心的外傷と回復、心理療法としての創作について

坂崎文明

第11話 「べてるの家」の話、心の病を治さない治療

武田鉄矢『精神障害は治そうとするな』その真意
https://youtu.be/E2Aw28mOrVc

社会福祉法人浦河べてるの家
http://www.urakawa-bethel.or.jp/

べてるの家
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%82%8B%E3%81%AE%E5%AE%B6

べてるねっと
http://bethel-net.jp/


「治りませんように――べてるの家のいま」 単行本 2010/2/18 斉藤 道雄  (著) みすず書房





武田鉄矢のラジオの話の続きですが、「べてるの家」での抗精神薬の服用のエピソードがあります。
清水さんという患者さんがいて、「べてるの家」に来て順調だったのですが、これで社会復帰できると思い始めた瞬間、調子が悪くなったそうです。
これで病気が治ると思った時に、以前の病気が前にも増した勢いで引き戻しに来たそうです。

そこで日赤の精神科で診察した結果、「エブリファイ」(物事がはっきり見える。精神の緊張)が強過ぎて、「リスパダール」(意識がまどろむ。精神の弛緩。体重増加などの副作用がある)の服用に変えたらしいです。

清水さんの疑問として「健康な人って、いつもリスパダール飲んでるもんなんだろうか?」というものがあります。

清水さんの病に人と話してる時に緊張し過ぎという症状があって、そこからの感想なんだろうけど、世の中に体重増加して糖尿病の患者が溢れてるのはそういうことなのかなと武田鉄矢が語ります。

これ結構、当っていて、抗精神薬は神経伝達物質(脳内麻薬物質)を直接、操作してしまう薬物なので、僕が頚椎症で飲んでる「リリカ」も神経のレセプター(受容体)で働いて、痺れなどを弱める作用があるんだけど、眠くなるので自動車の運転はしてはいけない(なので、寝る前に飲む)、体重増加とか、目がかすむなどの副作用がある。

これは仕方ないというか、効く薬には強い副作用があるし、体調を見て薬の量を処方するのが医師の仕事である。
が、高血圧で薬飲んで、低血圧になってしまうこともあるので、患者の方も体調見て薬のみ過ぎないようにしたいですね。

僕の退職した後輩の糖尿病で透析患者のH君が、実は高血圧と低血圧を繰り返してるんですが、馬鹿なので薬飲みすぎることがあって、ちょっと心配ですね。
以前、睡眠薬の飲みすぎで、車をセンターラインオーバーさせて、転倒させた前科があります。
自分のミスでも医者のせいにしてしまうので困ったものです。
彼の仕事のミスは全部、僕のミスにされてました(泣)


エブリファイ
http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=42882

リスパダール
http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=3083

リリカ
http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=43888



そんな「べてるの家」で殺人事件が起きてしまう。
だけど、マスコミなどの批判の喧騒の中で現場は静かであり、こういう光景があったそうです。

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こんなに順調に行っていた「べてるの家」で、大事件が起きてしまった。「2004年5月7日午前2時20分ころ、統合失調症で浦河赤十字病院に入院していた武内裕人(28歳)さんが、病室で寝ていたところを知り合いの患者に襲わされ、刃渡り15センチの包丁で何か所も刺される出来事があった。懸命の治療にもかかわらず、発見から3時間後、」医師団は武内さんの死亡を宣告しなければならなかった」(「治りませんように」【青年の死】82ページ(著 斉藤道雄)みすず書房 記事引用)

(中略)

この事件後の「納棺式には、異例なこととして加害者と被害者の家族がともに参列していた。それが出来たのは加害者も被害者もべてるの家のメンバーだったからということもあったが、やはり武内裕人(28歳)さんが父親、武内東光さんの存在が欠かせなかった。武内さんはこの事件の本質を理解し、納棺式に加害者の両親を受け入れただけではなく、丁重な気遣いすらみせていたのです。

関東地方の病院の小児科である武内東光さんは、十八歳ころに発病した息子、裕人さんの統合失調症と、十年の長きにわたりつきあっています。さまざまな経緯を経て『最期のよりどころ』として浦河日赤を訪ね、裕人さんを入院させて四年がたっていた。この病気が家族にもたらす苦労を身をもって知り、悲劇のさなかにありながら加害者もまた息子とおなじ病気であり、その親も自分とおなじ苦労してきたと考えています。」(「治りませんように」【べてるの葬儀】92ページ(著 斉藤道雄)みすず書房 記事引用)

この事件の被害者と加害者が、葬儀に同席し、痛みを共有している光景は、以前、このブログに書いた「アメリカのアミッシュの方々」とおなじものを読んだ。

「参列者に感謝の気持ちを伝えた東光さんは、涙でとぎれながらさらに『二つ、お願いがあります』と述べています。
ひとつは、息子の裕人さんが浦河にきてから、はっきり変わってきたこと、その変化をもたらした『川村先生や病院、べてるの地域の方々』に、『こういうすばらしさ』がぜひつづくようにしていただきたいということだった。
もうひとつは、加害者となった患者への応援です。加害者もまた長く病気で悩んできたにちがいない、その患者が立ち直れるように、どうかみんなで助けてやって欲しいという訴えだった。参列者はだれでもがその二つの願いを、もっともな、そして誠実な願いとして受けとめたことだろう。ことばの奥深くにこめられた和解への思い、厳粛な思いで受けとめたかもしれない。」(「治りませんように」【べてるの葬儀】99ページ(著 斉藤道雄)みすず書房 記事引用)


この衝撃的な事件は、泥沼のなかに一輪の蓮の花が咲いたような感動を覚えた。


「治りませんように」(著 斉藤道雄)の驚愕の事実②!より
https://ameblo.jp/jesusloveme/entry-10572735179.html
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ある日、七夕のお祭りの時、短冊に患者が「病気があって幸せ。どうか治りませんように」という願い事を書いたそうです。
これがこの本のタイトルになるんですが、医者は治すのに必死なのに、患者の希望は治さないで欲しいというものだった。

これは衝撃的な出来事なのですが、何故か、患者が再発して戻ってくる現象を見て、日赤の名医、川村医師は「実は病気を治そうという行為そのものが患者に緊張を与えて病気が再発するんじゃないのか?」と考え始めます。
そして「患者を治さない治療」を決心します。

同じような病態の患者と同じような素質を持ったスタッフを一緒に生活させると、劇的な回復がみられるという精神医療の成功例をみて、そういう場所を「べてるの家」に実現していこうとします。

僕も病気で会社を休んでゆっくりしてる時が幸せだったりしたり、いつまでも家でゴロゴロしてるのが心地よい時があります。
なんですが、退屈になったりしはじめると、また働きたくなります。

僕の退職した後輩のH君ですが、糖尿病で透析になって退職しましたが、今、障害者年金+失業保険もらっていて生き生きとして遊んでいます。
一日おきの透析はつらいとは思いますが、もう家が裕福だったりするので働かなくていい口実もあるので、今が一番、幸せかもしれません。
病気は治らない方が幸せかもしれませんね。



【武田鉄矢】自●から救う唯一の方法 ※8割の人がこれで救われた※
https://youtu.be/Uav5V8CriPE


次回はこの話をしようかなと思います。



気分が出ない憂うつというくらいが私たちにとって最適な状態なので、夜も眠らずにバリバリという状態こそ、躁的で病的なのです。斎藤学 「斎藤学ネットグループカウンセリング」より
https://twitter.com/iff_co_jp/status/969237078285328384


2018/03/06 19:00
https://ncode.syosetu.com/n3020ep/11/

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