【第二部完結】『こちら転生者派遣センターです。ご希望の異世界をどうぞ♪』【悪役令嬢編】

阿弥陀乃トンマージ

第8話(3)準決勝Bブロック中堅戦

「さあ、続いて中堅戦です! 各リポーターさん! 選手の意気込みをお願いします!」

「チーム『悪役令嬢』、ルッカ選手、意気込みをお願いします……」

「と、とにかく3ポイントを取りに行くだけだぜ!」

「ありがとうございます……次、お願いします」

「はい! チーム『剛腕』、ガルシア選手、意気込みの程をお願いします!」

「ふん、好き勝手に暴れるだけだ……」

「ありがとうございます! 次、お願いします!」

「は、はい! チーム『赤点』、ア、アンナ選手、意気込みを!」

「ベストを尽くします……」

「と、とても冷静なコメントを頂きました! つ、次、お願いします!」

「はい~チーム『龍と虎と鳳凰』、ウンガン選手、今どんな感じ~?」

「ゲンシンが3ポイント取ってくれただで、この流れをつなぎたいね~」

「なるほどね~じゃあ、お返ししま~す」

「さあ、四人がリングに上がろうとしています……解説は昨日惜しくも敗退したチーム『狐の目』のタカさんにお願いしています。タカさん、よろしくお願いします」

「……よろしく」

「この中堅戦、どう見ますか?」

「……予想が難しいな」

「ちゅ、注目選手などはいらっしゃいますか?」

「……ガルシアの捲土重来を期待する」

「け、けんど? ちょ、ちょうらい?」

 実況の方が固まってしまいます。わりと今回も解説者の人選ミスだと思います。

「……はじまるぞ」

「お、おっと四人がリングに上がった……審判が今、開始の合図を出しました!」

「おらあっ!」

「!」

「あっと、いきなりルッカがウンガンに仕掛けに行ったぞ!」

「3ポイント取られたら、勝ち抜け決定だからな! そうはさせねえぜ! 『火蹴』!」

 ルッカさんが火を纏った蹴りを操り出します。

「ふん!」

「おあっ  熱っ 」

「ウンガンが拳を振り上げると、ルッカが転がった! これはどういうことか 」

「鳳凰の炎で火の魔法を相殺したか……」

 タカさんが小声で呟きます。

「ふ~ん……今のを熱いくらいで済ませられるとは……なかなかの火の使い手だで……さて、今度はこっちから仕掛けさせてもらおうかな……」

 ウンガンさんが倒れ込むルッカさんに歩み寄ります。

「ぐっ……」

「おい、太っちょ! 俺が相手だ!」

「む!」

「おっと! 今度はガルシアが仕掛けるぞ!」

「炎とこの肉の防壁を破れるかな~」

 ウンガンさんがご自分のお腹をポンと叩くと、炎がその周囲に吹き上がります。炎のバリアが張られたような状態になります。そして、ガルシアさんに向き直ります。

「おらおらっ!」

「ぐほっ 」

「ガルシアの猛ラッシュ! ウンガン、たまらず崩れ落ちる!」

「ば、馬鹿な……燃え盛る炎に躊躇なく手足を突っ込んでくるなんて……」

「燃やされるなんて日常茶飯事だったからな……その程度どうってことはねえ」

「な、なるほど、噂に違わぬなかなかのバーサーカーぶり……これは余裕をかましている場合ではないようだで……」

「ウンガン、なんとか立ち上がったぞ!」

「ふん、案外タフだな……だが、これで終わりだ!」

「くっ!」

「ん?」

「ウンガン、鳳凰の姿に変わったぞ!」

「それを待っていました……」

「  しまっ……」

「な、なんと! ウンガンが消えた!」

「なるほどな……」

 タカさんが一人頷かれます。実況の方が声を上げます。

「お一人で納得してないで、解説して下さいよ!」

「……巨人を封じ込めた封印魔法を使ったのだろう」

「そ、そうなると勝敗はどうなるんですか……?」

「それは知らん。そちらの方が把握しているのではないか?」

「そ、それは……あ、あっと! ガルシアがアンナに襲いかかる!」

「水を差してくれたな! 女だからって容赦はしねえぞ!」

「まあ、そうでしょうね」

 アンナさんが小瓶の口をガルシアさんに向けます。ガルシアさんが立ち止まります。

「む! 俺も封印しようってか? 出来るものならやってみな!」

「私は別にチンピラコレクターではありませんので……」

「チ、チンピラだと 」

「失礼、珍品の言い間違いでした」

「同じことだ!」

 ガルシアさんがアンナさんに接近します。

「そこまで接近してくれると助かります……!」

「むっ 」

 アンナさんの小瓶から凄まじい熱風が吹き出しました。ウンガンさんはリング外に転がり、熱風をもろに喰らったガルシアさんはうつ伏せに倒れ込みました。タカさんが頷きます。

「ふむ、そう来たか……」

「いや、だから! 解説をして下さいよ!」

「……あれも封印魔法とやらの応用形だろう。捕えた鳳凰を一気に解放したのだ」

 実況の方に促され、タカさんは淡々と解説します。

「思った以上の熱風でしたね……大変参考になりました」

 アンナさんが冷静に呟きます。審判が宣告します。

「ウンガン、敗北! 0ポイント! ガルシア、敗北! 1ポイント!」

「さあ、リング上にはアンナとルッカが残ったぞ!」

「そらっ!」

「!」

 ルッカさんの攻撃をアンナさんが躱します。ルッカさんが笑います。

「避けやがったか……最低限の体術の心得はあるみてえだな……ただ、今のは加減してやったんだ! 次の攻撃は躱せねえぞ! さっさと降参した方が身のためだぜ!」

「……お気遣いなく、やりようはいくらでもあるので」

「後悔すんなよ!」

「……」

「なっ 」

 ルッカさんだけでなく、会場中が驚きました。アンナさんの姿がリング上から忽然と消えたのです。タカさんがいち早くなにかを察します。

「なるほどな……」

「はっ!」

「がはっ!」

 アンナさんが残っていた小瓶から勢いよく飛び出し、ルッカさんの鳩尾に拳を入れます。思わぬ攻撃を喰らったルッカさんは力なく倒れ込みまず。

「ルッカ、敗北! 2ポイント! よって、アンナ、勝利! 3ポイント」

「ちゅ、中堅戦は衝撃の決着! 勝者はチーム『赤点』のアンナだ! タ、タカさん、どうでしたでしょうか?」

「まさか自らを封印するとはな……知識だけに囚われない柔軟な思考……正直恐れ入った」

 タカさんが心底感心したように呟きます。

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