夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

第3章 第56話 境界線


ミシッ

ベッドが揺れたと思ったら、琉緒の手によって布団がめくられた。

「美癒・・・。」

名前を呼ばれると、琉緒の顔が近付いてきてチュッと軽いキスをされた。

顔が離れていく前に、美癒は琉緒の首に腕を回した。

「もうお終い?」

挑発するようにニヤリと笑う美癒を見て琉緒は不覚にもときめく。

美癒は自分から唇を重ねた。

琉緒も美癒にこたえるように何度も、何度も、キスをした。

「ふふっくすぐったい、どこ触ってんの。」

「うっせー。」

「琉緒・・・大好き。」

「俺も、愛してるーーー。」


ここが【この世】だったらどれほど良かったか。

未来のある【この世】で出逢い愛し合えたらどれほど良かったか。

2人には未来がないーーーー。



美癒と琉緒の休みは明け、あっという間に任務が始まった。

ジンが統括している【空の世界】にて
美癒と琉緒が共に任された最初の任務が、魂の仕分けだった。

他にも同じ任務をする者はいるが、仕分けは新人の最初の通り道だ。

【空の世界】に辿り着いた魂が、それぞれ【この世】の生まれる場所(人生)を決める。

だが、全ての選択が自由なわけでは無い。

もちろん前世の業によって、選べる場所(人生)の枠が変わってくるので、その枠毎に魂を仕分けて案内する。

美癒は早速任された魂のリストを確認して気が重くなった。

ふと、琉緒を見ると早速任務に取り掛かっていたので耳を傾ける。

「アンタの前世だと、もっと良い来世を選べる。選択肢が広いのに、本当にこの両親で良いのか?金持ちの令嬢だって、有名人の娘だって選べる。今のままだと苦労するぜ?」

「そうね。前世の記憶は無いけど、とても裕福な家庭ばかりね。でも令嬢達の人生を見たら、お金はあるけど家庭内の人間関係がめちゃくちゃ。それよりは、貧しくても家族みんなが同じ方向に向かって生きている家庭の方が良いわ。」

「考えは自由だが、まだ日にちは充分ある。しっかり考えな。」

「良いの。他の人にこの人生を選ばれたくないから決めてちょうだい。」

「・・・そうか、分かった。じゃあこの札を持って船に乗って。」

「ありがとう。」

(口は悪いけど、すごいな琉緒。しっかり仕事をこなしてる。私も頑張らなきゃ・・・はぁ・・・。)

再び自分のリストを見てため息がこぼれる。

美癒はリストを両手で丸めて握り潰しながら、担当する魂を探し歩き出す。

(・・・見つけた!よーし、やるぞ!)

どす黒い色をした魂の元へ目の前に声をかける。

「こんにちは。担当させて頂く美癒と申します。」

「あ、あぁ。周りの皆はどんどん案内されて来世を選んでいるのに、私には行き場が無いようでね。どこに行けば私も選べるのだろうか?」

「・・・貴方は前世もゴ●ブリでした。でも、後4回はゴ●ブリが続きますので選べません。」

「そ、そんなぁ。私が一体何を・・・?」

「原因については個人情報なので私達も知る事が出来ません。ですが理由あってのことですので。この札を持って、あちらの船に乗ってお待ち下さい。」

「納得いかないよ。せめて他の虫とか魚とか動物とか、他の選択肢はないのかよー。私にだって選ぶ権利は有るでしょう?」

「そうはいきません。実は貴方ゴ●ブリ6回目だったんですよ。2回目以降はしぶとく生き続けてたじゃないですか。その調子で、むかーし昔の行いを悔い改めて下さい。」

どす黒い色をした魂は固まる。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。そんな記憶に無い話されても私には関係ない。」

「あと4回頑張れば、その後の来世では、貴方のことを大事に思っていた方と出会える事が出来るでしょう。」

「うっ・・・分かったよ。どうせ選ぶ事は出来ないんだろ・・・。畜生。」

札を乱暴に奪い、しぶしぶと船に向かって行った。

(何をしたら10回もゴ●ブリなんかに・・・?とりあえず何とか1人目終了ね。)

美癒がホッとしていると、後ろから噴き出すような笑い声が聞こえた。



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