悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全

第49話:聖女カチュア蘇生

 クローディア達はよく戦ってくれました。
 相手は聖女の封印を護るための強力なガーディアンです。
 普通なら並の人間では絶対に勝てない相手です。
 ですがここがゲームの世界ですから、攻略方法がない事は許されません。
 難しくはあっても、必ず攻略できるようになっています。

 今回のキーポイントは暴竜の牙で作られた武器です。
 やっつけ仕事でしたが、私は狩ったばかりの暴竜の牙で槍を作りました。
 ロックゴーレムとアイアンゴーレム、それにレザーゴーレムを斃せました。
 ただのレザーゴーレムではありません。
 亜竜種の皮と鱗から作られたレザーゴーレムなので、普通の武器では絶対に斃せない強力なガーディアンだったのです。

「聖女カチュア、私の事が見えますか」

 蘇ったばかりの人間は五感が上手く働かないはずです。
 目の焦点があっていないので、まだ何も見えていないかもしれません。
 耳も聞こえない可能性がありますから、確認が必要です。
 いえ、確認は今だけの事ではありません。
 蘇生呪文が変わっていたら、障害が残る蘇生になっているかもしれません。
 まあ、あの会社が蘇生呪文を変更するような手間をかけるとは思えませんが。

「あ、う、ああ、あ、う」

 徐々に聖女カチュアの身体に生命力が満ちてくるのが分かります。
 魔力を与えて無理矢理力を取り戻させたくなりますが、グッと我慢します。
 あまり早急にやると、聖女カチュアに負担をかけてしまうかもしれません。
 蘇った直後に他人の魔力を与えると死んでしまう可能性すらあります。
 そんなとんでもない罠を仕掛けかねないのが、あの会社です。
 お客さんの意表を突こうとして悪評を買う会社でしたからね。

「あ、あな、あなたは、だれですか」

 ようやく言葉が話せるようになったようです。
 私の事も見えているようですから、ひと安心です。

「私はオードリー、貴女を助けにきました、もう大丈夫、安心してください」

「わたしを、たすけに、わたしを……」

 可哀想な聖女カチュア。
 全身全霊を込めて助けてきた人間に裏切られた人。
 権力を独り占めにしようとした教会に裏切られ、封印されてしまった不幸な人。
 殺してしまったら新たな聖女か聖者が生まれてくるので、誰も入り込めない大魔境の中にある地下迷宮に封印されてしまった人。

 まあ、そんな設定を作ったのは私と親友なのですが、現実になるとは思っていなかったので、許してください、ごめんなさい。
 その代わり、ここから救い出して幸せになっていただきます。
 以前のように教会で人々のために働きたいと言われるのなら、公爵領内に大神殿を建築して差し上げます。
 ロジーナなら誠心誠意仕えてくれるはずです。

 風のように自由に生きたいと言われるのなら、私と一緒に旅に出ましょう。
 女二人の気ままな旅、とても楽しいと思います。
 大陸の隅々まで旅して、美しい風景を愉しみ、美味しい料理に食べ歩きましょう。
 それが可能なだけの力が私と聖女カチュアにはあります。
 邪魔する人間はギタギタに叩きのめしてあげます。

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