元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
温泉回 グリアの思惑
空の旅にはアクシデントと言う出来事もなく、あっさりと目的地に到着した。
しかし、
「ここが温泉街――――っていや待て!?」とトールにしては珍しい動揺の仕方だった。
それを初めから予想していたのだろう。
「どうした?」とめんどくさそうにブレイク男爵は答えた。
「ここは、この場所は――――スックラじゃないか!」
そう、トールも驚くのは無理もない。 この場所はスックラ……正確には旧スックラとしてブラテンが保有している領土だった。
「そうだ。本来なら民間人の出入りは大きな制限があり、気軽に来れる場所ではない。手配してくれたルキウス王にありがたく思え」
「ありがたく思えって、お前……」
「それでも私の用件は、貴様らの運搬だ。 それも終わった。さらばだ!」
ブレイク男爵は、飛竜の頭部まで駆け上ると、手綱で握りしめて一気に飛翔させた。
「……逃げやがった」と見送るトールだったが、すぐに彼女の様子を窺う。
彼女とは、当然レナだ。 呆然とした表情で何かを見つめている。
意としないさ里帰り。 もちろん、かつて彼女の暮らしていた王都ではないにしても……
彼女の心情は、察しようにも察しきれないものがある。
やがて、何かに納得したように「うん」と頷いた。それから、
「あそこが旅館になるみたいですね。流石に御立派ですね。王族や貴族さまが利用すると聞いて納得です」
気にする様子もなく、テクテクと荷物をもって進みだした。
残されたトールは、グリアに視線を送る。
(わかっていると思うが、レナも精神的に不安定になるかもしれない。フォローをしてやってくれ)
そう意味を込めた視線を受け、グリアは頷く。 どうやら、トールの考えを理解したらしく、
「私に任せてくれれば大丈夫」
タッタッタッと先行しているレナに走って追いかけて行った。
レナに追いついたグリアは、
「ねぇねぇ、レナちゃん。これはチャンスだよ?」
「えっ? え、え? どういう事です?」
「トールさまは心身共に疲労の限界。癒し、安らぎも求めている」
「それは、その通りだと思いますが……」とレナは小首を傾げた。
グリアの言っている事は、今の所はただしい。 しかし、家族のように一緒に暮らすようになったレナは、不穏な何かを感じ取った。
「そして、ここは温泉。 温泉と言えば混浴でしょ!」
「え? いえ、よ、嫁入り前の女性が男性と湯を共にすることは……ごにょごにょ……」
「いいレナちゃん? 男女の関係を進めるには何が必要かわかる?」
「えっと……? あ、愛の甘いささやきとか、2人の思い出づくりとかですか?」
「いいえ、既成事実よ! 今ここで既成事実を作って将来を決定付けるのよ!」
この女、理解なんてしていなかった。
トールからの視線をどう捉えたのか? ただの熱視線と認識したのだ。
「えっ? き、既成事実……え?」とレナは顔を赤く染めると、まるで温泉のように頭から白い湯気を昇らせた。
「うん、心配しなくても大丈夫だよ! 私1人で結ばれるつもりはないわ」
さらにグリアの暴走は進む。
「私たちは家族……もはやファミリー! そして、トールさまは咎人どころが国の代表になるほどの英雄となりました」
「た、確かに、私たちは家族…… トールさまも英雄と言っても差し支えありませんが……」
「ならば、英雄色を好むではありませんが」とグリアの暴走は続く。
「我が父、ブレイク男爵ことアレク・フォン・ブレイクですら、彼を認めたのです。もはや、私たち2人くらい――――例え貴族令嬢でも、例え亡国の姫君であれ、養う甲斐を言うものを得ています」
「や、養う甲斐! そ、それは結婚ということですか!」
「そう、結婚。 別に私たち2人がお嫁さんになっても構わんのよね!」
「私が、私たちがトールのお嫁さん……いえ、ダメです、グリアさま、それはいけません」
レナはブンブンと首を振り、雑念を振り払う。 あまりの勢いに首が取れてしまうのでは? そう思えるほどだった。
「むむむ……意外と強情ね。 トールさまがレナちゃんと結婚してスラックの王として君臨してくれれば、私も第二妃として合法的に……そう妥協しているのに!」
「そ、それでいいのですか? グリアさん?」
「いいよの立場なんて! 愛さえあればね」
「そんな凄い清々しい顔を!」
「まぁ、大丈夫よ。この温泉旅行中にトールさまとレナちゃんを物にする算段を考えているからね」
「トールさまだけじゃなくて私まで手籠めにするつもりですか!」
「そうそう……楽しみにしていてね」
「凄い! そんなにも邪悪な笑みを!」
「ぐふふふ……」とグリアは笑い、旅館を目指して歩を速めた。
しかし、
「ここが温泉街――――っていや待て!?」とトールにしては珍しい動揺の仕方だった。
それを初めから予想していたのだろう。
「どうした?」とめんどくさそうにブレイク男爵は答えた。
「ここは、この場所は――――スックラじゃないか!」
そう、トールも驚くのは無理もない。 この場所はスックラ……正確には旧スックラとしてブラテンが保有している領土だった。
「そうだ。本来なら民間人の出入りは大きな制限があり、気軽に来れる場所ではない。手配してくれたルキウス王にありがたく思え」
「ありがたく思えって、お前……」
「それでも私の用件は、貴様らの運搬だ。 それも終わった。さらばだ!」
ブレイク男爵は、飛竜の頭部まで駆け上ると、手綱で握りしめて一気に飛翔させた。
「……逃げやがった」と見送るトールだったが、すぐに彼女の様子を窺う。
彼女とは、当然レナだ。 呆然とした表情で何かを見つめている。
意としないさ里帰り。 もちろん、かつて彼女の暮らしていた王都ではないにしても……
彼女の心情は、察しようにも察しきれないものがある。
やがて、何かに納得したように「うん」と頷いた。それから、
「あそこが旅館になるみたいですね。流石に御立派ですね。王族や貴族さまが利用すると聞いて納得です」
気にする様子もなく、テクテクと荷物をもって進みだした。
残されたトールは、グリアに視線を送る。
(わかっていると思うが、レナも精神的に不安定になるかもしれない。フォローをしてやってくれ)
そう意味を込めた視線を受け、グリアは頷く。 どうやら、トールの考えを理解したらしく、
「私に任せてくれれば大丈夫」
タッタッタッと先行しているレナに走って追いかけて行った。
レナに追いついたグリアは、
「ねぇねぇ、レナちゃん。これはチャンスだよ?」
「えっ? え、え? どういう事です?」
「トールさまは心身共に疲労の限界。癒し、安らぎも求めている」
「それは、その通りだと思いますが……」とレナは小首を傾げた。
グリアの言っている事は、今の所はただしい。 しかし、家族のように一緒に暮らすようになったレナは、不穏な何かを感じ取った。
「そして、ここは温泉。 温泉と言えば混浴でしょ!」
「え? いえ、よ、嫁入り前の女性が男性と湯を共にすることは……ごにょごにょ……」
「いいレナちゃん? 男女の関係を進めるには何が必要かわかる?」
「えっと……? あ、愛の甘いささやきとか、2人の思い出づくりとかですか?」
「いいえ、既成事実よ! 今ここで既成事実を作って将来を決定付けるのよ!」
この女、理解なんてしていなかった。
トールからの視線をどう捉えたのか? ただの熱視線と認識したのだ。
「えっ? き、既成事実……え?」とレナは顔を赤く染めると、まるで温泉のように頭から白い湯気を昇らせた。
「うん、心配しなくても大丈夫だよ! 私1人で結ばれるつもりはないわ」
さらにグリアの暴走は進む。
「私たちは家族……もはやファミリー! そして、トールさまは咎人どころが国の代表になるほどの英雄となりました」
「た、確かに、私たちは家族…… トールさまも英雄と言っても差し支えありませんが……」
「ならば、英雄色を好むではありませんが」とグリアの暴走は続く。
「我が父、ブレイク男爵ことアレク・フォン・ブレイクですら、彼を認めたのです。もはや、私たち2人くらい――――例え貴族令嬢でも、例え亡国の姫君であれ、養う甲斐を言うものを得ています」
「や、養う甲斐! そ、それは結婚ということですか!」
「そう、結婚。 別に私たち2人がお嫁さんになっても構わんのよね!」
「私が、私たちがトールのお嫁さん……いえ、ダメです、グリアさま、それはいけません」
レナはブンブンと首を振り、雑念を振り払う。 あまりの勢いに首が取れてしまうのでは? そう思えるほどだった。
「むむむ……意外と強情ね。 トールさまがレナちゃんと結婚してスラックの王として君臨してくれれば、私も第二妃として合法的に……そう妥協しているのに!」
「そ、それでいいのですか? グリアさん?」
「いいよの立場なんて! 愛さえあればね」
「そんな凄い清々しい顔を!」
「まぁ、大丈夫よ。この温泉旅行中にトールさまとレナちゃんを物にする算段を考えているからね」
「トールさまだけじゃなくて私まで手籠めにするつもりですか!」
「そうそう……楽しみにしていてね」
「凄い! そんなにも邪悪な笑みを!」
「ぐふふふ……」とグリアは笑い、旅館を目指して歩を速めた。
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