「お前女と話したことないだろ?」 と馬鹿にされたので、勢いで出会った美女に告白したが、なんと彼女は冒険者ランクSSでした

I.G

5話

それからの僕は後悔の念に
苛まれながら、ひたすらに討伐任務を
こなした。
自分では絶対無理だと思っていた
森の主、レッドパンサーを何とか討伐
することもできた。

ステータスも順調に上がっている。

だが、これでは駄目だと思った。

レッドパンサーを討伐できたのは、
ルンがサポートしてくれた
おかげであり、もしも一人で
完遂できたとしても到底
ディスペルさんには敵わない。

「もっと努力しなきゃ」

でなければ、あの人の隣には
いられない。

「オビ様、まだ任務を受けるのか?
無理し過ぎだぞ」

ルンに止められても、僕の
足は止まらない。

試験までもう残り1ヶ月もない。

もっと強い敵を倒して、
もっと経験値を稼がないと。





それから1ヶ月が
あっという間に過ぎた。

試験会場には、名だたる
冒険者が待機室で準備をしていた。

そこに僕が足を踏み入れた途端に、
一挙に視線が集中した。

兎の紋章。
落ちこぼれのDの証し。

「おいおい、来る場所
間違えたんじゃないのか? オビ」

僕の前に現れたのは、昔同じパーティー
仲間のガイズだった。

同期ということもあり、
僕をパーティーへと
誘ってくれた。
しかし、それは僕を
いじめるためだった。

「お前みたいに森の中で迷子に
なるような奴が、試験に
受かるわけないだろ」

誰のせいで迷子になったと
思ってるんだ。
水をくんできてくれと、
指示をしといて
帰ってきたらその場から
パーティーはいなくなっていた。

命からがら帰還した僕を
皆で笑い者にしただろ。

『プハハハッ! 見ろよ! 
こいつたかだかあんな森で
こんなボロボロになって
帰ってきやがった!』

何でそんなに
笑われなきゃいけないんだ。

僕が君たちに何をしたというんだ。

ただ、一緒に任務をこなそうと
しただけなのに。

『弱いやつは俺らのパーティーに
いらねぇよ』

それが彼から出た最後の言葉だった。

「何とか言えよ」

ガイズは僕の胸を押した。

「怖いのかよ。
足震わしてんじゃねぇぞ」

それに周りから嘲笑が聞こえてくる。

「帰るなら今のうちだぞ」

「か、帰るはず......ないだろ」

今にも消えそうな声で僕は抵抗した。

「あ? なんて?」

ガイズは顔を近づけて挑発してくる。

違う。もうあのときの僕とは違う。

「僕はもう」

その時だった。

ばっと僕とガイズの前に
ルンが介入した。

「あ? 何だこいつ」

ルンは無言で、仮面越しにガイズを
睨み付ける。

いつものことだ。ルンは僕以外に
全く声を発しない。
いつもこうやって僕を守ってくれる。
でも、もう守られるだけなのは
嫌だ。

「大丈夫だよ、ルン」

僕はルンの肩に優しく触れた。

ルンはさっと僕の後ろに下がる。

僕は堂々とガイズの前に立った。

「僕は君に感謝しているよ。
あのとき僕を置いて行ってくれて。
おかげで、素敵な仲間ができたから」

「は、はぁ? 何言ってんだ」

僕はガイズの横を素通りした。
全く相手にせず。

それにガイズは驚いたようで、
口をもごもごとしたまま
立ち尽くしていた。

後からトテトテとルンが追いかけてくる。

「成長したな、オビ様」

「まだまだこれからだよ、ルン。
集中していこう」









試験会場に集められた僕らを
待っていたのは、紫音さんではなく、
ギルドの係員だった。
完全にギルドが主催となっている。

『えーこれより、紫音様の
パーティーメンバー
選抜試験を行います。
それでは早速ですが、皆さんには
二人組を作ってもらいます』

二人組? チーム戦なのか。

隣にいたルンが体を寄せてくる。
組もうということなのだろう。

『チームはこちらで力が均等に
なるように決めますので』

それに不機嫌そうにルンは
地団駄を踏んだ。

均等にということは、Dランクの僕は
強い人と組まされるのか?

「はぁ......信じらんない......こんな
クズと組まされるなんて」

僕と組まされたのは、この街であの
ディスペルさんと肩を並べる
貴族の一人娘、アリス様だった。

対して、ルンが組んだのは
ディスペルさんだった。
ルンもDランクだし、Sランクの
人と組まされるのは当然か。

しかし、ルンとこのアリス様は
不機嫌だった。

ルンは僕と組めなかったことに。

アリス様は僕みたいな弱い奴と
組まされたことに。

「よ、よろしくお願い」

「気安く話しかけないでくれる?
こんな奴だったら、ディスペルと
組んだ方がましよ」

二人ともどちらがこの街
最強の戦士かで揉めたことが
あるほどに、ディスペルさんと
アリス様は特に仲が悪かった。

そのアリス様に今の言葉を
吐かせたのだから
よっぽど僕と組まされたのが
嫌だったのだろう。

「係員! 直ぐにパートナーを
変えてちょうだい!」

「それはできません」

即答だった。
嫌なら帰れとの態度に、更に
アリス様の機嫌が悪くなる。

お、終わった......僕の今までの努力が
無だった......

まだ始まってもないのに、
僕は半ば諦めモード。

いや! 諦めるな! 僕は
紫音さんのパーティーに入るって
決めたんだ!
ここは、ちゃんと話し合って
仲良くなろう。
そうすればきっと......

「あ、あのアリス様」

「話しかけるなって言ったでしょ」

猛獣のような睨みに僕は、

「はい、ごめんなさい」

もう諦めた。

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