再現する事などできません。
限りなく近い料理は創り出せますが、全く同じ料理は無理でございます」
よかった、本当によかった、俺が身勝手で恩知らずな訳じゃなかった。
でも、とても残念だ、哀しい、哀しいよ。
美味しいのだけれど、本当に美味しいのだけど、微妙に違うのが嫌だ。
食べている間に哀しくなって涙が流れてしまう。
こんな姿をセバスチャンや職人たちに見せたくない。
職人たちには俺が転生者だとは言っていないとセバスチャンが言っていた。
俺が夢に見た美味しい料理を再現しろと無茶振りしたのだと笑っていた。
それなのに、俺が泣いているのはおかし過ぎる。
だけど、涙を止められない、このままでは号泣してしまいそうだ。
「いいか、イーライ様のこのお姿をよく覚えておくのだ。
貧しい民に少しでも美味しいモノを食べさせてやりたいという、イーライ様のお優しいお気持ちを絶対に忘れるな。
まずは、わたくしが以前から開発を命じていた調味料を全て再現しろ。
そしてその調味料を使って、安い食材から美味しい料理を完成させるのだ。
分かった、職人たちよ」
酷い大嘘をつくんだな、セバスチャン。
俺の女々しい涙を美談にしようというのか。
セバスチャンほどの悪人は他にはいないと断言してやる。
「「「「「はい」」」」」
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