六芒星、かごめ歌の謎

坂崎文明

かごめかごめ

「この模様はなんだろう?」

僕は隣の席の同級生の風守カオルに、自分の手の甲に浮かび上がった模様を見せながら訊いてみた。

「それ、六芒星ろくぼうせいというやつじゃないかな」

学校の制服があるにも関わらず、黒いジャージの上下に白いスニーカー姿の幼馴染はいつも周囲から浮いていて、僕ぐらいしか話し相手がいなかった。
中学二年生のクラスのみんなは、もう夏服で半袖ばかりなのに暑くないのかと思うのだが、本人は汗ひとつかいていない。
黒い大きな瞳が印象的で、短く切り揃えた黒髪、小柄でネコ科の動物のような俊敏な動きができて、いつも体育は五段階評価で最高の『5』をもらっていた。

「ふーん、六芒星か。かごめ紋とも言うよね?」

「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀がすべった 後ろの正面だあれ?」

カオルは高い声で歌うように言った。

「そんな歌もあったな。どういう意味なんだろう?」

「いろいろと説があるけど、こっくりさんみたいな交霊術じゃないかなと思う。たぶん、陰陽師系の何か」

カオルはいつも意外なことをいう。

「そうなんだ。面白ろそうじゃん。それじゃあ、今度、やってみようか」

僕は俄然、興味が湧いてきて、思わず身を乗り出していた。

「いや、やめた方がいいよ。きっと後悔する」

カオルはきっぱりと断言した。

「でも、さあ、面白そうだからやろうよ」

駄々をねてみたが、幼馴染には無駄なのはわかっていた。

「カオルちゃん、また、夜見よみ君と話してるの? やめた方がいいよ」

その時、クラスの女子のひとりの美沙都みさとが話しかけてきた。
彼氏がいないひがみかな。
まったく、女子の嫉妬とは困ったものだな。

「大丈夫、美沙都みさと。先に帰ってて」

カオルは振り返ってクラスの女友達三人に手を振ると、僕の方に向き直った。

「じゃ、私もそろそろ帰るわ。夜見君、また、明日!」

「また、明日! 僕も帰るよ」

その日はそれで話は終わった。
翌日、僕は奇妙な現象に遭遇することになるのだが。

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