悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全

第31話:四日連続

「今日は襲ってこなかったわね、もうあきらめたのかしら」

 私の挑発に乗ったスザンナ王女は、結局四日連続で襲ってきました。
 予想通り、最後には騎士や一般兵士まで投入する壊れっぷりです。
 まあ、さすがに、顔の割れた当主や世継ぎは使ってきませんでした。
 士族家の二男三男で、仕官の口もない厄介者を投入してきたのです。
 私を殺すことに成功したら、新たな騎士家に取立てるとでも言ったのでしょう。
 死に物狂いの表情で襲ってきました。

「油断する事はできませんが、もう大丈夫だと思われます。
 公爵家で調べていた隠形持ちは、全員お嬢様が返り討ちにされました。
 スザンナ王女がなりふり構わず襲えと命じても、国王と王妃が止めるはずです。
 殺されると分かっている命令に従う貴族や士族はそうはいません。
 お嬢様が味方に優しい事も広まっています。
 これ以上やれば王家に仕える者から裏切者が出ます」

 クローディアの判断に間違いはないでしょう。

「では、スザンナ王女は学園を休むかしら。
 それとも堂々と出てくるかしら」

「その前にお嬢様の覚悟を確かめさせてください。
 お嬢様はスザンナ王女が学園に来られたら殺す覚悟がおありなのですか」

「そんな覚悟があったら、王家に襲撃された時に殺しています。
 私にできるのは、自殺に追い込むまでです。
 まだこの手を血で穢す覚悟まではできていません」

「ご自身を試されたのですか」

「ええ、自分の野望のための、千人以上の家臣に死を命じるような女です。
 あの場で殺せるのなら殺した方がいい、そう頭では分かっていました。
 だから二日目の終わりには殺す気になっていました。
 三日目も四日目も本気で殺そうとしました。
 ですが、やれませんでした」

 クローディアに言った言葉に嘘ではありません、本当に殺そうと思ったのです。
 ですが、どうしてもやれなかったのです。
 スザンナ王女を殺せば、もうこれ以上巻き込まれて殺される家臣がいなくなる。
 そう分かっているのに殺せませんでした。
 殺されると分かっている刺客の姿は暴露できても、直接は殺せませんでした。
 私はとても卑怯な人間なのです。

「お嬢様が気になされる事ではありません。
 相手が幾ら冷酷非情な王女であっても、その姿はまだ幼い子供なのですから。
 お嬢様が保護されておられる孤児達と同じような子供なのです。
 お嬢様が殺せないのは当然の事でございます。
 ですから、後の事はこのクローディアにお任せください。
 スザンナ王女が学園に戻るか戻らないかなど、気にされないでください」

「分かりました、すべてクローディアに任せます。
 クローディアの決断を信じて、責任だけを取る事にします」

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