念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。
第39話:新天地
「ヴァイオレット殿、俺は辺境伯家を捨てる事にした」
エドワーズ子爵城に戻った俺は、城に残っていたヴァイオレットに、糞爺たちとの会話と自分の決断を伝えた。
辺境伯家の一族一門だけけでなく、家臣領民を切り捨てる覚悟を伝えた。
恐らくこの決断は、ヴァイオレットの試験には不合格な決断だろう。
今この状況でヴァイオレットの、いや、カチュアの助力を失うのは痛い。
だが俺にはよくわかったのだ、自分が人類を救う器ではない事を。
「エドワーズ子爵閣下は、人類を救う気がないと言われるのですね」
ヴァイオレットが冷たい凍てついた声で確認してくる。
「ああ、そうだ、そんな大役を務める気はない。
俺は俺の大切な人のためにしか戦えない、その事がよく分かった。
ただ、エドワーズ子爵としての責任だけは果たす。
エドワーズ子爵家の家臣領民だけは命を懸けても護る。
だがそれだけだ、人類を救う気もなければ、辺境伯家の領民を救う気もない」
「大切な人とエドワーズ子爵家の家臣領民は護ると言われるが、辺境伯家のブラッド城でなければ魔族を抑えきれないのではありませんか。
エドワーズ子爵城に籠城していても滅ぼされるだけなのは、ワイバーン山脈の西側にある城砦を落とされた事で明らかでしょう。
それなのに、辺境伯代理の地位を捨ててこの城に逃げてくるのは卑怯でしょう」
厳しい言葉だが、ヴァイオレットの言う通りだ。
「さっきから言っているだろう、俺はそんな器ではないと。
俺にできる事は、逃げだす事だけだよ」
「それでよく大英雄アーサー様の直系だと言えましたね」
「もういいではありませんか、ヴァイオレット。
こちらの身勝手な理想をカーツ様に押し付けるものではありません。
そんな事をするのは卑怯ですよ、ヴァイオレット」
部屋の隅から俺たちの会話を黙って聞いていたカチュアが、言葉は優しいが、とても厳しい感情を込めてヴァイオレットを諫めた。
「しかしカチュア様」
「黙りなさい、ヴァイオレット。
そこまで言うのなら、カーツ様ではなく私に命をか懸けろと命じなさい。
私に人類を救うために立てと命じなさい。
それを口にしないヴァイオレットに、カーツ様に厳しい言葉を吐く資格はありません、黙っていなさい、卑怯者」
カチュアの厳しい叱責を受けたヴァイオレットは、青菜に塩をかけたように縮んでしまい、一回りも二回りの小さくなってしまった。
それにしても、カチュアにはどんな隠し事があるのだろう。
色々と想像できる事はあるが、それを探る気はない。
俺は身勝手な人間ではあるが、女子供に無理をさせるような卑怯者ではない。
「カーツ様、辺境伯家を見捨ててエドワーズ子爵家を護ると言う事ですが、何かお考えがあるのですか」
「大したことを考えているわけではありません。
義姉さんの力を借りようとしているだけです」
義姉さんが、私に任せてなんでもするよという表情を向けてくれる。
嬉しくて涙が流れそうになるが、ここはガマンだ。
「どのようにお力を借りられる気なのですか」
「簡単な事です、大魔境を突破して、領民が暮らせる新天地を見つけるのです。
どこにも途切れのない大魔境の先に人間の住める場所を見つけられたら、辺境伯領とは違って、魔族が侵攻してくる心配がありません。
義姉さんには無理をさせてしまいますが、義姉さんの魔力と魔術があれば、エドワーズ子爵家の家臣領民くらいなら護って連れて行けるでしょう」
「新天地ですか、それはいい考えですね。
親衛隊に協力させますので、私たちも連れて行って頂けませんか」
「親衛隊が協力してくれるのなら、思ったよりも早く新天地を発見できるかもしれませんね、是非お願いします」
エドワーズ子爵城に戻った俺は、城に残っていたヴァイオレットに、糞爺たちとの会話と自分の決断を伝えた。
辺境伯家の一族一門だけけでなく、家臣領民を切り捨てる覚悟を伝えた。
恐らくこの決断は、ヴァイオレットの試験には不合格な決断だろう。
今この状況でヴァイオレットの、いや、カチュアの助力を失うのは痛い。
だが俺にはよくわかったのだ、自分が人類を救う器ではない事を。
「エドワーズ子爵閣下は、人類を救う気がないと言われるのですね」
ヴァイオレットが冷たい凍てついた声で確認してくる。
「ああ、そうだ、そんな大役を務める気はない。
俺は俺の大切な人のためにしか戦えない、その事がよく分かった。
ただ、エドワーズ子爵としての責任だけは果たす。
エドワーズ子爵家の家臣領民だけは命を懸けても護る。
だがそれだけだ、人類を救う気もなければ、辺境伯家の領民を救う気もない」
「大切な人とエドワーズ子爵家の家臣領民は護ると言われるが、辺境伯家のブラッド城でなければ魔族を抑えきれないのではありませんか。
エドワーズ子爵城に籠城していても滅ぼされるだけなのは、ワイバーン山脈の西側にある城砦を落とされた事で明らかでしょう。
それなのに、辺境伯代理の地位を捨ててこの城に逃げてくるのは卑怯でしょう」
厳しい言葉だが、ヴァイオレットの言う通りだ。
「さっきから言っているだろう、俺はそんな器ではないと。
俺にできる事は、逃げだす事だけだよ」
「それでよく大英雄アーサー様の直系だと言えましたね」
「もういいではありませんか、ヴァイオレット。
こちらの身勝手な理想をカーツ様に押し付けるものではありません。
そんな事をするのは卑怯ですよ、ヴァイオレット」
部屋の隅から俺たちの会話を黙って聞いていたカチュアが、言葉は優しいが、とても厳しい感情を込めてヴァイオレットを諫めた。
「しかしカチュア様」
「黙りなさい、ヴァイオレット。
そこまで言うのなら、カーツ様ではなく私に命をか懸けろと命じなさい。
私に人類を救うために立てと命じなさい。
それを口にしないヴァイオレットに、カーツ様に厳しい言葉を吐く資格はありません、黙っていなさい、卑怯者」
カチュアの厳しい叱責を受けたヴァイオレットは、青菜に塩をかけたように縮んでしまい、一回りも二回りの小さくなってしまった。
それにしても、カチュアにはどんな隠し事があるのだろう。
色々と想像できる事はあるが、それを探る気はない。
俺は身勝手な人間ではあるが、女子供に無理をさせるような卑怯者ではない。
「カーツ様、辺境伯家を見捨ててエドワーズ子爵家を護ると言う事ですが、何かお考えがあるのですか」
「大したことを考えているわけではありません。
義姉さんの力を借りようとしているだけです」
義姉さんが、私に任せてなんでもするよという表情を向けてくれる。
嬉しくて涙が流れそうになるが、ここはガマンだ。
「どのようにお力を借りられる気なのですか」
「簡単な事です、大魔境を突破して、領民が暮らせる新天地を見つけるのです。
どこにも途切れのない大魔境の先に人間の住める場所を見つけられたら、辺境伯領とは違って、魔族が侵攻してくる心配がありません。
義姉さんには無理をさせてしまいますが、義姉さんの魔力と魔術があれば、エドワーズ子爵家の家臣領民くらいなら護って連れて行けるでしょう」
「新天地ですか、それはいい考えですね。
親衛隊に協力させますので、私たちも連れて行って頂けませんか」
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