ショートストーリーあれこれ
或る男の話―浮気の代償
私の友人に友次郎という男がいる。この男はとにかく女好きで、さらにタレントばりのイケメンで口が巧い。となれば、女が放っておく訳がなく、常に女が彼の側にいる状態だった。
しかし、彼には最大の欠点があった。それは根っからの浮気性、二股三股は当たり前、酷い時には7股をかけていた時もあった。勿論、そんな事をしていればトラブルも絶えず、その度に親が頭を下げる姿があった。か、当の本人は「次は巧くやらないとな。」と、全く反省の色がない始末。
「そんな事をしていると、いつか痛い目を見るぞ。」と私は老婆心から忠告するが、彼の答えは決まっていた。
「大丈夫、大丈夫。」
そんな彼も最近結婚し、漸く落ち着いたように思えた。彼の結婚相手はとある会社の社長令嬢、一人娘なので婿入りになるが、将来は彼は後継者になる予定だ。「これで将来は安泰だ。」と嘯く彼を見ながら、私は呟く。
「これで、あいつも少しは大人しくなるかな。」
しかし、結婚後も友次郎の浮気性は治らず、外に愛人を何人も作るなど、まさにやりたい放題だった。が、不思議な事に妻はそんな彼の行動に対して何もしなかった。浮気には気づいているが、咎める事も諌める事もしなかった。
「好きなようにすればいいわ。後で泣きを見るのは、あっちだから。」
妻は表情1つ変えずに呟いた。
その十数年後、社長である義父が亡くなった。葬式が終わった後、義父の遺言書の内容が公表された。それを聞いた瞬間、友次郎は顔面蒼白になる。
「財産は法定相続通りに分配する。尚、後継の社長は娘子(友次郎の妻)、友次郎は子会社に左遷の上一般社員(所謂「ヒラ」)に降格する。」
「な、何でだ!会社を継ぐのは、この俺の筈だ!俺が何をした!」
「何でだ、ですって?貴方、私やお父さんが何も知らないと思ったの?」
そう言うと、妻は手にした封筒を友次郎に投げつけた。封筒の中から、数枚の写真と「報告書」と書かれた書類が出てくる。
「こ、これは・・・!」
「あんたの浮気の証拠。私が何も言わないからって、外では随分好き勝手にしてくれたわね。」
「これは違うんだ!話せば分かる!」
「ふざけてんじゃねえよ!話ししたって、分かるわけがないだろうが!とにかく、あんたはヒラに降格の上左遷!で、私とは離婚!」
「そ、そんな!も、もう二度としないから、許してくれ!」
「あんた、昔から女癖が相当悪かったらしいわね・・・そんなヤツの『二度としないから』はアテになんないの!離婚するからには当然慰謝料、後は子供の養育費も払ってもらうから!覚悟しなさい!」
妻のこの言葉に、友次郎は言葉を失っていた。彼は自分の女癖の悪さで、自分の未来を潰したのである。
その後、勿論彼は離婚。慰謝料に養育費、さらには浮気相手が既婚者だった為相手の配偶者からも慰謝料請求をされる事に。
子会社に飛ばされた彼は、それまでの素行の悪さも手伝って針の筵状態。しかし、慰謝料の支払いがある為辞めるに辞められない状態らしい。
「浮気の代償が自分の未来とはね・・・ま、同情はしないけど。」
私は静かに呟くと、仕事に集中するべくパソコンの方を向いた。(終)
しかし、彼には最大の欠点があった。それは根っからの浮気性、二股三股は当たり前、酷い時には7股をかけていた時もあった。勿論、そんな事をしていればトラブルも絶えず、その度に親が頭を下げる姿があった。か、当の本人は「次は巧くやらないとな。」と、全く反省の色がない始末。
「そんな事をしていると、いつか痛い目を見るぞ。」と私は老婆心から忠告するが、彼の答えは決まっていた。
「大丈夫、大丈夫。」
そんな彼も最近結婚し、漸く落ち着いたように思えた。彼の結婚相手はとある会社の社長令嬢、一人娘なので婿入りになるが、将来は彼は後継者になる予定だ。「これで将来は安泰だ。」と嘯く彼を見ながら、私は呟く。
「これで、あいつも少しは大人しくなるかな。」
しかし、結婚後も友次郎の浮気性は治らず、外に愛人を何人も作るなど、まさにやりたい放題だった。が、不思議な事に妻はそんな彼の行動に対して何もしなかった。浮気には気づいているが、咎める事も諌める事もしなかった。
「好きなようにすればいいわ。後で泣きを見るのは、あっちだから。」
妻は表情1つ変えずに呟いた。
その十数年後、社長である義父が亡くなった。葬式が終わった後、義父の遺言書の内容が公表された。それを聞いた瞬間、友次郎は顔面蒼白になる。
「財産は法定相続通りに分配する。尚、後継の社長は娘子(友次郎の妻)、友次郎は子会社に左遷の上一般社員(所謂「ヒラ」)に降格する。」
「な、何でだ!会社を継ぐのは、この俺の筈だ!俺が何をした!」
「何でだ、ですって?貴方、私やお父さんが何も知らないと思ったの?」
そう言うと、妻は手にした封筒を友次郎に投げつけた。封筒の中から、数枚の写真と「報告書」と書かれた書類が出てくる。
「こ、これは・・・!」
「あんたの浮気の証拠。私が何も言わないからって、外では随分好き勝手にしてくれたわね。」
「これは違うんだ!話せば分かる!」
「ふざけてんじゃねえよ!話ししたって、分かるわけがないだろうが!とにかく、あんたはヒラに降格の上左遷!で、私とは離婚!」
「そ、そんな!も、もう二度としないから、許してくれ!」
「あんた、昔から女癖が相当悪かったらしいわね・・・そんなヤツの『二度としないから』はアテになんないの!離婚するからには当然慰謝料、後は子供の養育費も払ってもらうから!覚悟しなさい!」
妻のこの言葉に、友次郎は言葉を失っていた。彼は自分の女癖の悪さで、自分の未来を潰したのである。
その後、勿論彼は離婚。慰謝料に養育費、さらには浮気相手が既婚者だった為相手の配偶者からも慰謝料請求をされる事に。
子会社に飛ばされた彼は、それまでの素行の悪さも手伝って針の筵状態。しかし、慰謝料の支払いがある為辞めるに辞められない状態らしい。
「浮気の代償が自分の未来とはね・・・ま、同情はしないけど。」
私は静かに呟くと、仕事に集中するべくパソコンの方を向いた。(終)
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コメント
音羽ゆえ提督
こんな事がないように我が振り直せだね