最強の戦士が魔法学園に入学しました

I.G

13話

アルナの故郷であるネビンには
半日で到着した。
彼女が田舎と言っていたので、
人に訊ねても場所を特定できないかと
思っていたが、意外にもすんなりと
判明した。

確かに田舎だった。
秋に収穫する稲穂の苗を
田に植えている住民達が、
ドラゴンを引き連れて歩く
ジン達に目を丸くしていた。

さらに道なりに進んでいくと、
煉瓦の小さな家々が
立ち並んでいる村を発見した。

「すまない」

ジンが適当な住民に声をかけると、

「か、金なら持ってねぇぞ」

ぎらぎらとした鋭いジンの目付きに
怯えて走り去って行った。

「ジン、もう少し愛想よくしたら?
それでは相手が怯えてしまうわよ。
見てなさい」

代わりにレベッカが店内で店番をしていた
女性に声をかけた。

「ごめんなさい? ちょっといいかしら。
人を探しているのだけど」

「あら、見ない顔だね。
それにその制服。どっかの
学生さんかね」

「ええ、このネビンに住んでいる
エバ・アルナという女性を探しているの。
知ってるかしら?」

「ああ、勿論さ。この村じゃ
知らない奴はいないよ。なんたって、
アルナはあのフィルマ学園に
合格したんだからね。私らの
希望の星さ。けど、どうして
その子を探して......」

その女は何かに気がついたようだ。

「あんたらもしかしてその制服......」

「ええ、私達もそのフィルマ学園の
学生よ。友人のアルナさんに
お会いしに来たの」

その言葉に、女は転がりながら、
奥へと消えた。

「あんた! アルナの友達が
フィルマ学園から
来たんだけど!!!」

「な、何!? フィルマ学園から!?」

大事になった。
村の住民が騒ぎを聞き付けて
続々と集まって来る。

「ジ、ジン君!?」

その騒ぎに気がついたのか、
それとも誰かが呼びに行ったのか、
アルナが姿を現すのにそう時間は
かからなかった。







「は!? 学園を止めてない!?」

ジンがここまで驚いた声を上げたのを
アルナは初めて聞いた。

「う、うん。お父さんがちょっと
体調を崩しちゃったらしくて、
それで様子を確認に学園を休学したの」

「クラスの奴等に酷いことをされた
とかではなくてか?」

「そんなわけないじゃん。
大丈夫だよ」

心配して損したと、背もたれに
体重を預けるジンを、アルナは笑った。

「でも、ありがと。故郷にまで
来てくれるなんてびっくりししちゃった。
けど、よくこの場所が分かったね」

「それはこの女が」

アルナは信じられなかった。
目の前にあのレベッカがあることに。

彼女はアルナの出したお茶を
じっくりと味わっている。

「ごめんなさいね、アルナさん。
突然、お邪魔してしまって」

「い、いえ! とんでもありません。
け、けど、どうして貴女のような方が
こんなところに」

「貴方に少し用事があったの」  

「用事? 私にですか?」

「ええ、でも、それは後にしましょ。
それよりも、お父様の体調の方は?」

「大丈夫大丈夫。
少し腰を痛めただけさ」

そのとき、アルナの母が豪快に
笑いながらそう答え、
焼いたパイを持ってきた。

「さあ! 食べな! 長旅で
疲れただろ。わざわざアルナの
ために来てくれてありがとね!」

どんっとパイを机に置く自分の
母親の態度に、アルナは顔を
真っ青にした。

今自分の目の前にいる彼女があの
皇族の娘であると知らないのだ。

「お、お母さん......そんな口の利き方」

「ありがとうございます。
頂きますわ」

しかし、アルナの心配を余所に、
レベッカはパイを口へと運んだ。

「美味しい......!」

それは本当にそう感じている表情だった。

それを見て、アルナはほっと
胸を撫で下ろす。

「ジン君も食べて。
お母さんのパイすっごく美味しいから」

「あ、ああ」

ジンも続いてパイを口に運ぶ。

「......うまい」

ジンが食べ物の感想を言うのは
初めてだった。

その様子に、後で母親にパイの作り方を
教えてもらおうかと考えていると、

「アルナ」

母親がこっそりと耳打ちをして、

「あの子はあんたの彼氏かい?」

そんな母親の質問に、

「ち、違う!! た、ただの友達!!」

しかし、母は容易にそれが嘘だと見破った。

「ふ~ん」

アルナの母親は色々と察して、
やけに、にやにやしながら、

「早く告白しちゃいなさい」

「もう! お母さん! あっち行ってて!!」


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品