悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全

第50話:王都帰還

 地下迷宮からの地上までは一気に駆けあがりました。
 護衛のクローディア達がいるので、全力というわけにはいきませんでした。
 ですが補助魔力を使ってクローディア達の身体能力は向上させています。
 少数精鋭ですから、防御魔術の範囲も狭くて済みます。
 地下深くまで潜った往路に比べれば、二十分の一の速さで帰って来れました。
 往路もわずか十日間という信じられない短期間でしたけれどね。

「よく待っていてくれましたね、急いで王都に戻りますよ」

「「「「「はい」」」」」

 地下迷宮から王都に戻るのも信じられないくらい短期間でした。
 往路の後半は陣を組んで大魔境を走破した経験があります。
 復路も同じように陣を組んで急いで帰路につきました。
 五千人以上に補助魔術を掛ける事もできるのですが、さすがに魔力の無駄です。
 ただ途中で傭兵団を鍛えるような手間はかけませんでした。
 立ち塞がる魔獣や亜竜は私が鎧袖一触で狩り、魔法袋に入れました。

「母上、父上、兄上、今帰還いたしました、王家と皇室の動きはどうですか」

 私は王都の城門を問答無用で押し通り、公爵家の王都邸に向かいました。
 傭兵団の強さは門番達も知っているようで、特に邪魔はしませんでした。
 ですが、その時の門番達の目が気になったのです。
 どこか自分達の優位を確信しているような目つきに見えたのです。
 大魔境からの帰路に情報収集をしなかったわけではありません。
 ですが私達の行軍速度が速すぎて、情報が集まらなかったのです。

「ああ、よくぞ戻ってきてくれました、オードリー。
 王家はオードリーが大魔境に向かった二カ月前と変わりません。
 ただエストリア帝国は軍を動かしました。
 こちらに向けて五万の軍勢を向けてきました」

 母上が私の質問に答えてくれました。
 父上が母上の目を恐れるように小さくなっています。
 これだけで私が留守の間に何があったか分かります。
 父上が母上に愚にも使いない事を口にして、厳しくたしなめられたのでしょう。
 父上の事ですから、土壇場で弱気になってしまったのかもしれません。
 五万程度の皇国軍など恐れる必要などないと言っておいたのに。

「まだ国内には入っていないのですね、
 我が国の民が皇国軍に蹂躙されてはいないのですね」

 私は父上と兄上を無視して母上に確認しました。

「まだだ大丈夫ですよ、オードリー。
 皇国軍が動く事も、行軍速度も、全て計算して戻ってきてくれたのでしょう。
 貴女の読みに間違いはありません、大丈夫、民は蹂躙されていませんよ」

「では私は皇国軍を迎え討つために出陣します。
 王都の事は母上と父上にお任せします。
 兄上、王家は自国の民を皇国に売り渡しました。
 もはや忠誠を尽くす相手ではありません。
 公爵軍を使って叩き潰してください」

「分かった、私もオードリーに負けてはいられないからな」

 兄上はそう返事されましたが、特に何も起こらないでしょうね。
 父上が王城を攻める事を許されるとは思えませんし、王家も皇国軍が到着するまで攻撃を始めはしないでしょう。

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