元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

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決着 ルキウス王対レナ・デ・スックラ そして次戦の始まり

「答えよ世界――――我は全てを手にする覇王なる者――――世界よ示せ! 我が栄光を――――」

 詠唱。

 言葉には力があり、魂は言葉によって表現される。

 ゆえに詠唱こそが魔法攻撃において極めるべき秘術。

 ルキウス王、極限攻撃魔法――――『真・赤炎封魔焔』

 それが『人造竜種メタニックホワイトドラゴン』の素体である白龍の能力。

 巨大な竜種が内部で生産させる魔力。 さらに世界には漂う魔力を大気から吸収する。

 それらにより、竜種最強の攻撃『竜の息吹ドラゴンブレス』をルキウス王の『真・赤炎封魔焔』の効果も付加されて変化される――――

 『赤い息吹レッドブレス

 深紅の閃光が瞬きの速度で相対するレナへ――――

「――――ッ! 『花の盾フラワーシールド』」

 その魔法防御壁。 堅固な障壁と閃光が衝突して――――壁は砕け散った。

 しかし――――

「一枚だけか」とルキウス王。

 先ほどまでレナの魔法防御壁 『花の盾フラワーシールド』は5重に顕現させても、 1撃の『赤い息吹レッドブレス』によって砕けてレナ本体にも大きなダメージを与えていた。

 それが、たった1枚だけで防ぎ切ったのだ。

「これが、噂に聞く結界魔法『聖なる領域サンクチュアリ』の効果か」

 ルキウス王は戦慄していた。

 ブラテンの王として、この予選――――いや、4か国による旧スックラ国の領土奪略戦に勝つため、国家予算と個人資産をつぎ込んで完成させた『人造竜種《メタニックホワイトドラゴン》』

「それを持ってすら届かぬか――――いや、まだだ。まだ終わりはせん!」

 ルキウス王は人工竜種の鱗に魔力を回す。

「行け! 聖なる棺桶セイントコフィン」 

 鱗の内部に収納されている金属。 ルキウス王の魔力によって自由に飛翔する物体だ。

 それが先ほどの9個を遥かに越えて18個を同時に操り、レナに狙いを定める。

 だが――――

「まずは1つ……です」

 接近した聖なる棺桶セイントコフィンを軽く杖で撃墜。

 それと同時に駆け出していく。それはルキウス王は――――

「やはり、接近してくるか。聖なる棺桶セイントコフィンを掻い潜っても、接近すれば衝撃波を――――そして離れた瞬間に『赤い息吹レッドブレス
を――――叩き込む!」

「2つ……3つ……4つ……一気に行きますよ! 『聖なる光ホーリーライト』」 

 レナの攻撃魔法。 それも無詠唱で2つ――――いや3つが浮遊する聖なる棺桶セイントコフィンを叩き落していく。

「――――僅か一瞬で半数は破壊するかレナ! だが、これ以上の接近はさせぬ!」

 人工竜種の鱗が震える。 そして、接近してくるレナへ衝撃波を叩き込む。

「そうは――――行きませんよ! 」  

 これ以上のない接近した距離。それをレナは瞬時に下がる。

「なっ! 誘いを見破るか! だが、次弾――――『赤い息吹』の準備は終わっている。残りの聖なる棺桶セイントコフィンを持ち、動きを止めて――――」

「いえ、それすら遅すぎです」

 レナは『花の盾』を展開させる。しかし、それは防御壁のためではない。

 空中に浮遊した『花の盾』を足場にして蹴っては宙へ飛ぶ。

 複数の盾を足場に――――空中を舞うように動くレナは、徐々に速度を高め――――より動きは複雑に、変則的に――――

「起動が読めない。これが人間の動きか!」

 ルキウス王は撃てない。

 最後の切り札として残していた『赤い息吹』の狙いを定まらない。

 レナの機動力を削るために展開させた聖なる棺桶セイントコフィン

 その高速兵器ですら、そのスピードについてこれずに――――

 「これで終わりです」

 気づけば、レナはルキウス王の目前。 人造竜種メタニックホワイトドラゴンの頭上まで飛び上がっていた。

「うむ……俺は、あらゆる人間を打倒すべき最強の兵器を作った……そのつもりだった。 しかし、それの想像をはるかに凌駕するか――――レナ・デ・スックラ! 見事なり!」  

「貴方の想い、人の可能性を――――その期待を私は次の戦いに持っています」

「あぁ、頼んだぞ。もっとも次の相手はあの男だろうが」

 振り上げたレナの杖。

 一気に人造竜種の頭部へ――――ルキウス王が乗り込んでいるコクピットへ杖を叩き込んだ。

 亀裂。 

 あらゆる衝撃に耐久できるような特殊装甲。それが砕け落ちていく。

 それと同時に巨大な『人造竜種』の肉体が倒れていく。

 まるで切り倒された大木のように――――

 黄金帝ルキウス王 敗退

 レナ・デ・スラック 勝利

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・


 一方、その頃――――

「決着がついたみたいだな」と声。

 その声にトールは笑いながら「待たせたな。俺の我儘で」と返す。

「まさか、他の戦いの勝敗が決するまでは待ってくれと頼まれるとは思ってもなかった」

「そう言うなよ、お前だって知らない相手じゃないだろう」

「……お前、何か変わったか? 雰囲気とか?」

「わかるか。少し、精神の壊れていた部分が癒されたんだ」

 それから、トールは言葉を続けた。

「――――なんと言うか。変わったのはそっちも同じじゃないか?」

 確かに、その男は刺客だった。 トールの命を狙っていた彼は狂気を纏っていたはず――――

 だが、今は狂気が鳴りを潜めている。

「さぁな……俺は、咎人の専門家ではあるがわからないな。そういう精神的な部分は」

「あぁそうか。それじゃ始めようか? 看守さん」

「そう言えば名乗っていなかったか。俺の名前はコリン・G・ハート」 

「そうかい、覚えておくよコリン。俺の名前はトール・ソリットだ」

「お前の名前は知ってるさ……構えろよ」

「よし、それじゃ――――」

「「勝負だ!」」

 トール・ソリットとコリン・G・ハート

 両者の戦いが始まった。

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