元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
トール対シルグ ソリット二天一刀流
金属と金属が叩きつけられる音が周囲に鳴り響いて行く。
一合、二合、三合と両者の剣はぶつかり合う。
それは斬撃というよりも、あまりにも――――
鈍器の打撃の等しい荒々しい競い合い。
シンプルな競い合い。 しかし、徐々に速度と威力が跳ね上がっていく。
大地は揺さぶられ、割れた亀裂が走り抜ける。
おぉ……見よ! 空は切り裂かれた雲が浮遊している。
環境破壊闘術。
人は戦う事で星をここまで痛めつけ、破壊する事ができるのだ。
そんな戦いの中で悲鳴が上がる。 ただし……それは人間のものではない。
それは剣である。 トールが有する剣は、ごく平凡な物。
シルグの魔剣との打ち合い、斬り合いで耐えれたのは、トールが持つ技術。
皆、知っての通りではあるが、ソリット流剣術は衝撃を無効化する技が存在している。
高速、正確に……かつ大量に繰り返される。剣を引くというシンプルな動作により剣に伝わる衝撃は分散され、やがて無となる。
そんなトールの妙技を持ってすら、剣は限界を向かえた。
「せいやっ! このチェストをぉぉぉぉぉぉぉ!!」
シルグから放たれたのは裂帛の気合と共に剛剣の一撃。
鍛えられたとは言え、ただの金属である剣は、それに抵抗する事も叶わず――――
あっけなく叩き割られた。
「――――」
「これが正常な試合なら、この時点で拙者の勝ちは動かぬ。――――どうする?」
「それを聞くのか? 魔に飲まれて、それでも人を捨てないのならば、俺もここで引くわけにはいかない」
「だが、できるか?」
「できる……か? とは?」
「拙者に勝つ。それは魔法による攻撃であってはならぬ。 肉体による打撃であってはならぬ」
「あぁ、なるほど……アンタは、もうそう言う存在になっちまったのか……いや、言い直そう。そういう存在にまで到達したのか……」
ここは魔があり、神秘かある世界。 ならば、時折は起きる。
『概念』で人間を完成させる。
例えば、ゴースト系の魔物は斬撃が効かない。魔法の効果も薄い。
効果的なのは聖職者の破邪系の魔法。 ……それと同じことなのだ。
「剣で到達した者を倒すには剣でなくてはならない。そう世界の理が入れ替わった。そういうことだな?」
「あぁ、そう難しい事は拙者とてわからぬ。しかし――――ただ、なんとなく。自然に感じている。そういう物なのだ……と」
「そうかい。それじゃ――――『風のエックスカリバー』」
それはトールが使う風魔法。
風で作った斬撃を飛ばす攻撃。 あるいは斬撃を固定させて剣として使う魔法。
「……それは斬撃と言っても魔法。 それじゃ拙者は斬れない」
「いいや、こうするのさ」とトールは砕かれた剣の残り……柄の部分に力を入れる。
柄に斬撃の魔法が移動して――――
「刀身部分を魔法で再現した。なるほど、それならば拙者を斬れる」
「まだだ。これから……もう一段階ある」
今度は折れた刀身部分、それをトールは拾い上げる。
抜き身の刀身を素手で掴めば、手は斬れるはず……しかし、トールの手から流血は見えない。 おそらく、なんらかの魔法を使っているのだろう。さらに――――
「風魔法を刀身部分に――――二刀流か?」
シルグの察する通り、折れた刀身部分に魔力を流した。
トールは折れた剣の2つから魔力によって2つの剣を作り出したのだ。
「あぁ、ソリット二天一刀流だ。 ……行くぞ」
先手はトール。 下半身の爆発力で一瞬で間合いを潰す。
「間合いがなくなれば、魔剣 アップシュタントの脅威を薄れる」
「―――いいや、勘違いをしとりゃせんか、トール? 魔剣アップシュタントの剣撃を掻い潜って近間に来れば倒せると?」
打撃。それも荒々しく、危険な技。
「がっ!」とトールは声を漏らす。 その喉元に指による打撃が叩き込まれたのだ。
思わず動きを止めたトールにシルグは――――
「それ! 追い打ち!」と今度は指でトールの目を狙いにいく。
「させるか! それは欲張り過ぎだ」
トールは低い体勢で避ける。 その頭上にシルグの腕が通過。
「その足、貰った!」としゃがんだ状態からトールは剣を走らせた。
「脛斬りか! えげつない技を使うか!」
避けるシルグ。
しかし、低い斬撃を避けるには大きく飛ぶような動作。
「実戦的だろ?」とトールは、相手の動きが必ず止まることになる着地を狙う。
(狙いは着地のタイミング。下から跳ね上げる軌道の剣――――)
「うむ、受けるまでもないわ……魔剣 アップシュタント」
空中でシグルは魔剣を振るう。
相手が止まる隙を狙う予定だったトール。 だが、魔剣には間合いの概念がないのだ。
シルグの剣撃は彼が着地するよりも速く、トールに届く。
「――――ッ!?」と驚きながら、地面を転がるように回避したトール。
(追撃が来る! ――――いや、来ないのか?)
当然、不利な体勢になればシルグは襲い掛かってくると思っていた。
しかし、彼は歩みを止めていた。しかも、事にあろうに――――
「なぁ……剣とはこのような物か?」
何やらシルグは哲学のような事を語り始めた。
一合、二合、三合と両者の剣はぶつかり合う。
それは斬撃というよりも、あまりにも――――
鈍器の打撃の等しい荒々しい競い合い。
シンプルな競い合い。 しかし、徐々に速度と威力が跳ね上がっていく。
大地は揺さぶられ、割れた亀裂が走り抜ける。
おぉ……見よ! 空は切り裂かれた雲が浮遊している。
環境破壊闘術。
人は戦う事で星をここまで痛めつけ、破壊する事ができるのだ。
そんな戦いの中で悲鳴が上がる。 ただし……それは人間のものではない。
それは剣である。 トールが有する剣は、ごく平凡な物。
シルグの魔剣との打ち合い、斬り合いで耐えれたのは、トールが持つ技術。
皆、知っての通りではあるが、ソリット流剣術は衝撃を無効化する技が存在している。
高速、正確に……かつ大量に繰り返される。剣を引くというシンプルな動作により剣に伝わる衝撃は分散され、やがて無となる。
そんなトールの妙技を持ってすら、剣は限界を向かえた。
「せいやっ! このチェストをぉぉぉぉぉぉぉ!!」
シルグから放たれたのは裂帛の気合と共に剛剣の一撃。
鍛えられたとは言え、ただの金属である剣は、それに抵抗する事も叶わず――――
あっけなく叩き割られた。
「――――」
「これが正常な試合なら、この時点で拙者の勝ちは動かぬ。――――どうする?」
「それを聞くのか? 魔に飲まれて、それでも人を捨てないのならば、俺もここで引くわけにはいかない」
「だが、できるか?」
「できる……か? とは?」
「拙者に勝つ。それは魔法による攻撃であってはならぬ。 肉体による打撃であってはならぬ」
「あぁ、なるほど……アンタは、もうそう言う存在になっちまったのか……いや、言い直そう。そういう存在にまで到達したのか……」
ここは魔があり、神秘かある世界。 ならば、時折は起きる。
『概念』で人間を完成させる。
例えば、ゴースト系の魔物は斬撃が効かない。魔法の効果も薄い。
効果的なのは聖職者の破邪系の魔法。 ……それと同じことなのだ。
「剣で到達した者を倒すには剣でなくてはならない。そう世界の理が入れ替わった。そういうことだな?」
「あぁ、そう難しい事は拙者とてわからぬ。しかし――――ただ、なんとなく。自然に感じている。そういう物なのだ……と」
「そうかい。それじゃ――――『風のエックスカリバー』」
それはトールが使う風魔法。
風で作った斬撃を飛ばす攻撃。 あるいは斬撃を固定させて剣として使う魔法。
「……それは斬撃と言っても魔法。 それじゃ拙者は斬れない」
「いいや、こうするのさ」とトールは砕かれた剣の残り……柄の部分に力を入れる。
柄に斬撃の魔法が移動して――――
「刀身部分を魔法で再現した。なるほど、それならば拙者を斬れる」
「まだだ。これから……もう一段階ある」
今度は折れた刀身部分、それをトールは拾い上げる。
抜き身の刀身を素手で掴めば、手は斬れるはず……しかし、トールの手から流血は見えない。 おそらく、なんらかの魔法を使っているのだろう。さらに――――
「風魔法を刀身部分に――――二刀流か?」
シルグの察する通り、折れた刀身部分に魔力を流した。
トールは折れた剣の2つから魔力によって2つの剣を作り出したのだ。
「あぁ、ソリット二天一刀流だ。 ……行くぞ」
先手はトール。 下半身の爆発力で一瞬で間合いを潰す。
「間合いがなくなれば、魔剣 アップシュタントの脅威を薄れる」
「―――いいや、勘違いをしとりゃせんか、トール? 魔剣アップシュタントの剣撃を掻い潜って近間に来れば倒せると?」
打撃。それも荒々しく、危険な技。
「がっ!」とトールは声を漏らす。 その喉元に指による打撃が叩き込まれたのだ。
思わず動きを止めたトールにシルグは――――
「それ! 追い打ち!」と今度は指でトールの目を狙いにいく。
「させるか! それは欲張り過ぎだ」
トールは低い体勢で避ける。 その頭上にシルグの腕が通過。
「その足、貰った!」としゃがんだ状態からトールは剣を走らせた。
「脛斬りか! えげつない技を使うか!」
避けるシルグ。
しかし、低い斬撃を避けるには大きく飛ぶような動作。
「実戦的だろ?」とトールは、相手の動きが必ず止まることになる着地を狙う。
(狙いは着地のタイミング。下から跳ね上げる軌道の剣――――)
「うむ、受けるまでもないわ……魔剣 アップシュタント」
空中でシグルは魔剣を振るう。
相手が止まる隙を狙う予定だったトール。 だが、魔剣には間合いの概念がないのだ。
シルグの剣撃は彼が着地するよりも速く、トールに届く。
「――――ッ!?」と驚きながら、地面を転がるように回避したトール。
(追撃が来る! ――――いや、来ないのか?)
当然、不利な体勢になればシルグは襲い掛かってくると思っていた。
しかし、彼は歩みを止めていた。しかも、事にあろうに――――
「なぁ……剣とはこのような物か?」
何やらシルグは哲学のような事を語り始めた。
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