元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

チョーカー

2つの魔剣が交差した

 かつて勇者というのは子供たちの憧れだった。

 ――――いや、子供たちだけではないだろう。 老いも若きも、憧憬の視線を送る世界の救世主だ。

 それに対して魔王は……

 『厄災が来りて――――』と始まるほどに人々からの恐れを有していた。

 冷酷かつ残虐。 

 力。

 抽象的な力ではなく、物理的であり、世界に恐怖へ叩き落す。

 膨大な魔力。 

 突き抜けた理合から繰り出される不可思議な剣技。

 何より魔王が恐れられていた理由は――――知の超人。

 万を超える魔導書と兵法書をただ諳んじるだけではなく、それぞれに注釈を加えるほどに精通している。

 その凶悪なる力が人類に向けられるのだ。

 だが、いる。 人間でありながらも魔王への信奉者。 

 心に闇を宿した者は――――いる。

 力を有した者であれば、あるほど狂愛に落ちていくのだ。

 魔王崇拝者……口に出してみれば納得する。私は魔王崇拝者だ。

 あぁ、きっと私は、俺は魔王に成りたかったのだ。 だから今回の計画を立てた。

 『マクマの狂乱事件後、ブロック・マクマ・マディソンの自室から発見された私記より、一部抜粋』

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・・・・・・

・・・・・・・・・

「――――なんだお前は?」

 マクマは口にして気づく。自身の声に含まれている僅かな震え。

(この俺が恐れている? 馬鹿な! ……いや、違う)

 マクマは、事実に到達しない。 とある可能性が頭から抜け落ちいるのだ。

 この場に現れた男 トール・ソリットを恐れているのは、誰か?

 マクマが吸収した勇者クロス? それとも……

火矢ファイアアロー

 魔法により具現化させた炎を矢として発射する攻撃。

 初級魔法に分類される基礎的魔法はトールが使用する事で――――

 紅い閃光がマクマに発射された。

「――――っ! 盾《シールド》よ」

 マクマが具現化させた魔法の盾。 魔王の魔力により不可侵の盾……そのはずだ。

 トールが放った閃光は、マクマの後ろまで軌道に赤い線が残った。

「馬鹿な! 俺の盾を貫いただと!?」

「うん、直撃は防がれたか。シルグ戦の疲労が残っているかな?」

「ふ、ふざけるなよ! 人間風情が! この俺を――――」

「いや、その人間風情に負けるんだよ、アンタは?」

「――――」とマクマは絶句する。 本心だ。トールは本心で勝つつもりなのだ。

 魔王と勇者を取り込んだ、この自分に!

「いつだって、いつの世もそうだ。どんな魔王も、どんな勇者も、死ぬ時は平凡な人間の悪意と狂気に飲まれると相場は決まっているだろ?」

「黙れ!凡俗めっ! だから、俺は悪意と狂気を持って2人を倒して飲み込んで見せたのだ」

「――――くすっ……あっははははははは……」

「な、何がおかしい」

「あっははは……いやいや、すまない。アンタ、本当に狂った事がないんだなって思っただけだ」

「――――貴様は、なんだ? 化け物か?」

「いや、ただの狂人だよ? 暗い地下の牢で10年の鍛錬。それは狂気を帯び――――やがて切れ味を有す 風の聖剣エクスカリバー

「斬撃魔法だ!? そんなものは俺に効かぬよ!」

 マクマは虚空から抜刀するように抜いたのは魔剣。

 かつて魔王の愛刀として、幾千の戦場で血を啜ってきたソレは、容易に魔法を切り払う。

 だが――――トールは魔法と同時に前進を開始。

「魔法を目くらましに前に出るか? こんな古典的な技術が通じると思ってか!」

「さて、まだ試し斬りもやってないのでな」

「小癪な事を言うな!」

「さぁ――――一緒に行こうぜ。 魔剣シルグ!」

 マクマの魔剣。

 トールの魔剣。

 2つの魔剣が交差した。
     
 

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