第6話：王立魔術学園

「魔力を無駄にしないためには、生み出される魔力を魔石に蓄える必要がある。
　裕福な家に生まれた者なら、自分の魔力を自動的に蓄えてくれる魔道具、魔力吸収備蓄器があるだろうが、魔力吸収備蓄器はとても高価だ。
　普通の家の者は、直接魔力を売るか魔力を魔術に使って金に換えることになる」

　クラスメイトたちは、魔力魔術担当先生の話しを唖然とした表情で聞いています。
　王立魔術学園は普通の学校とは全く違うのです。
　そもそも魔力を持つ特別な者を教育して、国の役に立つようにする学園です。
　基本は魔力を持つ王侯貴族のための学園ですが、少数の平民もいるのです。
　貴族のご落胤なのか突然変異なのかは分かりませんが、平民の中に魔力を持つ者が生まれる事があるのです。

　そんな平民でも国の役に立つよう教育する事も学園の役割なのですが、普通はとても少ない魔力しかないうえに、貴族から見れば驚くほど貧しいのです。
　だから平民の魔力持ちは、魔力を売って生活費の足しにしています。
　まあ、騎士などの士族の中にも貧し者がいるのですが、今私と一緒に授業を受けている者たちは魔力の多い上級貴族なので、そんな事情は知りません。
　今までの生活では、このような話しを聞く事などなかった者達です。

「この場にいる者は伯爵家以上の上級貴族だから、今の話しのような魔力を売る立場ではなく、魔力を買う側だ」

　先生の話を聞いて、クラスメイトたちは自尊心をくすぐられたのでしょう。
　魔力を売らなければいけない者たちを思い、憐れむような蔑むような表情を浮かべていますが、私から見れば貴方達の方が哀れな存在です。

「今自分の事を過剰に評価した者がいる。
　そなような考え方を続けていると、降爵や奪爵処分を受けるぞ！
　君たち家が爵位を与えられているのは、大きな魔力があるからだ。
　今の爵位に相応しい魔力がなければ、降爵処分を受ける。
　家が爵位を維持するために、君たちを廃嫡して養子を迎える事もあり得るのだぞ。
　そして魔力を失うような事があれば、奪爵どころか平民に落とされるのだぞ。
　その事を絶対に忘れるな、いいな！」

「「「「「はい」」」」」

　クラスメイトたちの表情が引きしまりました。
　先生の言う通りなのです。
　今はまだ小学部の一年生なので、上級貴族であっても必要とされる魔力量は少ないのですが、年々必要とされる魔力量は増えていきます。
　もし後々必要な魔力量以下になってしまったら、家の名誉のために病死した事にされたり、格下の家に養子に出されたりするのです。

　今の地位に留まり権力を維持しようと思ったら、真剣に魔力を増やす努力をするしかないのです。
　私は七歳にして成人王族級の魔力を持っていますので、何の不安もありません。
　この世界の事に気がついた二歳の時から、身体の負担にならない範囲で魔力を増やしてきたのです。
　裏技の魔力圧縮に始まり、魔力器官を魔法袋化するバグまで使ったのです。

　ですが、その実力は誰にも知られないようにしています。
　実力を知られてしまったら、王家がなりふり構わずに攻撃してくるのが分かっていたからです。
　もし知られていたら、今日の攻撃もあの程度ではすまなかったでしょう。
　まあ、このゲームの世界が何版のどのルートかでキャラの性格は違うのですが。

「まだ幼い貴方達が魔力を圧縮して蓄えるのは危険です。
　そこで今までの魔力を蓄えた魔石や魔晶石を装備品に加えてもらいます。
　その魔力も使って、魔術を使う訓練を始めます。
　学科と実技の試験に合格したら、家庭の教育を優先してくれても構いませんし、飛び級をして二年に編入しても構いません」

　では予定通り一発合格して飛び級させてもらいましょうか。