悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全

第27話:魔術鍛錬場

 広大な荒地が目の前に広がっています。
 その中に強固な岩盤と鉄で築かれた、闘技場にも使える魔術鍛錬場があります。
 荒地の奥には小さいながらも魔境があります。
 少々の魔術を放っても周囲に被害が及ばない場所に学園はあるのです。
 王族に相応しい魔力を持った者同士が、模擬戦闘をしても大丈夫な基準で闘技場は建築されているのです。

「さあ、よく見ておいてくださいね」

 本当なら魔境に行ってボスを狩るくらいのパフォーマンスを見せたかったです。
 示威効果としては絶大ですから。
 でも、小学部四年程度の子供達にでは、昼休み時間中に魔境まで連れて行くのすら難しいのが現実なのです。
 だから、次善の策を講じる事にしました。
 予定通り、スザンナ王女の刺客たちがついてきているからこそできる事ですが。

「私を付け回すという事は、刺客だと断じます。
 この前の事があるので、言い訳など許されません」

 私はそう言い放つと隠形の魔術を使って隠れている連中を引きずり出しました。
 成人士族が持つ魔力量を使って鍛え抜かれた技で発動する魔術を討ち破るには、二つの方法があります。
 彼らを上回る練達の魔術を放つ方法が一つ。
 もう一つは圧倒的な魔力を叩きつける事です。
 この程度の刺客を捕らえるのに魔力の無駄遣いはできません。

 不幸な人達を救うとか、私の戦力を増やすとかなら、私も魔力を惜しまないですけどれど、単に敵の戦力を減らすためだと、もったいないと思ってしまうのです。
 だから私は隠れて鍛え上げた練達の魔術を使って引きずり出しました。
 使った魔力は角兎を狩るのと同程度ですから、ほんの少しですみます。
 
「「「「「グッフッ」」」」」

 予想通り隠形の魔術を破られた途端に刺客達は一斉に自害しました。
 自白剤や拷問を使われることを恐れたのでしょう。
 こうなる事は前回の襲撃時の対応を見れば分かっていました。
 自殺させる事を前提に刺客の隠形を破る事ができました。
 私は自分が思っていたよりも冷酷非情なようです。

「もう大丈夫ですわよ、貴方達を襲う者は全員自害しました。
 主人の素性を知られないように、この前の刺客と同じように自害しました。
 外部のだとしても、よほど知られては困る方が依頼者なのでしょうね。
 私達を狙う者は全員捕らえて差し上げますから、安心してくださいね」

 目の前で二八人もの刺客が一斉に自害するのを見て、子供達が驚いています。
 驚き過ぎて卒倒する事もできずに固まっています。
 子供達の護衛を務める者達は歴戦の戦士のはずですが、固まっています。
 私の魔術に驚いているのか、それとも刺客の存在に気が付けなかった事に驚いているのか分かりませんが、味方も威圧しつつ自陣営に引き留められたと思います。

 問題はこれでスザンナ王女が大人しくなってしまう事です。
 激怒して更に刺客を送り込んでくれたら、次々と王家の刺客が無駄に死ぬことになり、こちらの刺客を迎撃する事もできなくなるでしょう。
 何より味方を無駄死にさせ続ける事で、忠誠心をなくすことになります。
 刺客に選ばれた者たちは可哀想ですが、最小限の死者ですます方法はこれしか思い浮かばないので、諦めてもらうしかありません。

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