才媛は一日にして成らず
第3章 夢にまで見た学園生活 (1)入学決定
時々はトラブルやアクシデントは見舞われたものの比較的平穏に時は過ぎ、選抜試験を経て、シレイアは無事にクレランス学園への入学することとなった。
「やった!! 確率は三分の一だったけど、本当にエセリア様と同じクラスになれた……。嬉しいぃ~」
エセリアと共に学生生活を送れる事実に狂喜乱舞したシレイアは、入寮期間初日に早々と荷物を寮の私室に運び込んだ。そして荷物を片付けると同時にいそいそと制服を着込み、校内の探索に出かける。
真っ先に本講義棟のホールに向かうと、予め説明を受けていた通り新入生のクラス編成表が掲示されており、希望通りのクラス分けを確認したシレイアは、一人喜びに打ち震えた。すると背後から声をかけられる。
「シレイア……。なにも泣き出す程の事ではないだろう?」
その呆れ気味の声に、シレイアは勢い良く振り返りながら語気強く訴える。
「なに言ってるの!? 同じクラスだったら歓喜の涙が、別のクラスだったら悲嘆の涙が溢れるわよ!! 初年度の教養科は新入生がランダムに振り分けられるけど、次年度からは専科になるから官吏科進級希望の私と必然的に貴族科進級のエセリア様とは、どうあってもクラスが分かれてしまうじゃない!! エセリア様と同じ教室で学べるチャンスがあるのは、この一年だけなのよっ!!」
「あぁ~、はいはい、そうだったな。お前にとっては死活問題だったな……」
いささか投げやりにローダスが応じると、少し離れた場所から苦笑気味の声が近づいてくる。
「相変わらずだな、ローダス、シレイア」
「元気そうでなにより」
「全員揃って入学が決まったのを聞いて、嬉しかったよ」
かつて総主教会付属の修学場で共に学んでいた面々が揃い、シレイアとローダスは久しぶりに顔を合わせる彼らと笑顔で挨拶した。
「ジャン、ギャレット、エリム。久しぶりだな」
「三人ともおめでとう。でも揃ってどうしたの? 私はエセリア様と同じ学園に通えるのが嬉しくて、入寮期間初日の今日、荷物を運び入れたんだけど」
「本当に気が早過ぎだろう。ノランおじさんが『なにもそんなに急いで行かなくても良いだろう』と、泣きそうな顔をしていたぞ。おかげで『ローダス、シレイアの事をくれぐれも頼む』と縋られて、俺まで初日に入寮する羽目になったし」
「はぁ!? 何言ってるのよ! 一人で入寮手続きも、荷物の搬入もできたわよ!? あんたが勝手に付いて来ただけでしょうが!?」
早速揉め始めた二人を見て、他の3人は苦笑しながら話を続けた。
「二人とも、相変わらずだな。変わっていなくて嬉しいが」
「俺達も入学が待ちきれなくて、早々に荷物を運びこんでね。早速制服を着込んで寮の部屋を出たら、ばったり遭遇して」
「それで全員で、クラス分けの発表を見に来たんだが……。二人とも、こっちを見たか?」
「え? こっちって?」
「あ、こういうのも貼り出すのか」
クラス編成表しか見ていなかったシレイアとローダスは、その横に貼り出されている選抜試験成績の順位表に、指摘されてようやく気がついた。
「貴族は必要な学費を払えば無試験、騎士科希望の人間は実技と最低限の教養試験だけ。それ以外の官吏科進級希望の庶民は選抜試験を受けるから仕方がないけど、最初から成績順を公表するとはね。恐れ入ったわ」
「そう言うな。確かにえげつないが、それだけ気を引き締めて学生生活を送れって事だろう?」
「そうだよな。1位のシレイアと2位のローダスはさすがだけど、俺はなんとか中間位だから。気を引き締めないと、たちまち順位が落ちそうで怖い」
「それは俺も同感。下位にならなくて良かったが、これから試験ごとに成績が発表されるんだろうな」
「でもこれで、総主教会付属修学場出身者は、全員上位の方に入ったな。指導してくれた先生方や、費用を負担してくれた総主教会の皆さんに対して、なんとか面目を保てて良かった」
「まあ! 全国から受験者が集まる選抜試験に合格するだけでも凄いのに、皆さんは揃って合格者の中でも上位に入られたのですね! さすがは総主教会が管轄する修学場の出身者ですわ!」
「え?」
シレイアが真顔で話していると、急に割り込んできた声があった。その声のした方を振り向いたシレイアは、そこに友人の姿を認めて笑顔になる。
「サビーネ! 久しぶり! 試験や入学準備で、暫くの間全然書庫分店に行けなくて、本当に辛かったわ!」
「お疲れ様、シレイア。でもシレイアだったら絶対合格すると思っていたから、私は全然心配していなかったわ。この間、合格祝いにどの本を贈ろうかと思って、凄く頭を悩ませていたんだから」
「嬉しいわ。ありがとう」
駆け寄って手を取り合い再会を喜んでから、シレイアは友人達に彼女を紹介した。
「皆、こちらはリール伯爵令嬢の、サビーネ・ヴァン・リールよ。ワーレス商会書庫分店で知り合った友達なの。そういえば、サビーネも同じクラスで嬉しいわ。一年間よろしくね」
「こちらこそよろしく。入寮早々、優秀な方々とお会いできて嬉しいわ」
「あ、いや……。優秀だなんて……」
「さすが、シレイアは大司教の娘だけあるよな」
「ああ、さすがに貴族のお嬢様相手に、そこまで気安く対応できないぞ」
かなり気後れしている周囲に、シレイアはそこまで遠慮しなくても良いと言おうとした。しかしそれよりも早く、サビーネが笑顔を振り撒く。
「皆様、そんなに謙遜や遠慮はなさらないで。寧ろ、必要以上のそれらは、あなた達にとって不要どころか害悪ですもの」
「え?」
「サビーネ? どういう事?」
困惑する友人達を代表して、シレイアが怪訝な顔で問いかける。するとサビーネが笑顔を一変させ、真顔で話し出した。
「やった!! 確率は三分の一だったけど、本当にエセリア様と同じクラスになれた……。嬉しいぃ~」
エセリアと共に学生生活を送れる事実に狂喜乱舞したシレイアは、入寮期間初日に早々と荷物を寮の私室に運び込んだ。そして荷物を片付けると同時にいそいそと制服を着込み、校内の探索に出かける。
真っ先に本講義棟のホールに向かうと、予め説明を受けていた通り新入生のクラス編成表が掲示されており、希望通りのクラス分けを確認したシレイアは、一人喜びに打ち震えた。すると背後から声をかけられる。
「シレイア……。なにも泣き出す程の事ではないだろう?」
その呆れ気味の声に、シレイアは勢い良く振り返りながら語気強く訴える。
「なに言ってるの!? 同じクラスだったら歓喜の涙が、別のクラスだったら悲嘆の涙が溢れるわよ!! 初年度の教養科は新入生がランダムに振り分けられるけど、次年度からは専科になるから官吏科進級希望の私と必然的に貴族科進級のエセリア様とは、どうあってもクラスが分かれてしまうじゃない!! エセリア様と同じ教室で学べるチャンスがあるのは、この一年だけなのよっ!!」
「あぁ~、はいはい、そうだったな。お前にとっては死活問題だったな……」
いささか投げやりにローダスが応じると、少し離れた場所から苦笑気味の声が近づいてくる。
「相変わらずだな、ローダス、シレイア」
「元気そうでなにより」
「全員揃って入学が決まったのを聞いて、嬉しかったよ」
かつて総主教会付属の修学場で共に学んでいた面々が揃い、シレイアとローダスは久しぶりに顔を合わせる彼らと笑顔で挨拶した。
「ジャン、ギャレット、エリム。久しぶりだな」
「三人ともおめでとう。でも揃ってどうしたの? 私はエセリア様と同じ学園に通えるのが嬉しくて、入寮期間初日の今日、荷物を運び入れたんだけど」
「本当に気が早過ぎだろう。ノランおじさんが『なにもそんなに急いで行かなくても良いだろう』と、泣きそうな顔をしていたぞ。おかげで『ローダス、シレイアの事をくれぐれも頼む』と縋られて、俺まで初日に入寮する羽目になったし」
「はぁ!? 何言ってるのよ! 一人で入寮手続きも、荷物の搬入もできたわよ!? あんたが勝手に付いて来ただけでしょうが!?」
早速揉め始めた二人を見て、他の3人は苦笑しながら話を続けた。
「二人とも、相変わらずだな。変わっていなくて嬉しいが」
「俺達も入学が待ちきれなくて、早々に荷物を運びこんでね。早速制服を着込んで寮の部屋を出たら、ばったり遭遇して」
「それで全員で、クラス分けの発表を見に来たんだが……。二人とも、こっちを見たか?」
「え? こっちって?」
「あ、こういうのも貼り出すのか」
クラス編成表しか見ていなかったシレイアとローダスは、その横に貼り出されている選抜試験成績の順位表に、指摘されてようやく気がついた。
「貴族は必要な学費を払えば無試験、騎士科希望の人間は実技と最低限の教養試験だけ。それ以外の官吏科進級希望の庶民は選抜試験を受けるから仕方がないけど、最初から成績順を公表するとはね。恐れ入ったわ」
「そう言うな。確かにえげつないが、それだけ気を引き締めて学生生活を送れって事だろう?」
「そうだよな。1位のシレイアと2位のローダスはさすがだけど、俺はなんとか中間位だから。気を引き締めないと、たちまち順位が落ちそうで怖い」
「それは俺も同感。下位にならなくて良かったが、これから試験ごとに成績が発表されるんだろうな」
「でもこれで、総主教会付属修学場出身者は、全員上位の方に入ったな。指導してくれた先生方や、費用を負担してくれた総主教会の皆さんに対して、なんとか面目を保てて良かった」
「まあ! 全国から受験者が集まる選抜試験に合格するだけでも凄いのに、皆さんは揃って合格者の中でも上位に入られたのですね! さすがは総主教会が管轄する修学場の出身者ですわ!」
「え?」
シレイアが真顔で話していると、急に割り込んできた声があった。その声のした方を振り向いたシレイアは、そこに友人の姿を認めて笑顔になる。
「サビーネ! 久しぶり! 試験や入学準備で、暫くの間全然書庫分店に行けなくて、本当に辛かったわ!」
「お疲れ様、シレイア。でもシレイアだったら絶対合格すると思っていたから、私は全然心配していなかったわ。この間、合格祝いにどの本を贈ろうかと思って、凄く頭を悩ませていたんだから」
「嬉しいわ。ありがとう」
駆け寄って手を取り合い再会を喜んでから、シレイアは友人達に彼女を紹介した。
「皆、こちらはリール伯爵令嬢の、サビーネ・ヴァン・リールよ。ワーレス商会書庫分店で知り合った友達なの。そういえば、サビーネも同じクラスで嬉しいわ。一年間よろしくね」
「こちらこそよろしく。入寮早々、優秀な方々とお会いできて嬉しいわ」
「あ、いや……。優秀だなんて……」
「さすが、シレイアは大司教の娘だけあるよな」
「ああ、さすがに貴族のお嬢様相手に、そこまで気安く対応できないぞ」
かなり気後れしている周囲に、シレイアはそこまで遠慮しなくても良いと言おうとした。しかしそれよりも早く、サビーネが笑顔を振り撒く。
「皆様、そんなに謙遜や遠慮はなさらないで。寧ろ、必要以上のそれらは、あなた達にとって不要どころか害悪ですもの」
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