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フランドールの禁断書架 ~つよつよ美少女吸血鬼、いろんな日常をちょっと覗き見してはメモってます~

ノベルバユーザー557447

第十編:フランちゃん専用湯たんぽこいしちゃん

 よおこそ。
 前回の話はどうだったかしら。サニーミルク、可愛らしいでしょう?

 性格が悪い?
 まあ、そうかもしれないわ。けれどそれに関してはサニーが悪いのよね。唯でさえ嗜虐嗜好の傾向にある吸血鬼にあそこまで的確な反応を見せて、その癖常に私に心を許すのだもの。これで我慢しろというのがそもそも無理な話だわ。

 ……まあ、確かに彼女を友人と称すのは、少しばかり違うのかしらね。寧ろペットと餌付け主、などと呼んだ方が良いやもしれないわ。
 ええ、ちゃんと彼女に礼はしているのよ?
 お菓子と紅茶で、なのだけど。
 先日読ませた話の通り、妖精はお金に興味がまるでないのだもの。


 さて、今日は……あら?
 知らない原稿があるわね。パチェのところから紛れ込んだのかしら。いえ、違うわね。そもそもうちで扱っているものと紙質が違うもの。

 ……なに、読みたいの? はあ、まあ、構わないのだけど……内容も分からないものを読みたがるだなんて、貴方も随分と物好きね。ああ、それ以前にこんなところに来ている時点で物好きなことは当然だったかしら。

 それじゃあ、貴方が楽しめるようなものであることを祈っているわ。――『ゆっくりしていってね』。













 こんにちはー、古明地こいしです。フランちゃんの本棚に書いたものを紛れ込ませたら誰かに読んでもらえるって聞いて、思わず筆を執っちゃいました。えへへ、こうして書いたものが読まれると思うと照れくさいやら嬉しいやらでちょっとテンション上がっちゃいますね。
 これの読者さんはどうやら、フランちゃんと仲良くやってくれているって聞いてます。フランちゃん可愛いでしょ? というわけでここでは、読者さんの知らないフランちゃんの姿について話しちゃおうかなーって思います。
 まずは、そうですね。
 フランちゃんは変温動物です、というところから話していきましょう。

 フランちゃんは吸血鬼です。これは皆さん知っての通りですね。恐ろしい吸血鬼にして魔法少女、それがフランちゃんです。
 では吸血鬼がリビングデッド、生ける死体の一系譜というのはご存じですか? これはちょっと知らないひともいるかもしれません。ゾンビ、グール、スケルトン。それら動く屍たちのハイエンド、最上位種こそが吸血鬼なんですね。といってもこれはフランちゃんから聞いた話そのままなんですけど。
 それで、リビングデッドって普通は体温がないですよね? いや皆さん実際には知らないと思うんですけど、そうなんです。何てったって屍ですから、体温があるわけがないんですよね。じゃあ吸血鬼は?
 はい、そういうわけなので、フランちゃんたち吸血鬼も基本的に体温がないんです。つまりフランちゃんは変温動物。抱き着くとひんやりしてて気持ちいいんですよ? 特に夏場とか。フランちゃん自身は結構嫌な顔するんですけど。それはまあ、ご愛敬ってことで。

 さて。
 フランちゃんは変温動物と言ったんですけど、そういえばトカゲとかの変温動物って、寒いと動きが鈍りますよね。トカゲ分かります? 可愛いですよねトカゲ。はいうちのペットにもいるんですよトカゲ。つるつるしたウロコが最高です。ってそうじゃなくって。
 じゃあフランちゃんはどうかというと、これまた寒いとすっごく鈍くなるんですよね。はい、あんまり知られてないんですけど、そうなんです。どのくらいかっていうと、いつもなら私がどれだけ隠れて入っていっても一瞬で目を合わせてくるのに、寒い日は全く隠れずに堂々と入っても気付かれないぐらい。ほんとですよ?
 いや、ほんとに可愛いんです。あの理性と知性に満ちた瞳がぼんやりと焦点合わせずにうろうろしてるんですよ。ぴんと張り詰めたフランちゃんの周りの空気もすっごくゆるゆるで弛み切ってるんです。一度見てほしいぐらいです。ほんとに。あんなの見たら誰でも髪わしゃわしゃしたくなりますって。というか三回ぐらいしたんですけど。その度に私の頭が爆散して大変だったんですけど。それはまあまたの機会にでも。

 ああ、そうそう、レミリアさんですね。あのひとも吸血鬼ですから本来ぽわぽわになるはずなんですよ。でもほら、レミリアさんはあれで結構しっかりしてるので。
 フランちゃんと違ってレミリアさんは生活習慣がすっごく規則的なんですよ。夜寝る時間も朝起きる時間も普段からしっかり決まってて。どうでもいいですけど吸血鬼が夜寝て朝起きるのってどうなんでしょうね。まあいいんですけど。だからレミリアさんの部屋って、起きる一時間ぐらい前になると自動で魔術暖房がつくらしいんですよ。そしたらレミリアさんが起きたときにはもう、部屋はほかほかレミリアさんもほかほか。外に出るときもそうで、何重にも保温や暖房の魔術をかけてもらってるみたいですよ。嘘だと思うならこんど、冬の頃にレミリアさんの服を触ってみるといいです。ほっかほかですからね。いや、比喩とかなしにすっごいほっかほかですからね。まほうのちからってすげー。

 さておいて。
 その点フランちゃんは生活習慣すっごく不規則ですからね。寝たいときに寝て満足したら起きる、みたいな。おかげでいつ行ったら起きてるか全く分からないんですよ。困っちゃいます。いやほんとは困ってないですけどね。フランちゃんの無防備な寝顔とか眺めてるだけで数時間は潰せますし。とにかくそういう調子ですから、フランちゃんの場合は起きてから暖房入れなくちゃいけないんですよ。そうなると当然部屋が温まるまでいくらか時間がかかっちゃう。それまでの時間がつまり、ぽわぽわフランちゃんタイムというわけです。

 ときに、これは自慢なんですが、私って結構、子供体温なんですよ。
 えへへ、実はこれ、家ではあんまり自慢になったりしないんですけど。だってうちの家族とか年中インドア暖房つけっぱお姉ちゃんと、それに加えて炎使いの猫と鴉ですからね。私にわざわざあっためてーなんて言ってくるひとがいないんです。それはともかく。

 そういうわけで、あれはいつだったかなあ。
 私がフランちゃんと出会ってから、最初ぐらいの冬頃のことだったんじゃないかと思うんですけど。
 フランちゃんのところに遊びに行くと、丁度フランちゃんが起き抜けで、暖房付けたところだったんですよ。はい、丁度ホラーコメディみたいな感じで、ベッドの上の棺桶の中から腕だけ出して、マジックアイテムらしき木の杖を一振りしてたんです。それだけでもまあ、これは見に来た甲斐があったなー、って気分だったんですけど。だってあのフランちゃんがそんなだらけたことしてるんですもん。ギャップがすごくて。
 ともかく、そのままフランちゃんたらもうひと眠りというか、しばらく棺桶の中に籠ったまんまだったんですね。まあまだ全然空気もあったまってなかったですからね。寒かったんだと思います。
 だから私はそっとその棺桶のふたを開けて、こう、フランちゃんのぼんやりした顔をのんびり鑑賞してたわけです。あー可愛いなーって。時折フランちゃんのほっぺをぷにぷにつついて、わーひんやりしてるー気持ちいいーとか思いながら。
 そしたらね、唐突にフランちゃんの腕がするりと私の方に伸びてきたんです。もうびっくりですよ。まさか既に意識がはっきりしてるなんてーって思いながら捕まえられて。これはフランちゃんおこおこかなーってちょっと身構えてたんですけど。でもそうじゃなかったんですよ。

 それで、ぎゅっとそのまま抱き寄せられたんです、私。
 そう、抱き枕です。

 フランちゃんと私は大体背丈もおんなじぐらいですから、もうほんとにすっごく顔が近くって。しかも耳元で普段のフランちゃんからは想像できないようなふにゃふにゃ声で「あったかい……」って囁かれて。もう「可愛い~~~~~!!!!!」って叫ぶのをこらえるのに必死でしたね。あのとき録音機器を持って行かなかったのは失態でした。いやほんとに。それからは冬場になると必ず録音機器を携帯するようにしてるんです。にとり印のやつ。皆さん見ます? って書いてみたはいいんですけど、そういえば顔を合わせることはないから当然見せられないんでしたね。これは失敬。
 でですね、当然ですけどそのフランちゃんのとろとろにふにゃふにゃな顔を間近で観察できる機会なんてそうそうないわけですから、しばらくじーっとフランちゃんの顔を見つめてたわけです。そうすると不思議なことにだんだんフランちゃんの顔の血色がよくなってくる。目の焦点があってきて、それでどんどん大きく見開かれてくる。なので私は、フランちゃんのびっくりした顔なんて初めて見たな―、なんてのんきにそのまま眺めて、機を見計らって声をかけたわけです。

「おはよーフランちゃん、こいしだよー。いやー、それにしても吃驚しちゃったわ、まさかフランちゃんに抱き寄せられて抱き枕にされちゃうなんて。でも、ふにゃふにゃの顔で「あったかい……」って言ってきたフランちゃんはとっても可愛かったし、それでおあいこかしら?」

 すると、まっかになったフランちゃんが声にならない声を上げながら、吸血鬼の力全開で私を突き飛ばしたんです。ぐるりと視界は一回転、ぐるりと放物線を描いて床に頭を打ち付けた私は、そういうわけで、満身創痍、ばたんきゅー、となったわけでした。

 ですから、今回のお話は、ここまで。
 どっぴんぱらりの、ぷう。

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