元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
決着は――――近い
「なぁ……剣とはこのような物か?」
シルグの体から殺気という物が抜け落ちていく。
いや、殺気だけではなく、およそ戦うために必要な物――――闘気と言えばいいだろうか? とにかく、そう言った物が喪失する。
剣先を避け、構えを解く。
ただ立っているだけのシルグ。 だから、それにつられてトールの闘争心も――――
「って危ない! 不意打ち!?」とトールは叫んだ。
シルグが下げた剣先が跳ね上げられたのだ。
狙われたのはトールの末端。 つまり、剣を持つ手。
小技とも言える技だが、防御は難しい。しかし――――
「……卑怯くさい事をする」とトールは避けた。
「いや、このくらいで怪我をする力量でもあるまい」
「へっ」とトールは短く笑うと、「まぁね」と答える。
「それじゃ、何のつもりだ? 通じないとわかっていた奇襲攻撃の意味は?」
「まぁ、一瞬でもお主の顔が焦っているを見れただけで報酬としては、十分だが……」とシルグは、少し考える仕草。それから、
「卑怯とか言うなら、お主が先ほど見せた脛斬りも流派によっては外道の技とされるのでは?」
「むっ!」とトールを思わぬ言葉に言い淀んだ。
「いや、いい。お主にも言い分があるだろうが……そうではない。そうではないんだよなぁ……」
再び、シルグの肉体から闘志という物が抜け落ちていく。
今度は奇襲攻撃――――トールとて二度目は許さない。
しかし、その気配が、攻撃する意思が完全に途絶えている。 本当に戦う心が停止しているのだ。
なぜ?
「剣術。それは、別れやすいほどの一撃必殺。だからこそ技が曇る」
「雲る? 一体、なんのことだ?」
「相手の心を読み、卑怯とも言える技を繰り出す」
「それは、そうだろ? 負ければ死ぬ単純な世界だ。生き残りたければ、意表を突く――――そもそも、技ってそういう物だろ?」
「そうだ……その通りだ。しかし――――ワシも、お主も子供の頃に憧れた剣の道。果たして、そういうものだったか?」
「――――」とトールは無言で返す。 そもそもシルグの言いたい事が理解できない。
「……わからぬか。相手を技で騙す……そして殺す。違う! それは違う! もっと……こう……」
それからシルグは言葉を止めて、天を仰いだ。
「うむ、口が滑ったか。ワシもまだ若いなぁ」
「いや、理解はできないが……やりたい事はこういう事だろ?」
トールは構えて、剣を走らせる。 その剣は剛のもの――――
號――――と豪快な音が空気を揺らす。
「ほう、初めて見る流派だ。 それはお主がいうソリット流の?」
「あぁ、だがソリット流をいうのは正確じゃない。本筋は冒険者剣術の技」
「冒険者剣術? 初めて聞く流派だな」
「あぁ流派と言うより、自然と生まれた巨大な魔物を倒すために編み出された技術って言う方が近いかな?」
「これを、こうして――――相手にぶつければいいのだな」
トールとシルグ……
最初に交わった剛剣の打ち合い――――それとは明らかに種類が違う打ち合い。
大地が――――
世界が――――
星が――――
悲鳴をあげる。
人が、剣が、ここまで成し得るのか?
人と人が戦うという動作が、ここまで世界に影響を与えるのだろうか?
そして、神話の戦いにも等しいぶつかり合いを人は見る。
戦いとは、戦闘とは、闘争とは……それとは真逆に感じる穏やかな戦い。
それは―――― それは―――― それは――――
決着が近い。
シルグの体から殺気という物が抜け落ちていく。
いや、殺気だけではなく、およそ戦うために必要な物――――闘気と言えばいいだろうか? とにかく、そう言った物が喪失する。
剣先を避け、構えを解く。
ただ立っているだけのシルグ。 だから、それにつられてトールの闘争心も――――
「って危ない! 不意打ち!?」とトールは叫んだ。
シルグが下げた剣先が跳ね上げられたのだ。
狙われたのはトールの末端。 つまり、剣を持つ手。
小技とも言える技だが、防御は難しい。しかし――――
「……卑怯くさい事をする」とトールは避けた。
「いや、このくらいで怪我をする力量でもあるまい」
「へっ」とトールは短く笑うと、「まぁね」と答える。
「それじゃ、何のつもりだ? 通じないとわかっていた奇襲攻撃の意味は?」
「まぁ、一瞬でもお主の顔が焦っているを見れただけで報酬としては、十分だが……」とシルグは、少し考える仕草。それから、
「卑怯とか言うなら、お主が先ほど見せた脛斬りも流派によっては外道の技とされるのでは?」
「むっ!」とトールを思わぬ言葉に言い淀んだ。
「いや、いい。お主にも言い分があるだろうが……そうではない。そうではないんだよなぁ……」
再び、シルグの肉体から闘志という物が抜け落ちていく。
今度は奇襲攻撃――――トールとて二度目は許さない。
しかし、その気配が、攻撃する意思が完全に途絶えている。 本当に戦う心が停止しているのだ。
なぜ?
「剣術。それは、別れやすいほどの一撃必殺。だからこそ技が曇る」
「雲る? 一体、なんのことだ?」
「相手の心を読み、卑怯とも言える技を繰り出す」
「それは、そうだろ? 負ければ死ぬ単純な世界だ。生き残りたければ、意表を突く――――そもそも、技ってそういう物だろ?」
「そうだ……その通りだ。しかし――――ワシも、お主も子供の頃に憧れた剣の道。果たして、そういうものだったか?」
「――――」とトールは無言で返す。 そもそもシルグの言いたい事が理解できない。
「……わからぬか。相手を技で騙す……そして殺す。違う! それは違う! もっと……こう……」
それからシルグは言葉を止めて、天を仰いだ。
「うむ、口が滑ったか。ワシもまだ若いなぁ」
「いや、理解はできないが……やりたい事はこういう事だろ?」
トールは構えて、剣を走らせる。 その剣は剛のもの――――
號――――と豪快な音が空気を揺らす。
「ほう、初めて見る流派だ。 それはお主がいうソリット流の?」
「あぁ、だがソリット流をいうのは正確じゃない。本筋は冒険者剣術の技」
「冒険者剣術? 初めて聞く流派だな」
「あぁ流派と言うより、自然と生まれた巨大な魔物を倒すために編み出された技術って言う方が近いかな?」
「これを、こうして――――相手にぶつければいいのだな」
トールとシルグ……
最初に交わった剛剣の打ち合い――――それとは明らかに種類が違う打ち合い。
大地が――――
世界が――――
星が――――
悲鳴をあげる。
人が、剣が、ここまで成し得るのか?
人と人が戦うという動作が、ここまで世界に影響を与えるのだろうか?
そして、神話の戦いにも等しいぶつかり合いを人は見る。
戦いとは、戦闘とは、闘争とは……それとは真逆に感じる穏やかな戦い。
それは―――― それは―――― それは――――
決着が近い。
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