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フランドールの禁断書架 ~つよつよ美少女吸血鬼、いろんな日常をちょっと覗き見してはメモってます~

ノベルバユーザー557447

第七編:無間無条理無理問答

 よおこそ。
 前回の話はどうだったかしら。あの世界のこいしもなかなか愉快な性質だと思うのだけど。
 そんな調子でこいしの性質は平行世界毎にまるで違うの。無意識に関わる、ある程度他人に気付かれにくいという点だけは同じなのだけど。面白いでしょう?

 ……あら、何かしら。
 態々後日聞くのではなくて、読んだその時に感想を聞けばいい?
 はあ……これは私の持論なのだけど、読後の余韻に浸る時間ほど貴いものは他にないのよ。そういう状態の相手に向かって、無理に余韻から引き離してまで話を聞いてほしいとは、私はとても思えないわ。
 こればかりは譲る気はないの。悪いのだけど。

 ああ、丁度良いわ。
 今日のところはこれでも読んで、明日来るまでに読み解けるよう頑張ってみてはどうかしら。
 キャストは二人、こいしと、私よ。
 それじゃあ、精々悩んで頂戴。――『ゆっくりしていってね』。














 机の上には林檎が一つ。それを正面に二人の少女が、向かい合って座っている。

「今日は雨かしら」

 少女の一方、フランドールが問いかける。

「猫が可愛かったわ」

 少女の他方、こいしが応える。

 二人の少女はころころと笑った。傍からそれを見たものがいれば、まず「不気味である」と評するに違いないような雰囲気であった。会話が全く噛み合っていない風であることも、彼女らには全く気にならないかのようであった。


「本が汚れてしまうわ」
「とっても綺麗よ」
「それ、甘いわけ?」
「まるで夢のようだわ」
「芳しい香りね」
「わたし、綺麗?」
「貴方の目の前にいるわ」

 二人はじっと互いを睨めつけた。どちらの口元にも薄っすらとした笑みが張り付いていた。ただし、それはあくまで口元だけの話だった。二人の視線はどちらを見ても、互いのことを値踏みするように、鋭く細められていた。

「最近、新しい子と知り合ったのよ」
「お姉様ったらひどいのよ」
「いつもはずっと川辺にいたみたいなんだけどね」
「最近お姉様が図書館の方に入り浸ってたんだけど」
「その子、実は抜群に釣りが上手かったのよ」
「何してるかと思ったら私の部屋を監視してたのよ」
「だからね、訊いてみたの。なにかコツとかあるのかなって。そしたらね、」
「しかも、それを指摘したときのお姉様の言い訳ったら傑作だったのよね」

 そして二人は、歯を剥き出して同時に言った。

「レミリアさんって最近なにか面白いこと言ってた?」
「最近の子ってどうやって上手く釣るのかしら」

 けらけらと、くすくすと、二人は揃って笑い出した。

「残酷ね」
「ワンコインよ」
「素敵だと思うの」
「美味しいわ」
「雨模様よ」
「言うほど幻想的かしら」
「とっても甘いと思うけど」
「気紛れだものね」
「木管楽器だけに?」
「猫よ」

 少しづつではあったけど、二人の言葉を交わす速度は、どうやら上がっているようだった。証拠に、二人の言葉を返すまでの間の長さは、既に初めの半分ほどになっていた。

「まあ犬だからね」
「時間はあるかしら」
「本で読んだんだっけ」
「羽虫だと思うのだけど」
「鋏借りてもいい?」
「鼠があるわ」
「わ、しか合ってないじゃない」
「牡丹餅だものね。……あ、しまった」

 瞬間、フランドールは心底慌てたように口を抑えた。

「お、やった」

 こいしはにやりと口を歪めた。

「……ふふん」
「あっ」

 そして、すぐに二人の表情が入れ替わった。




「むむー、不覚……」

 こいしは唸りながら仰向けに倒れこんだ。その表情は、先程までの感情の読めない不気味な笑顔から一転していて、まさしく姿相応の少女と見紛うほどだった。その眼前で腕を組み、不敵な笑みを浮かべているフランドールの側を見ても、それは同様のようだった。

「前のお返しよ。悪く思わないで頂戴」
「別にいいんだけどさー。うーんでもまさか私がフェイントに引っかかるとは」
「鍛錬が足りないのではなくて?」
「わーお辛辣」
「冗談よ」
「知ってる」

 フランドールは笑いながら机の林檎を手に取って、そのまま齧り付いて見せた。その様子を見てこいしが言う。

「知恵の林檎の味はどう?」
「最高ね。糖質が疲れた脳髄に染み渡るわ」

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