元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

チョーカー

破壊 そして到着する第一回戦


 破壊。

 トールとシルグの戦いが星を傷つける環境破壊型の闘争だとしたらもう1つ……

 同時多発的に別の場所で起きた闘争。

 メタスと勇者の戦いもまた……環境破壊型の闘争と言える。

 かつて、そこには森があったはずだ。 少なくとも2人が戦い始める前には確かに森があったのだ……

 今は、平地。 いや、辛うじて残っている草木は根本から腐り落ちている。

 それほどの戦闘が繰り広げられていた……いや、今も現在進行形で繰り広げられている最中だ。

 「流石、勇者クロス……私の体に混沌カオスと刻まれた666の獣。 ついに残り100まで開くなんて――――解放! 第六百一門」

 メタスが召喚した魔物。 第601匹目の魔物は蜥蜴人間リザードマン

 しかし、明らかに通常の蜥蜴人間とは違う。

「竜の因子を取り入れている蜥蜴人間。 ……なるほど」と剣を走らせた。

 蜥蜴人間は持っていた剣でクロスの攻撃を防御した。

 今までの長き戦闘。疲労もあるだろうが……

「俺の剣を防ぐか魔物……いや、絡繰からくりはわかってきた」 

 この日、初めて一撃で切り倒す事が出来なかったクロスは、攻撃方法に変化を起こす。

 剣捌きは、まさに連撃。 連続で振られるクロスの剣に、蜥蜴人間は防戦。

 その一瞬の隙にクロスは剣を捨てて蜥蜴人間に掴みかかり――――

 投げ一線。
  
 頭から地面に叩きつけられた蜥蜴人間は、それでも反撃に――――

 しかし、再び剣を手に取ったクロスは、地面を貫くように蜥蜴人間の体を貫いて見せた。

「見事です……」とメタス。 しかし、絶賛の裏で勝利を確信していた。

(凄まじい。これが勇者と言われた男……どんどんとCOMBOコンボが成立していく。 なら、開けるかもしれない神々への扉を……)

 だが、「理解が遅れた。しかし、わかってきたぞ」とクロスの言葉に現実へ引き戻された。

「最初はゴブリン、次はスライム……ただ、弱い順番に強い魔物を召喚してる……だけではない」

「えぇ、その通りです。見抜きましたか?」

「死した魔物が消滅するさい僅かに生じる極小のエネルギー。 明らかに魔力とは違う謎の力であるが……それを利用している。順序良く法則を守り……強き魔物を召喚するのに魔力を使用しない召喚術」

 その考察は正しい。 初めて完璧に見破られて、メタスの内心は―――

(流石、勇者クロス!)

 何度行っただろうか? 称賛の数を更新させた。しかし――――

「最後には何を生み出す? 竜種まで届くのか?」とメタスの言葉。

「あぁ、少し落胆。 いかに勇者でも想像力は、人の領域から逸脱していませんか?」

「……」と探る様な視線のクロス。

「でも、次に召喚するのは竜種です。そこは正解おめとうございます――――開門 第六百二問」

 メタスの言う通り、召喚されたのは竜種。 白き美しき竜。

 北の地に生息すると言われる伝説の竜種――――名前は白龍。

 それを見た勇者クロスの感想。 何度となく白龍を相手に戦った経験のある彼ではあるが……

「馬鹿な!? このような存在が、このような魔が存在するはずはない」


 勇者クロスは驚愕した。 この日、初めて冷静な表情を崩させるほどの衝撃。

 その正体は―――― 

 白龍の首は――――その首は3つに別れていた。 いや、奇妙な変化は首だけにすまない。

 それは通常の白龍にはあり得ない異端性。

 3つの首。 尾も3つに分かれている。そして、背中には巨大な、それはもう……巨大な翼が生えていた。


「なんだメタス!? これは何だと言う! 貴様は神の領域に――――いや、神を冒涜するつもりか!」

「あぁ勇者クロス。私は、貴方の歪んだ表情が、その表情が見たかったのかもしれません。 やりなさい白龍……『息吹ブレス』」

 三つ首の白龍。その顎が同時に開かれる。

 そして、やはり放たれるのは竜種究極の攻撃――――『息吹』

 白い閃光が勇者クロスに浴びせされ、世界を白く塗りつぶした。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・   

「なんだ! なんだ今の白い光は? 先ほどまで我々がいた場所の近くではないか!」

「どうされます? すぐに帰り、何が起きたのか? 確認でもしますかマクマ王?」

「ほざけルキウス! ここまで来て今さら戻れるか!」

「ふふふっ……これだから男どもは、いやねぇ体だけが大きくなっても心は子供の部分を持ち続けていて……可愛いわね!」

「えぇい! 貴様らいい加減にせんか! 早くトールとシルグを止めるなり、何とかせねば――――」

「コウ王、老体に鞭を打っている所に申し訳ありませんが――――止めれますかね?」とルキウス王は微笑を見せる。

「なに!? 老体は余計じゃ!」

「トール対シルグ。一度、始まった戦いを止めれるとしたら互いの意思によるものか……彼等よりも強き存在のみ……ですよ?」  

「……じゃ、止めるべきは止める。それができなくて何が王じゃ!」

「――――その覚悟。王としての矜持は尊敬いたします」

「ワシを試すような真似を――――いや、今はそれどころではない不問! しかし……見えたぞ!」


 ついに4人の王は到着した。 スックラ領争奪戦 第一回戦の舞台へ――――

 町だったはず。 しかし、周辺から人の気配と言うものは抜け落ちている。

 それを見た王たちの第一印象は、

(死者は……いないはず)  

 と言うありさまだった。

 そして、そこに2人がいた。 

 対峙するトールとシルグの姿を肉眼で捉える場所に到着したのだった。
   

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