ショートストーリーあれこれ
或る男の話―疑心、暗鬼を生む
とある国にAという男がいた。Aは貧農の出で、若くして死んだ父に替わって母と幼い弟を養っていた。心優しい性格であった彼は誰にも慈愛の精神で接し、虫も殺せない程であった。
ある日、この国の大臣に認められたAは彼の元で仕える事になった。すると元々有能であったAは、あれよあれよという間に出世していき、10年もしないうちに彼は重臣の1人となった。
その後国王の一人娘を娶り、子供にも恵まれた彼は王太子の父として権力を得る。
が、この頃から彼の変貌が始まっていた。
自分の意に沿わない仲間や部下にでっち上げとも言える様な罪を被せて抹殺、国民に対してもちょっとでも反抗的な態度を取れば残忍な方法で処刑、挙げ句の果てにあれだけ可愛がっていた筈の弟も無実の罪を被せて処刑してしまったのである。
余りの非道さに嘆いた母は、Aに泣きながら「なぜ、この様な非道をするのか。お願いだから、これ以上はやめてくれ。」と訴えた。が、彼は表情1つ変えずにこう答えた。
「母上、私は国の為にやっているのです。」
「えっ・・・?」
「今迄私が殺した奴らは、全て国を揺るがしかねない連中ばかりです。隙を見せれば、我々が殺されるのです。だから、私は先んじて手を打っただけです。」
「・・・(この子は心に暗鬼を飼ってしまった、もはやどうにもならない)」
母は愕然となり、以降死ぬ迄息子に意見をする事は無かった。
その後、国王の父となった彼は絶大な権力を振るい、さらに死体の山を築いていった。そして彼は死後、こう言われる事となる。
『彼は有能な人間だった、心に鬼を飼う迄は。』(終)
ある日、この国の大臣に認められたAは彼の元で仕える事になった。すると元々有能であったAは、あれよあれよという間に出世していき、10年もしないうちに彼は重臣の1人となった。
その後国王の一人娘を娶り、子供にも恵まれた彼は王太子の父として権力を得る。
が、この頃から彼の変貌が始まっていた。
自分の意に沿わない仲間や部下にでっち上げとも言える様な罪を被せて抹殺、国民に対してもちょっとでも反抗的な態度を取れば残忍な方法で処刑、挙げ句の果てにあれだけ可愛がっていた筈の弟も無実の罪を被せて処刑してしまったのである。
余りの非道さに嘆いた母は、Aに泣きながら「なぜ、この様な非道をするのか。お願いだから、これ以上はやめてくれ。」と訴えた。が、彼は表情1つ変えずにこう答えた。
「母上、私は国の為にやっているのです。」
「えっ・・・?」
「今迄私が殺した奴らは、全て国を揺るがしかねない連中ばかりです。隙を見せれば、我々が殺されるのです。だから、私は先んじて手を打っただけです。」
「・・・(この子は心に暗鬼を飼ってしまった、もはやどうにもならない)」
母は愕然となり、以降死ぬ迄息子に意見をする事は無かった。
その後、国王の父となった彼は絶大な権力を振るい、さらに死体の山を築いていった。そして彼は死後、こう言われる事となる。
『彼は有能な人間だった、心に鬼を飼う迄は。』(終)
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