元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

チョーカー

勇者対魔物使い 魔剣持ち対元咎人

「なんだと……!?」

 スックラ領争奪戦の参加者が勝手に街中で戦いを開始した。

 その情報が王たちに取って寝耳に水。 その一方に動揺は激しい。

「どういうことだ! フレヤー女王、ルキウス王!」

 マクマの怒声。しかし、フレイヤ―女王は怒りを浴びせられてもどこ吹く風。

「あら、どういうこととは? 何かしら?」

「惚けるな! シルグは貴様が推した者であろう!」

「ふふっ……私の考えはルキウス王と同じよ」

「何!」

「勘違いしないでね。シルグは私の配下じゃない。私が、このスックラの王に相応しいを思った男を――――惚れた男を探し当てただけよ?」

「――――ばかな。貴様もルキウスも王を推挙するなど!」

「くっくっく……なるほど。それは俺と同じだ」

「貴様は黙っていろ! ルキウス!」

「はいはい、俺も当事者なのだがな」と言いながら苦笑したルキウスは下がった。

「ブラテン代表 トール・ソリット。 うちのシルグと勝るとは劣らぬ超雄度の高い戦士……そんな2人が街中で出会えばどうなるか? 想像力の欠如よ、マクマ王?」

「黙って聞いおれば、そう抜かすか! ならば、ここで断じても――――」

「えぇい! やり合っている場合か! 止めるにしても、認めるにしても、ワシ等も急いで移動するぞ!」

「――――ッ! この、覚えておれフレヤー女王……それとルキウス王!」

「おやおや、俺も巻き込まれてしまったか」

 そんなルキウスのどこか楽しそうな声をマクマは無視して、踵を返す。

「クロス! クロスはいるか? ……アイツも何をしている――――クソが!」

 マクマは拳を壁に叩きつけた。 彼の苛立ちを表現するかのようなで――――城が揺れるような衝撃。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 王たちがいる場所から少し離れた場所……自然に覆われた森の中。

「それで、俺に何のようですか? こんな場所に呼び出して――――」

「失礼 勇者さま。私の名前はメタスと申します」

「――――魔物使いのメタス。 本来なら出場者と聞いていたが、コウ王自ら参戦となり、外されたと聞いたが?」

「一度、裏切り……それでも忠誠を捨てきれずにいる憐れな女と笑いください」

「――――」とクロスは言葉を失った。

(尋常ではない鬼気迫る気迫。何かを仕掛けてくる……それも異常な攻撃を)

クロスの未来視に近い観察眼は警戒音を鳴り響かせた。

そしてメタスは外套を脱ぎ捨てる。 

露わになる肌。露出が増す――――だから気づく。 腹部に刻まれた入れ墨タトゥー

「それは禁術か? わざわざ見せるという事は制約か?」

「いえ、どうでしょうか?」とメタスは微笑む。

 まるで覚悟を決めると同時に、何かを諦めたかのような悲しい微笑みだった。

「私の内に刻まれた666の魔物の力――――放たれるは今……解放。第一門!」

「――――自ら体の内部に魔物の因子を! その力は魔物使いではなく、召喚士? ならば――――馬鹿な! 本当に存在していたと言うのか……兼業者ダブルワーカー」 

「その通りです。地獄を地獄した程度ではたどり着かない伝説の極致 兼業者ダブルワーカー……私は魔物使いと召喚士です。 だから――――行け! 私のしもべ
   
 光輝くは、メタスの肉体に刻まれた召喚紋。

 それは異界へ繋ぐ門か? そして、そこから3つの影が飛び出した。

 それを捉えたクロスは――――

「これは……ゴブリン?」と眉を顰めた。

 困惑。 無論、ただのゴブリンのはずはない。ないのだが……

(俺の戦闘思考力から分析、解析の結果……はじき出したその戦闘能力は平凡なゴブリンに違いない)

 同時に前進してくるゴブリン。 そして奇妙な雄たけび。

「ンゴゴ! ンゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!(行くぞ! ゴブリンストリームアタックを仕掛ける!)」 

 その動きは奇妙――――真っすぐ一列に並ぶと、最初の一匹が白兵戦を仕掛ける

 だが、やはり――――しょせんはゴブリン。

 斬っ! とクロスの剣は最初に向かってきたゴブリンを横薙ぎの一撃。

 胴から切断してみせ、そのまま速度を落とさず前進。

 後方から攻撃を狙う2匹に接近すると鮮やかに斬り捨てて見せた。

 だが――――
 
(やはり、訓練されているが手ごたえはない。なぜ、この戦いの領域でゴブリンを?) 

 そんなクロスの疑問を拭いきれないまま、

「お見事、それでは――――解放、二門!」

 新たな光。そこから姿を現した魔物は――――

「ゴブリンの次はスライム?」

 クロスの言う通り、召喚されたのは普通のスライムだった。

 ――――一方その頃。 

 街中ではトールとシルグの戦いは繰り広げられていた。

「もう止めろ! その体に纏わりついている目……魔剣に浸食されている」

「知った事を吠えるな。 今のこの俺――――魔剣を1つになりて全盛期。 今こそ、越えさせていただく!」

 シルグが振るうは魔剣。

 その間合いは空間を捩じ切り、離れたトールに斬撃が襲い掛かってくる。

「この、だったら俺が――――お前の暴走を止めて見せる! シルグっ!」

「今の拙者を暴走と侮るか! それがお主の敗因となるぞ!」

 互いの咆哮めいた言葉がぶつかり合い、次に肉体と武器がぶつかり合った。


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