元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
温泉回 グリアの計画発動
「大丈夫か?」
トールは疑問の声を出した。
先に湯から出て待っていると少し遅れて出てきたレナとグリア。
すぐに様子のおかしさに気付くも、
「だ、大丈夫です。少しのぼせてしまった」とグリア。
「いや、のぼせたようには見えない。まるで、強烈な打撃を受けたかのように……」
「き、気のせいです。な、なんでもないのです」とグリアの変わりに答え始めたレナ。
彼女も彼女で様子がおかしい。
(なにかあったようだ。……しかし、何が起きたのか想像もできない)
おそらく事故…… グリアのダメージから見て、レナから攻撃。
しかし、2人の様子から喧嘩など殺伐とした気配はない。
(ならば、それ以上詮索するべきではない。女性同士、浴槽の出来事なのだから)
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
その後、グリアの体力回復のため休憩を挟み、3か所の温泉を堪能して旅館に戻ってきた3人。
もうすっかりと夜。 日も暮れた旅館では仲居さんたちが忙しそうにしていた。
夕餉だ。
部屋に用意されたテーブルにも豪勢な料理が所狭しと並んでいる。
正直、食べ方の見当がつかないような物も複数種類。
若干の躊躇するトールとグリアだったが、
「うわぁ、凄いですね。もう食べていいのですか?」
目を輝かせたレナが率先して食べ始めた。
「う~ このお刺身、弾力があってプリプリですね。 今、時期ですよね?」
「あらあら、お詳しいですね」と仲居さんは、笑いながら料理の説明を続けた。
「それでは、ごゆっくり」と仲居さんは、部屋を後にした。
「懐かしいです。もう一度、この味を堪能できるなんて去年までは想像もできませんでした」
一瞬、そう一瞬だけ悲しそうに微笑んだレナ。
ここは彼女にとって故郷だ。
ここに居ながらも――――まだ本当の意味では――――帰る事の許されない亡国。
それでも彼女は微笑み続け――――
「ありがとうございました トールさま」と頭を下げた。
「――――」とトールは長すぎ、それでも決して短くない無言を返す。
「トールさま?」と頭を上げたレナにトールは、
「まだだよ」
「え?」
「もう少し、頑張れば――――君は、この国の姫に戻れる」
「――――」と息を飲み音だけがレナから聞こえた。
見つめ合う2人。
「あの……2人の世界を崩して悪いけど、このスープが沸騰しているのどうしたらいいの?」
「あっ! グ、グリアさん、こ、これは時間と共に自動で消えるように計算されているので……ほら、中の海産物に火が通って美味しそうですよ」
「この黒いタレ? 野菜か何かをすりおろした緑を混ぜるのね」
「あっ! それはわさ……」
「っ!? がっぽ! は、鼻に、何かが通り抜けて、目が! 目が!」
「入れすぎです! 水を、水を飲んでください」
そんな感じで湿っぽさが残らず――――それはグリアの計算なのか、天然だったのかは不明ではあるが――――食事は終わり、夜はさらに静けさを増していった。
そして――――いよいよグリアが動くタイミングを計り始めた。
(食事の終わり、体内の糖が上昇により睡魔の発生……その前にレナとトールは……)
「それでは、眠る前に旅館内のお風呂に入りましょう」
(動いた! 先手はレナ……予想通り。ここでトールさまも続くはず……)
「そうか、それじゃ俺も行くか」
よし! とグリアは脳内でガッツポーズを行った。
「それじゃレナちゃん、急いでいきましょう。女性は時間がかかるのでトールさまをお待たせしてしまっては申し訳ないでしょう」
「え? いや、俺は別に――――」とトールに最後まで言わせない。
すでに準備は済ませていた荷物を持つだけでグリアはレナを外へ押しだした。
「え? えっと? どうかされたのですかグリアさん?」
「ん? なんでもないわ。 私に任せなさい」
グリアはニッコニコで風呂場に向かう。 しかし、ここで2人で風呂場に到着するわけにはいかない。
(だからと言ってタイミングが重要。 別れた後に、遠回りしてもレナよりも先に風呂場に到着しなければならない)
「あっ! 忘れ物があったわ! レナちゃん、先に行ってね」
「どうしたのですか!? そんな棒読み口調で!」
レナの言葉に返事を返さない。 一目散にグリアは駆け出した。
(タイミングは理想通り、タイミングが早すぎれば、レナは足を止めてこの場で待つ。 タイミングは遅ければ、私よりもは早くレナが風呂場に到着してしまう)
グリアは廊下を疾走する。 この旅館、階段は一か所だけではない。
廊下の端と端の二か所存在している。 なぜ、レナよりも早く到着しなければならないのか?
先客の有無が大切になる。 女風呂と男風呂の両方に先客がいた場合、計画は失敗に終わる。しかし――――
女湯に先客がいた場合。かつ、男湯が無人だった場合は――――
男女を分ける暖簾を逆にして、無人の男湯にレナを誘導。
逆に男湯に先客がいた場合。勝つ女湯が無人だった場合は――――
そのまま、レナが女湯に入り、トールが来る前に暖簾を逆にする。
そうしてこれを貼るのだ。
『ただいま清掃中につき、使用できません』
「そう……お風呂に男と女が2人きり……何も起きないはずはなく! そこに私も乱入すれば――――がっははは勝ったな!」
トールは疑問の声を出した。
先に湯から出て待っていると少し遅れて出てきたレナとグリア。
すぐに様子のおかしさに気付くも、
「だ、大丈夫です。少しのぼせてしまった」とグリア。
「いや、のぼせたようには見えない。まるで、強烈な打撃を受けたかのように……」
「き、気のせいです。な、なんでもないのです」とグリアの変わりに答え始めたレナ。
彼女も彼女で様子がおかしい。
(なにかあったようだ。……しかし、何が起きたのか想像もできない)
おそらく事故…… グリアのダメージから見て、レナから攻撃。
しかし、2人の様子から喧嘩など殺伐とした気配はない。
(ならば、それ以上詮索するべきではない。女性同士、浴槽の出来事なのだから)
・・・
・・・・・・
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その後、グリアの体力回復のため休憩を挟み、3か所の温泉を堪能して旅館に戻ってきた3人。
もうすっかりと夜。 日も暮れた旅館では仲居さんたちが忙しそうにしていた。
夕餉だ。
部屋に用意されたテーブルにも豪勢な料理が所狭しと並んでいる。
正直、食べ方の見当がつかないような物も複数種類。
若干の躊躇するトールとグリアだったが、
「うわぁ、凄いですね。もう食べていいのですか?」
目を輝かせたレナが率先して食べ始めた。
「う~ このお刺身、弾力があってプリプリですね。 今、時期ですよね?」
「あらあら、お詳しいですね」と仲居さんは、笑いながら料理の説明を続けた。
「それでは、ごゆっくり」と仲居さんは、部屋を後にした。
「懐かしいです。もう一度、この味を堪能できるなんて去年までは想像もできませんでした」
一瞬、そう一瞬だけ悲しそうに微笑んだレナ。
ここは彼女にとって故郷だ。
ここに居ながらも――――まだ本当の意味では――――帰る事の許されない亡国。
それでも彼女は微笑み続け――――
「ありがとうございました トールさま」と頭を下げた。
「――――」とトールは長すぎ、それでも決して短くない無言を返す。
「トールさま?」と頭を上げたレナにトールは、
「まだだよ」
「え?」
「もう少し、頑張れば――――君は、この国の姫に戻れる」
「――――」と息を飲み音だけがレナから聞こえた。
見つめ合う2人。
「あの……2人の世界を崩して悪いけど、このスープが沸騰しているのどうしたらいいの?」
「あっ! グ、グリアさん、こ、これは時間と共に自動で消えるように計算されているので……ほら、中の海産物に火が通って美味しそうですよ」
「この黒いタレ? 野菜か何かをすりおろした緑を混ぜるのね」
「あっ! それはわさ……」
「っ!? がっぽ! は、鼻に、何かが通り抜けて、目が! 目が!」
「入れすぎです! 水を、水を飲んでください」
そんな感じで湿っぽさが残らず――――それはグリアの計算なのか、天然だったのかは不明ではあるが――――食事は終わり、夜はさらに静けさを増していった。
そして――――いよいよグリアが動くタイミングを計り始めた。
(食事の終わり、体内の糖が上昇により睡魔の発生……その前にレナとトールは……)
「それでは、眠る前に旅館内のお風呂に入りましょう」
(動いた! 先手はレナ……予想通り。ここでトールさまも続くはず……)
「そうか、それじゃ俺も行くか」
よし! とグリアは脳内でガッツポーズを行った。
「それじゃレナちゃん、急いでいきましょう。女性は時間がかかるのでトールさまをお待たせしてしまっては申し訳ないでしょう」
「え? いや、俺は別に――――」とトールに最後まで言わせない。
すでに準備は済ませていた荷物を持つだけでグリアはレナを外へ押しだした。
「え? えっと? どうかされたのですかグリアさん?」
「ん? なんでもないわ。 私に任せなさい」
グリアはニッコニコで風呂場に向かう。 しかし、ここで2人で風呂場に到着するわけにはいかない。
(だからと言ってタイミングが重要。 別れた後に、遠回りしてもレナよりも先に風呂場に到着しなければならない)
「あっ! 忘れ物があったわ! レナちゃん、先に行ってね」
「どうしたのですか!? そんな棒読み口調で!」
レナの言葉に返事を返さない。 一目散にグリアは駆け出した。
(タイミングは理想通り、タイミングが早すぎれば、レナは足を止めてこの場で待つ。 タイミングは遅ければ、私よりもは早くレナが風呂場に到着してしまう)
グリアは廊下を疾走する。 この旅館、階段は一か所だけではない。
廊下の端と端の二か所存在している。 なぜ、レナよりも早く到着しなければならないのか?
先客の有無が大切になる。 女風呂と男風呂の両方に先客がいた場合、計画は失敗に終わる。しかし――――
女湯に先客がいた場合。かつ、男湯が無人だった場合は――――
男女を分ける暖簾を逆にして、無人の男湯にレナを誘導。
逆に男湯に先客がいた場合。勝つ女湯が無人だった場合は――――
そのまま、レナが女湯に入り、トールが来る前に暖簾を逆にする。
そうしてこれを貼るのだ。
『ただいま清掃中につき、使用できません』
「そう……お風呂に男と女が2人きり……何も起きないはずはなく! そこに私も乱入すれば――――がっははは勝ったな!」
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