元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
旧スックラ領地争 ブラテン国代表者決定戦 優勝
――――トールの技。
相手の動きに合わせて、前に出てタイミングを狂わせる。
そして、相手の攻撃を受ける。
相手の攻撃が、体に接触した感覚があるか、ないかのタイミング……
そこで後ろに下がる。本当に、ごく僅かな動きで下がるのだ。
それを瞬時に100回も、1000回も行う。 すると相手の攻撃は勢いが殺されて動きが止まる。
この技――――トールは真剣による刺突を受けても、無傷でいられるのだ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「この技を使って傷を負うのは久しぶりだな……」
「その言い方、少しだけ驚きました。 それじゃまるで――――
無傷で勝てると思っていたみたいじゃないですか!」
レナは踏み込むと同時に『聖なる光』を発射。
加えて自身の周辺に『花の盾』を展開。
自身は杖から突きの構え――――
3つ同時――――いや、僅かに時差を生み出した波状攻撃。
それをトールは――――『火矢《ファイアアロー》』
極大魔法で蹴散らそうと放つ。
易々と初弾『聖なる光』を飲み込む消滅させ、そのままレナを守る『花の盾』、魔法防御壁に衝突する。
「私は、もっと――――この程度では止まってあげませんよ!」
トールの魔法と衝突した衝撃。それに負けまいとレナは1歩、1歩と前に――――前進を続ける。
そして、ついに……トールの『火矢』を打ち破り、接近戦の間合いまで――――レナは駆け出している。
「接近戦なら、まだ私にだって勝機をいうものがあるはずです!」
「あぁ、そうだな。――――けど、『水球《アクアボール》』」
トールが次に放ったのは水属性の捕縛魔法。
地面から設置されていた魔法陣から、粘着性の高い水分がレナの足に纏わりつく。
「それでも、私は止まりません――――よっ!」
地面そのものを剥がすようにレナは前に――――前に――――
だが、ついに彼女の足は止まった。
――――止まったのだが、最後にもう一歩だけ前に――――その踏み込みは投擲に必要なフォーム。 手にしている杖を渾身の力でトールに向かって――――
投げた。
この時、トールが感じたのは無音の世界。
まさか、戦いの舞台は、音さえ置き去りにした音速の領域にまで達したとでも言うのか?
あり得ない。――――しかし、ならばこれは死の間際に高まった集中力が見せる走馬灯とでも言うのか?
音が制止したはずの世界でトールは呟いた。
「この領域にたどり着いた。初めてだ、俺だって――――だから感謝ッ!」
『ソリット流剣術 我流合わせ――――聖邪龍の舞い』
かつて復讐鬼が使用した高速の剣技『我流剣術 邪龍の舞い』
それにソリット流の抜刀術を加えた事で、その剣先は音速すら切り裂き――――光すら追いついた。
――― 斬 ―――
空間が切り裂かれ、音も光も置き去りにして――――再構築された世界。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
レナは自身が斬られた事を遅れて自覚する。
(私の結界――――『聖なる領域』を攻撃に合わせて展開するつもりでしたが、私の技量不足でした)
レナがどうして、この戦いに参加したのか?
それは、もちろん母国を取り戻すため。しかし、それも目的の1つ。
冒険者として、さらなる高みを目指すため。 それも1つ。
(しかし、一番の目的は憧憬――――なのでしょうね) 
薄れていく意識。 自分を斬った男の姿をみた。
「トールさま、私は貴方に――――」
貴方になりたかった。 そう最後に口にした言葉は、果たしてトールに届いただろうか?
そんな事を考えながらも、レナの意識は完全に途絶えたのだった。
無論、トールはレナを殺したわけではない。
光の速度に近づいた一撃。それがレナに到達する直前で力を緩め、剣を手放すほどに――――脱力。
レナの体に触れるだけ。斬撃による力が彼女に伝われないように流してみせたのだ。
しかし、その余波。 生まれた衝撃がレナの意識を刈り取った。
勝者 トール・ソリット
旧スックラ領地争 ブラテン国代表者決定戦
『――― 優勝 ―――』
相手の動きに合わせて、前に出てタイミングを狂わせる。
そして、相手の攻撃を受ける。
相手の攻撃が、体に接触した感覚があるか、ないかのタイミング……
そこで後ろに下がる。本当に、ごく僅かな動きで下がるのだ。
それを瞬時に100回も、1000回も行う。 すると相手の攻撃は勢いが殺されて動きが止まる。
この技――――トールは真剣による刺突を受けても、無傷でいられるのだ。
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「この技を使って傷を負うのは久しぶりだな……」
「その言い方、少しだけ驚きました。 それじゃまるで――――
無傷で勝てると思っていたみたいじゃないですか!」
レナは踏み込むと同時に『聖なる光』を発射。
加えて自身の周辺に『花の盾』を展開。
自身は杖から突きの構え――――
3つ同時――――いや、僅かに時差を生み出した波状攻撃。
それをトールは――――『火矢《ファイアアロー》』
極大魔法で蹴散らそうと放つ。
易々と初弾『聖なる光』を飲み込む消滅させ、そのままレナを守る『花の盾』、魔法防御壁に衝突する。
「私は、もっと――――この程度では止まってあげませんよ!」
トールの魔法と衝突した衝撃。それに負けまいとレナは1歩、1歩と前に――――前進を続ける。
そして、ついに……トールの『火矢』を打ち破り、接近戦の間合いまで――――レナは駆け出している。
「接近戦なら、まだ私にだって勝機をいうものがあるはずです!」
「あぁ、そうだな。――――けど、『水球《アクアボール》』」
トールが次に放ったのは水属性の捕縛魔法。
地面から設置されていた魔法陣から、粘着性の高い水分がレナの足に纏わりつく。
「それでも、私は止まりません――――よっ!」
地面そのものを剥がすようにレナは前に――――前に――――
だが、ついに彼女の足は止まった。
――――止まったのだが、最後にもう一歩だけ前に――――その踏み込みは投擲に必要なフォーム。 手にしている杖を渾身の力でトールに向かって――――
投げた。
この時、トールが感じたのは無音の世界。
まさか、戦いの舞台は、音さえ置き去りにした音速の領域にまで達したとでも言うのか?
あり得ない。――――しかし、ならばこれは死の間際に高まった集中力が見せる走馬灯とでも言うのか?
音が制止したはずの世界でトールは呟いた。
「この領域にたどり着いた。初めてだ、俺だって――――だから感謝ッ!」
『ソリット流剣術 我流合わせ――――聖邪龍の舞い』
かつて復讐鬼が使用した高速の剣技『我流剣術 邪龍の舞い』
それにソリット流の抜刀術を加えた事で、その剣先は音速すら切り裂き――――光すら追いついた。
――― 斬 ―――
空間が切り裂かれ、音も光も置き去りにして――――再構築された世界。
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レナは自身が斬られた事を遅れて自覚する。
(私の結界――――『聖なる領域』を攻撃に合わせて展開するつもりでしたが、私の技量不足でした)
レナがどうして、この戦いに参加したのか?
それは、もちろん母国を取り戻すため。しかし、それも目的の1つ。
冒険者として、さらなる高みを目指すため。 それも1つ。
(しかし、一番の目的は憧憬――――なのでしょうね) 
薄れていく意識。 自分を斬った男の姿をみた。
「トールさま、私は貴方に――――」
貴方になりたかった。 そう最後に口にした言葉は、果たしてトールに届いただろうか?
そんな事を考えながらも、レナの意識は完全に途絶えたのだった。
無論、トールはレナを殺したわけではない。
光の速度に近づいた一撃。それがレナに到達する直前で力を緩め、剣を手放すほどに――――脱力。
レナの体に触れるだけ。斬撃による力が彼女に伝われないように流してみせたのだ。
しかし、その余波。 生まれた衝撃がレナの意識を刈り取った。
勝者 トール・ソリット
旧スックラ領地争 ブラテン国代表者決定戦
『――― 優勝 ―――』
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