元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
仮面の男たちと計画
通路の奥。 身を隠しながら、トールは先を覗き込む。
その先には男が2人いる。
黒いマントに付いたフードを頭まで被り、顔を隠している。
(こんな所で顔を隠すとは、随分と慎重だな。しかし、何者だ? いっそのこと話しかけてみるか?)
しかし、トールはその選択をしなかった。
なぜなら、フードの隙間から顔を隠す仮面が見えたからだ。
(誰も知らないはずの地下路に仮面の男が2人……怪し過ぎて笑えてくる。接触するべきではないか。しかし――――)
トールは疑問に思った。彼が使っている言葉は人界で使われる統一言語ではない。
「どこの国の者だ? 2人とも心当たりは?」とトールは声の音量を下げて後ろの2人に訪ねる。
「ないない。今時、独立言語なんて使わないわよ」とグリア。
「そうだよな……」と同意するトールであったが、「あの……」とレナが小さく手を上げていた。
「私、少しだけならわかります」
「本当か? なんて言っているか教えてくれ。わかる箇所だけでもいいから」
「はい……これは少し訛りが強いのですが、シユウ国の古代言語ですね」
レナは男たちの言葉を拙いながも訳し始めた。
「地震……魔法? 攻撃……どうやら先ほどトールさまが放った魔法は、外部からの攻撃ではないか? そう話してます。凄く警戒していて、逃げる相談ですね」
「少し不味かったか。手加減はしたつもりだったが……」
じーとグリアが抗議の視線を送ってくる。
「だから、止めたじゃない」と視線だけの意思疎通。
「うん、悪かった」と素直に謝罪するトール。
「待ってくださいトールさま。 今、あの2人は王子を誘拐する計画を話してます」
「――――っ!?」とこれにはトールも驚く。
「アイツ等、テロリストの部類か?」
「おそらく……あっ! もう、この場から離れて行きます。どうします? 追いますか?」
「……いや、本物のテロリストで王族の誘拐計画を立てているなら、他に仲間がいるはず。グリアとレナは戻って信頼できる者で警戒を強化してくれ」
「はい! それでトールさまは?」
「俺は――――行く!」
『空中歩行』
空中に浮遊した肉体。 そのまま仮面の男たちが向かった先へ飛ぶ。
狭い通路。暗闇の死角。 それら悪条件を前に速度を緩める事はない。しかし――――
(この速度で追いつけない? どこか抜け道があったのか?)
いつまでたっても先行した2人の影は見当たらない。
やがて、高速飛行するトールの前方に壁が見えた。
この速度領域に達すれば急停止は不可能。 吸い込まれるように壁に接近していき――――衝突した。
衝撃が地下路全体を揺らす。 そして、壁と衝突したトール本人は、
「う~ん、少しでも受身が遅れていたら怪我をする所だった。剣呑、剣呑」
そう言いながら衝突した壁に手をやる。
「壁にヒビは入ったけど、別に隠し部屋とか、向こう側に空間が広がっているわけでもないのか……アイツ等、どこに消えた?」
今度は、スピードを緩めて来た方向を戻っていく。
しかし、仮面のと男たちの痕跡は発見できなかった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
地下路から出ると日は落ちて暗くなっていた。
最も、暗さには地下路の闇で慣れていた。
――――だから、わかる。
「出て来いよ」
トールの言葉に反応して男が出現する。
(仮面の男……なぜ、わざわざ姿を再び見せた? 地下路で隠れていればいいものを?)
そんな違和感。 しかし、仮面の男から伝わってくるものがあった。
(――――これは殺意? 馬鹿な……ここで殺《や》るつもりなのか?)
先に地下路を出たグリアやレナの気配はない。 おそらく、警備の強化を指示している。 だから、すぐに大勢の人がここにくるはず。ならば――――
(ならば……証拠隠滅が目的? だとしたら――――罠があるのか!)
仮面の男は、手に何かを持っている。
当然、トールにはそれが何かわからない。
しかし、直感――――加えて、強い殺気から推測するに、
「爆弾か! 地下路ごと証拠を――――」
トールは最後まで言えなかった。 なぜなら、空気が燃焼する爆風の中では声の震動は伝わらないから……
モクモクと音を出して舞い上がる黒い煙。
焦げ臭い異臭。それと共にばら撒かれた赤い炎の塊。
爆発の衝撃で周囲の建物にも影響が出て、砕かれたガラスが地面に落下して割れている。
そんな中、影が1つ残っている。
それは仮面の男だ。
仮面で顔を隠しても表情はわかる。 目前の男が爆死して――――嬉しい、楽しいだ。
しかし――――
「やれやれ、俺は炎系を得意とする魔導士のつもりだったのだが……一瞬の出来事に爆風や延焼を無効化できなかったぜ」
トールは、焦げた制服を気にした様子で普通に歩いていた。
それも仮面の男の背後を平然と――――
「貴様、あの爆破でどうやって! えぇい何者だ!?」
「何者って、顔を隠してる奴に言われてもなぁ。訪ねるなら自分の事を名乗れよ」
「くそっ!」と短剣を取り出す仮面の男。 明らかに禍々しい暗殺用短剣。
「貴様が何者かは知らぬ。しかし、我らの姿を見たからには死んでもらう」
「呪詛を込めたナイフか。いや、剣のやり取りで俺に勝てると思っているなら――――当てが外れたな」
「何をわけのわからぬ事を――――」
仮面の男は最後まで言えなかった。
トールが手にした平凡な剣によって、暗殺用短剣の刃は斬鉄。
地面に叩き落された。しかし、仮面の男は、それを最後まで見届ける事はなかった。
「安心しろ。命までは取らない……峰打ちってやつだ」
一体、いつの間にトールの斬撃を受けていたのか?
すでに仮面の男は意識を失っていた。
その先には男が2人いる。
黒いマントに付いたフードを頭まで被り、顔を隠している。
(こんな所で顔を隠すとは、随分と慎重だな。しかし、何者だ? いっそのこと話しかけてみるか?)
しかし、トールはその選択をしなかった。
なぜなら、フードの隙間から顔を隠す仮面が見えたからだ。
(誰も知らないはずの地下路に仮面の男が2人……怪し過ぎて笑えてくる。接触するべきではないか。しかし――――)
トールは疑問に思った。彼が使っている言葉は人界で使われる統一言語ではない。
「どこの国の者だ? 2人とも心当たりは?」とトールは声の音量を下げて後ろの2人に訪ねる。
「ないない。今時、独立言語なんて使わないわよ」とグリア。
「そうだよな……」と同意するトールであったが、「あの……」とレナが小さく手を上げていた。
「私、少しだけならわかります」
「本当か? なんて言っているか教えてくれ。わかる箇所だけでもいいから」
「はい……これは少し訛りが強いのですが、シユウ国の古代言語ですね」
レナは男たちの言葉を拙いながも訳し始めた。
「地震……魔法? 攻撃……どうやら先ほどトールさまが放った魔法は、外部からの攻撃ではないか? そう話してます。凄く警戒していて、逃げる相談ですね」
「少し不味かったか。手加減はしたつもりだったが……」
じーとグリアが抗議の視線を送ってくる。
「だから、止めたじゃない」と視線だけの意思疎通。
「うん、悪かった」と素直に謝罪するトール。
「待ってくださいトールさま。 今、あの2人は王子を誘拐する計画を話してます」
「――――っ!?」とこれにはトールも驚く。
「アイツ等、テロリストの部類か?」
「おそらく……あっ! もう、この場から離れて行きます。どうします? 追いますか?」
「……いや、本物のテロリストで王族の誘拐計画を立てているなら、他に仲間がいるはず。グリアとレナは戻って信頼できる者で警戒を強化してくれ」
「はい! それでトールさまは?」
「俺は――――行く!」
『空中歩行』
空中に浮遊した肉体。 そのまま仮面の男たちが向かった先へ飛ぶ。
狭い通路。暗闇の死角。 それら悪条件を前に速度を緩める事はない。しかし――――
(この速度で追いつけない? どこか抜け道があったのか?)
いつまでたっても先行した2人の影は見当たらない。
やがて、高速飛行するトールの前方に壁が見えた。
この速度領域に達すれば急停止は不可能。 吸い込まれるように壁に接近していき――――衝突した。
衝撃が地下路全体を揺らす。 そして、壁と衝突したトール本人は、
「う~ん、少しでも受身が遅れていたら怪我をする所だった。剣呑、剣呑」
そう言いながら衝突した壁に手をやる。
「壁にヒビは入ったけど、別に隠し部屋とか、向こう側に空間が広がっているわけでもないのか……アイツ等、どこに消えた?」
今度は、スピードを緩めて来た方向を戻っていく。
しかし、仮面のと男たちの痕跡は発見できなかった。
・・・
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地下路から出ると日は落ちて暗くなっていた。
最も、暗さには地下路の闇で慣れていた。
――――だから、わかる。
「出て来いよ」
トールの言葉に反応して男が出現する。
(仮面の男……なぜ、わざわざ姿を再び見せた? 地下路で隠れていればいいものを?)
そんな違和感。 しかし、仮面の男から伝わってくるものがあった。
(――――これは殺意? 馬鹿な……ここで殺《や》るつもりなのか?)
先に地下路を出たグリアやレナの気配はない。 おそらく、警備の強化を指示している。 だから、すぐに大勢の人がここにくるはず。ならば――――
(ならば……証拠隠滅が目的? だとしたら――――罠があるのか!)
仮面の男は、手に何かを持っている。
当然、トールにはそれが何かわからない。
しかし、直感――――加えて、強い殺気から推測するに、
「爆弾か! 地下路ごと証拠を――――」
トールは最後まで言えなかった。 なぜなら、空気が燃焼する爆風の中では声の震動は伝わらないから……
モクモクと音を出して舞い上がる黒い煙。
焦げ臭い異臭。それと共にばら撒かれた赤い炎の塊。
爆発の衝撃で周囲の建物にも影響が出て、砕かれたガラスが地面に落下して割れている。
そんな中、影が1つ残っている。
それは仮面の男だ。
仮面で顔を隠しても表情はわかる。 目前の男が爆死して――――嬉しい、楽しいだ。
しかし――――
「やれやれ、俺は炎系を得意とする魔導士のつもりだったのだが……一瞬の出来事に爆風や延焼を無効化できなかったぜ」
トールは、焦げた制服を気にした様子で普通に歩いていた。
それも仮面の男の背後を平然と――――
「貴様、あの爆破でどうやって! えぇい何者だ!?」
「何者って、顔を隠してる奴に言われてもなぁ。訪ねるなら自分の事を名乗れよ」
「くそっ!」と短剣を取り出す仮面の男。 明らかに禍々しい暗殺用短剣。
「貴様が何者かは知らぬ。しかし、我らの姿を見たからには死んでもらう」
「呪詛を込めたナイフか。いや、剣のやり取りで俺に勝てると思っているなら――――当てが外れたな」
「何をわけのわからぬ事を――――」
仮面の男は最後まで言えなかった。
トールが手にした平凡な剣によって、暗殺用短剣の刃は斬鉄。
地面に叩き落された。しかし、仮面の男は、それを最後まで見届ける事はなかった。
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