ショートストーリーあれこれ
或る女の話―結婚できない女
私の友人の友子は外見も良く知的、非の打ち所がない美人だが、何故か結婚できない。
正確に言うと、結婚話は何度もあった。が、入籍直前や式直前になると結婚相手に怪文書が届き、それをきっかけに破談になってしまうのだ。
これが全く根も葉もない話なら警察なりに相談して解決となるのだが、そうもいかない状況であった。実を言うと、友子には最大にして最悪な欠点がある。それは性格の悪さ、底意地の悪さである。
友子は中学時代から自分が気に入らない人を見下し、苛めを繰り返していた。先生や保護者に訴えても、外面がいい友子に言いくるめられる始末。それは高校、大学、果ては社会人になっても変わらなかった。それだけに、友子を恨んでいる人間は多かった。そう、怪文書の内容は全て事実なのだ。だから、警察はおろか誰にも相談出来ないでいるのだ。
「一体、誰があんな事を・・・もう何年も前の事よ、とっくに時効よ!」
カフェで、友子の恨み節―と言ってもほぼ自業自得の逆恨みだが―を聞く私。私は友子の中学時代時代からの友人で、唯一彼女が心を許している存在だ。
「そうは言ってもさ、恨んでいる相手はいつまでも恨むわよ。そんな事をされたくないなら、素直に自分が酷い事をした人達に謝ったら?」
「煩い!私は悪くない、苛めは苛められる方が悪いのよ!奴らは私を僻んでるだけよ!」
友子の言い分に、私は呆れるばかりだ。
暫く後、友子は婚約を決めた。しかし、今回は婚約者の氏素性や式の日程などは気心が知れた一部の人間以外には一切秘密にした。情報が分からなければ、嫌がらせは出来ない筈だ。そう考えた。が、密告者はその警戒網すらあっさりとすり抜け、またしても婚約は破談となった。
「どうして!どうしてよぉおおおお!!」
この一件が彼女の精神を破綻させた。彼女は精神を病み、会社を辞め、自宅で引き篭もりになってしまった。結婚はおろか、一般生活すらも出来なくなってしまった。
ある秋の日の昼過ぎ。私は庭で焚き火をしていた。火を見つめながら、私は静かに呟く。
「あの時、一言でも謝罪の気持ちを出していればよかったのにね。」
私は友子と共に写した写真を、さらに友子の悪行を記したノートを焚き火の中に入れた。
「友子、気心が知れた友人が信頼出来る人間とは限らないんだよ。敵は身内にあり、その言葉の意味に早く気付くべきだったわね。」
私はそう呟くと、不敵な笑みを浮かべた。そう、友子の婚約者に怪文書を送ったのは私だ。勿論、今回だけでなく、過去の怪文書も全てそうだ。
婚約者の話などは、頼まなくても友子から私に伝わる。今回も他の友人には婚約者の情報は話さなかったが、気心が知れている私には話していた。だから、怪文書を送れたのだ。
私は友子を親友と思っていたが、彼女は違っていた。高校の時だ、友子は私の彼氏を奪っただけではなく、在らぬ噂を流して私を孤立させた。気心が知れている友人が居なかったら、私は引き篭もりになっていただろう。
卒業後、私は友子に謝罪を求めた。だが、彼女は鼻で笑い、「苛められるあんたが悪いのよ。」と言い放ったのだ。この時、私は「絶対に友子を幸せにはさせない、絶対に地獄を見せてやる!」と誓ったのだ。
「苛めは苛められる方が悪い、あんたは自分で自分の言葉を証明したわね。今からの人生は、自分がやってきた事を悔やんで、苦しんで生きる事ね。ま、自業自得だけど。」
そう呟くと、私は焚き火に水をかけて消す。写真もノートも灰となり、この世から消えた。もう2度と友子と会う事はないだろうし、会うつもりもない。
「私は私の人生を歩むだけよ。」
私はそう言うと、家の中に戻っていった。(終)
正確に言うと、結婚話は何度もあった。が、入籍直前や式直前になると結婚相手に怪文書が届き、それをきっかけに破談になってしまうのだ。
これが全く根も葉もない話なら警察なりに相談して解決となるのだが、そうもいかない状況であった。実を言うと、友子には最大にして最悪な欠点がある。それは性格の悪さ、底意地の悪さである。
友子は中学時代から自分が気に入らない人を見下し、苛めを繰り返していた。先生や保護者に訴えても、外面がいい友子に言いくるめられる始末。それは高校、大学、果ては社会人になっても変わらなかった。それだけに、友子を恨んでいる人間は多かった。そう、怪文書の内容は全て事実なのだ。だから、警察はおろか誰にも相談出来ないでいるのだ。
「一体、誰があんな事を・・・もう何年も前の事よ、とっくに時効よ!」
カフェで、友子の恨み節―と言ってもほぼ自業自得の逆恨みだが―を聞く私。私は友子の中学時代時代からの友人で、唯一彼女が心を許している存在だ。
「そうは言ってもさ、恨んでいる相手はいつまでも恨むわよ。そんな事をされたくないなら、素直に自分が酷い事をした人達に謝ったら?」
「煩い!私は悪くない、苛めは苛められる方が悪いのよ!奴らは私を僻んでるだけよ!」
友子の言い分に、私は呆れるばかりだ。
暫く後、友子は婚約を決めた。しかし、今回は婚約者の氏素性や式の日程などは気心が知れた一部の人間以外には一切秘密にした。情報が分からなければ、嫌がらせは出来ない筈だ。そう考えた。が、密告者はその警戒網すらあっさりとすり抜け、またしても婚約は破談となった。
「どうして!どうしてよぉおおおお!!」
この一件が彼女の精神を破綻させた。彼女は精神を病み、会社を辞め、自宅で引き篭もりになってしまった。結婚はおろか、一般生活すらも出来なくなってしまった。
ある秋の日の昼過ぎ。私は庭で焚き火をしていた。火を見つめながら、私は静かに呟く。
「あの時、一言でも謝罪の気持ちを出していればよかったのにね。」
私は友子と共に写した写真を、さらに友子の悪行を記したノートを焚き火の中に入れた。
「友子、気心が知れた友人が信頼出来る人間とは限らないんだよ。敵は身内にあり、その言葉の意味に早く気付くべきだったわね。」
私はそう呟くと、不敵な笑みを浮かべた。そう、友子の婚約者に怪文書を送ったのは私だ。勿論、今回だけでなく、過去の怪文書も全てそうだ。
婚約者の話などは、頼まなくても友子から私に伝わる。今回も他の友人には婚約者の情報は話さなかったが、気心が知れている私には話していた。だから、怪文書を送れたのだ。
私は友子を親友と思っていたが、彼女は違っていた。高校の時だ、友子は私の彼氏を奪っただけではなく、在らぬ噂を流して私を孤立させた。気心が知れている友人が居なかったら、私は引き篭もりになっていただろう。
卒業後、私は友子に謝罪を求めた。だが、彼女は鼻で笑い、「苛められるあんたが悪いのよ。」と言い放ったのだ。この時、私は「絶対に友子を幸せにはさせない、絶対に地獄を見せてやる!」と誓ったのだ。
「苛めは苛められる方が悪い、あんたは自分で自分の言葉を証明したわね。今からの人生は、自分がやってきた事を悔やんで、苦しんで生きる事ね。ま、自業自得だけど。」
そう呟くと、私は焚き火に水をかけて消す。写真もノートも灰となり、この世から消えた。もう2度と友子と会う事はないだろうし、会うつもりもない。
「私は私の人生を歩むだけよ。」
私はそう言うと、家の中に戻っていった。(終)
コメント
音羽ゆえ提督
怖!なんとかは直そうの言葉まんまやねえ~!