悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。
第25話:閑話・修道女ロジーナ
私は王都の小さな修道院を預かる修道女のロジーナと申します。
修道院を預かると大きな事を言っても、貧民街の廃屋を管理しているだけです。
元々は廃屋を解体して新しい教会を建てる予定でした。
ですが、私が師事していた司教様が教会内の派閥争いで負けてしまわれました。
単に負けられただけでなく、不審な死を遂げられてしまわれたのです。
それからはまるで坂道を転がるようでした。
今まで大きな声で腐敗を糾弾しておられて先輩方が何も言われなくなりました。
いえ、何も言わないどころか、主流派にすり寄って行ったのです。
あの時の情けなさは言葉に表せません。
同時に、私だけは絶対に恥ずかしい寝返りはしないと心の中で誓いました。
ですが、教会内でも末端の修道女の私にできる事など何もありませんでした。
司教様に師事していたはずの方々が、私以外全員寝返るのは直ぐの事でした。
私がどれだけ「司教様の教えを守りましょう」と言っても、無意味でした。
司教様の教えで保護していた孤児達が、主流派の者たちに、まるで奴隷のように分け与えられ、人の尊厳を踏みにじられました。
私にできたのは、司教様の命で私が建設を任されていた、貧民街にある教会建設予定地に、わずかな孤児をかくまう事だけでした。
ですが、教会に隠れて孤児達を守るのはとても大変でした。
司教様が亡くなられてしまった後では、教会からの援助は期待できません。
手持ちのわずかなお金だけでは、数日分の食費にしかなりませんでした。
私は一生懸命王都内を歩き回り、寄付寄進をお願いして回りました。
ですが、目立つお願いはできません。
教会主流派に知られてしまったら、全て奪われてしまいす。
だから、日頃から教会に寄付寄進してくださる商店や家には行けません。
教会主流派の手が入っていない、貧民街の中でしか動けませんでした。
その日の食事にも事欠く人に寄付や寄進をお願いしても……
身体を代償に寄付をすると言い寄られた事もあります。
修道服を着た女を穢したいという邪欲を持つ者もいるのです。
それだけは、どうしてもできませんでした。
だから、修道女の服装を脱いで、豊かな街の残飯をあさる日も多かったです。
数日前までは。
「修道女様は食べないの?」
「心配してくれてありがとう。
大丈夫ですよ、ちゃんと食べますから」
ブルーデネル公爵家のご令嬢が、貧民街の人間に仕事を与えるために、私設傭兵団を設立するという噂が流れてきたのは五日ほど前でした。
私達には関係のない話しだと思っていたのですが、二十八人にまで増えた子供達を食べさせるには、もう残飯を集めるだけでは難しかったのです。
貧しさからやせ細ってしまっていますが、これでも自衛のための訓練はしていましたから、従軍修道女として雇ってもらえないかと考えていました。
翌日思い切ってブルーデネル公爵家のご令嬢を直談判しようと決意した日に、私設傭兵団に役立つ者が欲しいから、女子供も老人も受け入れるという、信じられない話が貧民街に駆け巡りました。
半信半疑でしたが、もう後がない私は乳呑児を抱えて集合場所に行ったのですが、本当に私も子供たちも日当と食事を与えてもらえたのです。
いえ、それどころか、最初の願い通り従軍修道女に任命していただけました。
いえいえ、それだけではありません、子供たちまで修道士見習いや修道女見習いの役目を頂けたのです。
ありがたいことに、役目には手当てが頂けるのです。
普通の男性が一日働くのと同じだけの日当が頂けたのです。
ああ、この説明だけではお嬢様の慈愛が伝わりませんね。
お嬢様は見習いに相応しい修道服と下着まで支給してくださったのです。
しかも着替えまで用意ししてくださったのです。
もう、寒さに震えて眠らなくていいのです。
「ウフフフフ、お肉が一杯だね、修道女様」
「そうね、オードリーお嬢様に感謝しなければいけませんよ」
「「「「「はい」」」」」
私と子供たちは修道女や見習いとして狩りについていきます。
ですが、実際には何の役にも立っていません。
ケガをした人のために回復薬と快復薬を持っているだけです。
初日はそれだけしかやる事がありませんでした。
でも二日目からは、別の役目を与えられました。
本当なら貴重な薬草を集めるべきなのですが、今の私たちには薬草の知識がないので、木の実や果実、薪や茸を集める事しかできません。
毒を含む木の実や茸の判断もつかないので、それすらも満足にできないのです。
とても申し訳ない事に、お嬢様の側近の方に教わりながら集めるのです。
そんな役立たずなのに、日当に加えて食料になる肉までくださるのです。
今子供たちが美味しそうに食べている肉がその食料です。
いえ、肉だけではありません。
シチューに入っている茸も木の実もお嬢様が下さったのです。
そもそも、そのシチューを作るための燃料の薪も、お嬢様が下さったのです。
正確には、日当を頂いて私たちが集めたモノを、下げ渡してくださったのです。
普通の雇い主は、私たちが仕事中に集めたモノは全て回収します。
日当を払って雇っているのですから、当然の事なのです。
ですがお嬢様は、仕事中に私たちが必要なモノを集める事を許してくださいます。
魔境の中で集めた薪はとても火力が強く、火持ちもいいのです。
幼い子供たちが集められる量だけで、普通に暮らすなら十分な量になります。
何としてでも今の待遇は守らなければいけません。
そのためには、お嬢様の役に立つことを証明しなければいけません。
お嬢様が私たちに望んでおられる事は何なのでしょうか?
何をすればお望みをかなえることができるのでしょうか。
子供達のためにも、それを見極めなければいけません。
修道院を預かると大きな事を言っても、貧民街の廃屋を管理しているだけです。
元々は廃屋を解体して新しい教会を建てる予定でした。
ですが、私が師事していた司教様が教会内の派閥争いで負けてしまわれました。
単に負けられただけでなく、不審な死を遂げられてしまわれたのです。
それからはまるで坂道を転がるようでした。
今まで大きな声で腐敗を糾弾しておられて先輩方が何も言われなくなりました。
いえ、何も言わないどころか、主流派にすり寄って行ったのです。
あの時の情けなさは言葉に表せません。
同時に、私だけは絶対に恥ずかしい寝返りはしないと心の中で誓いました。
ですが、教会内でも末端の修道女の私にできる事など何もありませんでした。
司教様に師事していたはずの方々が、私以外全員寝返るのは直ぐの事でした。
私がどれだけ「司教様の教えを守りましょう」と言っても、無意味でした。
司教様の教えで保護していた孤児達が、主流派の者たちに、まるで奴隷のように分け与えられ、人の尊厳を踏みにじられました。
私にできたのは、司教様の命で私が建設を任されていた、貧民街にある教会建設予定地に、わずかな孤児をかくまう事だけでした。
ですが、教会に隠れて孤児達を守るのはとても大変でした。
司教様が亡くなられてしまった後では、教会からの援助は期待できません。
手持ちのわずかなお金だけでは、数日分の食費にしかなりませんでした。
私は一生懸命王都内を歩き回り、寄付寄進をお願いして回りました。
ですが、目立つお願いはできません。
教会主流派に知られてしまったら、全て奪われてしまいす。
だから、日頃から教会に寄付寄進してくださる商店や家には行けません。
教会主流派の手が入っていない、貧民街の中でしか動けませんでした。
その日の食事にも事欠く人に寄付や寄進をお願いしても……
身体を代償に寄付をすると言い寄られた事もあります。
修道服を着た女を穢したいという邪欲を持つ者もいるのです。
それだけは、どうしてもできませんでした。
だから、修道女の服装を脱いで、豊かな街の残飯をあさる日も多かったです。
数日前までは。
「修道女様は食べないの?」
「心配してくれてありがとう。
大丈夫ですよ、ちゃんと食べますから」
ブルーデネル公爵家のご令嬢が、貧民街の人間に仕事を与えるために、私設傭兵団を設立するという噂が流れてきたのは五日ほど前でした。
私達には関係のない話しだと思っていたのですが、二十八人にまで増えた子供達を食べさせるには、もう残飯を集めるだけでは難しかったのです。
貧しさからやせ細ってしまっていますが、これでも自衛のための訓練はしていましたから、従軍修道女として雇ってもらえないかと考えていました。
翌日思い切ってブルーデネル公爵家のご令嬢を直談判しようと決意した日に、私設傭兵団に役立つ者が欲しいから、女子供も老人も受け入れるという、信じられない話が貧民街に駆け巡りました。
半信半疑でしたが、もう後がない私は乳呑児を抱えて集合場所に行ったのですが、本当に私も子供たちも日当と食事を与えてもらえたのです。
いえ、それどころか、最初の願い通り従軍修道女に任命していただけました。
いえいえ、それだけではありません、子供たちまで修道士見習いや修道女見習いの役目を頂けたのです。
ありがたいことに、役目には手当てが頂けるのです。
普通の男性が一日働くのと同じだけの日当が頂けたのです。
ああ、この説明だけではお嬢様の慈愛が伝わりませんね。
お嬢様は見習いに相応しい修道服と下着まで支給してくださったのです。
しかも着替えまで用意ししてくださったのです。
もう、寒さに震えて眠らなくていいのです。
「ウフフフフ、お肉が一杯だね、修道女様」
「そうね、オードリーお嬢様に感謝しなければいけませんよ」
「「「「「はい」」」」」
私と子供たちは修道女や見習いとして狩りについていきます。
ですが、実際には何の役にも立っていません。
ケガをした人のために回復薬と快復薬を持っているだけです。
初日はそれだけしかやる事がありませんでした。
でも二日目からは、別の役目を与えられました。
本当なら貴重な薬草を集めるべきなのですが、今の私たちには薬草の知識がないので、木の実や果実、薪や茸を集める事しかできません。
毒を含む木の実や茸の判断もつかないので、それすらも満足にできないのです。
とても申し訳ない事に、お嬢様の側近の方に教わりながら集めるのです。
そんな役立たずなのに、日当に加えて食料になる肉までくださるのです。
今子供たちが美味しそうに食べている肉がその食料です。
いえ、肉だけではありません。
シチューに入っている茸も木の実もお嬢様が下さったのです。
そもそも、そのシチューを作るための燃料の薪も、お嬢様が下さったのです。
正確には、日当を頂いて私たちが集めたモノを、下げ渡してくださったのです。
普通の雇い主は、私たちが仕事中に集めたモノは全て回収します。
日当を払って雇っているのですから、当然の事なのです。
ですがお嬢様は、仕事中に私たちが必要なモノを集める事を許してくださいます。
魔境の中で集めた薪はとても火力が強く、火持ちもいいのです。
幼い子供たちが集められる量だけで、普通に暮らすなら十分な量になります。
何としてでも今の待遇は守らなければいけません。
そのためには、お嬢様の役に立つことを証明しなければいけません。
お嬢様が私たちに望んでおられる事は何なのでしょうか?
何をすればお望みをかなえることができるのでしょうか。
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