悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全

第40話:大魔境の魔獣

「総長、魔熊を狩りました」

 事実だけを端的に報告してくれていますが、言葉に自信と喜びが含まれています。
 魔熊はとても強力な魔獣で、並の冒険者ではとても狩れないのです。
 魔力を持つ貴族で例えるのなら、強さ的には伯爵に相当する魔獣です。
 百人で戦って狩ったとはいっても、自信になって当然です。
 それに魔熊は身体のほとんどが魔法薬の素材になる高価な獲物です。
 日本円で換算したら二千万円くらいの価値があります。

「では確認させてもらいましょう」

 あちらこちらで狩りや採集が行われています。
 自分達が食べるために魔獣や魔蟲を狩る者がいれば、シチューに加えるための山菜やキノコを集める者もいます。
 魔猪や魔鹿は美味しいのですが、素材として売る事を考えているのでしょう。
 元孤児達が真剣な目をして薬草を集めています。
 監督役の騎士に渡して魔法薬に預けています。

「ほう、これは大物ですね」

 目の前にはとても立派な魔熊が横たわっています。
 狩るのに熾烈な戦いがあったのでしょう、皮が傷だらけになっています。
 ですが、魔熊の値打ちは皮ではなく内臓にあります。
 皮下脂肪や血液も魔法薬の材料になりますが、魔術師でない者が魔獣を狩るのですから、血液まで確保するのは不可能です。

「はい、この隊の者たちは連携が上手く、ケガ人を出すことなく大物を狩りました」

 担当の監督役騎士が嬉しそうに説明してくれます。
 さきほど報告に来てくれた、百人隊の隊長を務めている者と面立ちが似ています。
 この騎士の縁者なのでしょうか。
 もしかしたら騎士家を継げない次男か三男なのかもしれませんね。
 最初の傭兵団長候補がバカをやってしまったので、公爵家の騎士や徒士の子弟でも伍長からのスタートになってしまいましたが、順調に出世しているようです。

「そうね、とても見事な働きですね。
 この個体なら、競売に出せは三十万セントになるでしょう。
 傭兵団の規定に従って、私が買い取り公平に分配金を渡します」

「「「「「ありがとうございます」」」」」

「ではこれが預かり証です。
 無理はせず、必ず生きて帰るのですよ。
 自分達の手には負えないと思ったら、直ぐに知らせるのです、いいですね」

「「「「「はい」」」」」

 いい返事ですね、彼らも死ぬのは嫌なのでしょう。
 役職に応じて分配割合が変わりますので、平傭兵と百人隊長では受け取る金額が違いますが、今回は平傭兵でも十万円くらいの報酬はあるはずです。
 日当十万円ですから、悪い稼ぎではありません。
 他にも小物の魔獣や魔蟲を狩っているでしょうからね。
 一人で狩れる牙兎や角兎の方が、金銭的には効率よく狩りができます。

「亜竜だ、亜竜が現れたぞ」

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