404号室の旅人

夕暮G太郎

第九話 「とりあえずお茶にしましょう」

藤田は砂漠へと繋がるドアを開けて花火を数発打ち込んだ。

しばらくドアを開けたまま鍵屋を待っていた。
砂漠は夕暮れになっていた。


管理人「本当に一面砂漠だわ、、、凄い、、。」

藤田「、、、さすがにあんな打ち上げ花火じゃ気付かなくないですか?」

管理人「、、、結構飛距離はあると思うんですけどね、、。」



その瞬間、ドアから砂だらけの鍵屋が飛び込んで来た。


鍵屋「うわぁぁぁ〜〜!!あったぁぁぁ!!!」

藤田「うわっ!!」

管理人「きゃあ!!」


鍵屋「はぁはぁはぁ、、、、ここは?」


藤田「、、、、僕の部屋です。」


鍵屋「おお〜〜!!戻ってこれた!!」

鍵屋は両手を上げて喜んだ。砂が部屋中に飛び散る。

管理人「、、、無事なようで、なによりです。」





鍵屋は藤田を見つけると胸ぐらを掴んだ。


鍵屋「お前!よくもやってくれたな!」


藤田「いやいやいや、、元はと言えばあなたが、、、。」

管理人「こら!やめなさい二人とも!」

管理人が二人の間に入った。


鍵屋「何で管理人のあんたがここに居るんだ?というか、、、あんた何者だ?砂漠でもあんたに会ったぜ?ハスミちゃん?」


管理人「、、、あなたを助けたんですよ!私の能力で。色々話さないとですね、、。」

鍵屋「、、、、。」

藤田「管理人さんの能力って何なんですか?」

管理人「私は能力者に対して、その人に一度触れてしまえばその人の能力を無効化出来るんです。」

回想
二人(鍵屋と管理人)は握手をした。

回想
藤田は階段でマンションの下まで歩いて行くと黒いパーカーを着た人(管理人)とぶつかって謝っていた。


管理人「それだけでなく無効化した能力者の声が時々ノイズのように聞こえてきたり、そのノイズにのせてテレパシーを送ったり出来ます。」







どどどんっっ!!!! 『能力 無境界線キャンセラー』 & 『能力 長い恋文テレパシー』 










管理人が寝室のドアを開けると元の寝室に戻っていた。
2枚の画も壁に掛かっている。
だが部屋は白黒のままだった。




三人はリビングで一先ずお茶をすする事にした。
テーブルの上を少し片付けて椅子に着いた。

鍵屋「ふぅ〜〜〜〜、、、、。」

管理人「落ち着きました?」

藤田「、、鍵屋さん、、あの砂漠は何だったんですか?向こうで何があったんですか?」

鍵屋「、、、俺にも良くわかんねぇけど、、、とにかく一面砂漠で、、しかもハスミちゃん、いや、管理人さんが牢屋に入ってて、、、ボロボロのスカイツリーがあった、、あれは、、東京だったんだ、、、。」

藤田「え?どういう事ですか?情報量が多くて頭に入ってこない、、、。」

鍵屋「俺だって混乱してるんだよ!!管理人さん!あんたなら何か知ってるんだろ?」


二人は管理人の顔を見た。

管理人「、、、私は数年前、、『きさらぎ駅』という場所に迷い込みました。そこでおじさんに出会いあの砂漠へと連れて行かれたんです。」

鍵屋「おじさん?、、、それって都市伝説の『時空のおっさん』なんじゃないか?」

藤田「あの、、その『きさらぎ駅』とか、、『時空のおっさん』って、、何ですか?」

鍵屋「有名な都市伝説だよ!詳しく知りたいならネットで調べろ!」

藤田「え〜?」


鍵屋「じゃあ、、俺が砂漠で会ったハスミちゃんは、、、昔の管理人さんって事なのか?」

管理人「はい、、、数年前の『私』です。私は過去にあの砂漠で鍵屋さんと既に出会っていました。」


鍵屋「、、、それで、俺と砂漠で別れてから、それからどうした?」

管理人「スカイツリーまで行くとそのおじさんが迎えに来てくれて、、私の居た元の世界に帰してくれました。」

鍵屋「、、なんてこった、、、じゃああの砂漠の東京は異次元って事だったのか?なんであんな世界が出来ちまったんだ?人間は絶滅したのか?」

藤田「まさか、、、まさか、、、ノストラダムスの予言、、、。」

鍵屋「あのなぁ、、、今時ノストラダムスの予言って、、、お前の能力だろ?何したんだよ?」

藤田「判りませんよ、、、僕はあなたが押し入って来たときに寝室に閉じ込めて、、どこかに行っちゃえって強く思っただけです。」

管理人「、、、もしかして藤田さんの能力って空間を変えてしまうのかもしれないですね、、、世界をも変えてしまう能力、、、脅威ですね、、、。」


三人はやっと落ち着いてきた様子でお茶を飲む。


管理人「それと、、鍵屋さん、これを肝に銘じてもう画を盗もうなんて考えないことですね。」

鍵屋「へいへい、、もう良いよ。またこのおっさんに今度は宇宙にでも飛ばされたらたまったもんじゃないしな、、、ところで、、、もう盗んだりしないから、、、一応参考までにだな、、、一番高い画って結局どっちなんだ?」

管理人「あ〜〜〜確かに!私も興味ありますね。藤田吾郎の遺作を見てみたいです。」

藤田「高いかどうかは判りませんが、、、生前僕のために書いた最後の画はあれです。」


そう言って藤田は壁を指差す。

管理人「あれ?画ってまだ寝室にあるんじゃ、、?」

藤田「いやあの壁です。よく見てください。」


壁に目をやると 時計 がある。


鍵屋「時計、、、の画!」


藤田「この部屋白黒だから気付かないと思うんですがあの画の額縁 白いんです。だから壁と同化して見えないんですよ。」


鍵屋「本当だ、、、画だ、、、これが、、、藤田吾郎の遺作?」


藤田「鍵屋さんが先ほど プレステの本体がないとか言ってましたけど、あれもちゃんとここにあるんですよ。」

藤田が指差すと風景と同化したゲーム機が見えた。

鍵屋「あ、ほんとだ!トリックアートみたいだな、、、。」

藤田「だからこの時計の画の額縁も見えてないんだと思いまして、他の2枚を隣の寝室に持ち出せばそちらに気を逸らせると思ったんです。」

管理人「なるほど!考えましたね!」

鍵屋「なんだよ、、騙されたぜ、、ちくしょう、、。」

藤田「とっさの事でしたから思いつきだったんですが、、鍵屋さん、帰ったと思ったらすぐに来るんだもの、、。焦りましたよ、、。」


一同は黙って時計の画を見ながらお茶をすする。



鍵屋「、、、え?」

藤田「、、、、ん?」


鍵屋「何言ってんだ?俺はこの前ここに来たのは、、、最初にここに侵入したのは、2週間前だぞ?」

藤田「え?またまた、、、。ここを出ていったらすぐに帰って来たじゃないですか?」

鍵屋「いやいや、拳銃を盗むの苦労したんだぞ!怖いそっち系の人たちの事務所からクスねるの一苦労だったんだぞ!まぁ砂漠にもう捨てて来ちまったけど、、。」


藤田「、、、、あれ?だって鍵屋さん、最初にここに来て、出て行った後、僕がとっさに画を寝室に持っていって、、ものの10分くらいでまた来たじゃないですか?」

鍵屋「いや、、だから!2週間前だよそれ!」

藤田「、、、そんな、、、そう言えば、、。」

藤田はテレビを見た。

藤田「最初に来たとき、鍵屋さんは僕が今やってるゲームを懐かしいって言ってましたよね?」

鍵屋「あぁ!昔すげーハマったよ!」

藤田「昔って、、、いつですか?」


鍵屋「え〜〜覚えてないなあ、、、小学生の時かな、、。」


藤田「これ、、、僕は先月発売日に買ったんですよ、、新作で、、。」



鍵屋「、、、おっさん、、、、引きこもりなのにゲームは買うんだな、、。」


管理人「そこ今どうでもよくないですか?」

一同は再び静まり返る。


管理人「、、、えーーっと藤田さん、、私は管理会社の前任から引き継いでこのマンションの管理をしてるんですが、藤田さんの家賃は毎月ではなく飛び飛びで支払われています。」

藤田「それ前にも玄関で言われましたが、僕は毎月必ず振り込んでいますよ!ここ3年間しっかりと!、、、親の残してくれたお金でですけど、、。」


管理人「藤田さん、、あなたはここに3年間住んでるとおっしゃいましたが、、私の前任の頃からあなたはここで一人で住んでる事となっております。」

藤田「え?どういう事ですか?」

管理人「あなたがここに住み始めて20年は経ちます。」

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