悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全

第56話:王都の混乱

 初日に馬鹿な貴族を吊るし上げした成果でしょうか、それ以降は失礼な誘い方をする貴族も現れず、穏やかな気持ちで王都に向かう事ができました。
 ただ、どうしても避けられなかったのは、戦勝祝いの使者でした。
 正規の戦勝祝いの使者まで追い返すわけにはいきませんので、行軍中に礼を尽くして迎える事になりましたが、その所為で遅々として王都に戻れません。
 腹立たし事ですが、こればかりはどうしようもありませんでした。

「お嬢様、王都は大混乱に陥っているようでございます」

 私達がなかなか王都に戻れない分、クローディアが伝令を放って情報収集に励んでくれていましたが、どうやら王都では多くの民が逃げだしているようです。
 私が僅か一万の兵力で、大陸最強と噂される皇国軍五万を皆殺しにしたという話しは、燎原の火のように王国中に広まってしまったようです。
 更に私がこの勢いのまま王家を滅ぼすという噂が王都に広まった事で、戦火を恐れた民が王都を捨てて逃げているというのですから、噂とは怖いモノです。

「私が王家を滅ぼす気はないと言っても、誰も信じてくれないでしょうね」

 今の私が何を言っても、王家を滅ぼすための謀略だと思われるでしょうね。
 破れかぶれになった老害王が、母上と父上を襲わなければいいのですが。
 まあ、それはおそらく大丈夫でしょう。
 皇国軍を滅ぼした私と敵対したい貴族士族はいないはずです。
 極少数の愚かな連中や忠誠心のある人達が、決死の覚悟で攻撃をしかけて来たとしても、公爵軍と第三傭兵団が撃退してくれるでしょう。

「クローディアは私がどうするべきだと思いますか」

 私にも考えはありますが、念のために確認しておきましょう。

「恐らくですが、老害王は王都を捨てて亡命すると思われます。
 中には王城で籠城するように言う者もいるでしょうが、皇国軍の全滅を知っては、王城に籠っても座して死を待つだけだと分かります。
 王家派だった貴族の城に逃げたくても、今の状況では誰も味方しないでしょう。
 それよりは、老害王を首を取ってお嬢様に忠誠を誓った方が生き残れます。
 そう考える貴族ばかりだと言う事は、老害王もよく分かっているでしょう。
 それに、王も伊達に王族級の魔力を持っているわけではありません。
 自分と家族だけで逃げるだけなら、何とか逃げ切れると考えるはずです」

「今まで忠誠を尽くしてくれていた家臣を見捨ててですか」

「お嬢様、忠誠を尽くしてきたのではなく、老害王におもねって不当な利益をかすめ取っていた君側の奸でございます。
 老害王も切り捨てるのに何の痛痒も感じないでしょう」

 クローディアの考えは私と同じですから、間違いはないでしょう。
 だとしたら、逃げる時間を与えた方がいいですね。
 ゆっくりと時間をかけて王都に戻りましょう。
 その間に、聖女カチュアを完全に味方に引き込んでおきましょう。
 善意の固まり、純粋培養のような聖女カチュアは、このままだと敵味方関係なく癒しを与え、死者を蘇らせてしまいますからね。

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