元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

チョーカー

白龍の暴走 ルキウス王の狂乱

島に足を踏み入れたトール。 その感想は灼熱の暑さ。

 熱帯地方独特の生態系。 ここでしか見る事のできないであろう木々……おそらく生物もそうなのだろう。

「さて」と一息。 周囲の気配を探ると――――

「戦っている? もう既に誰かが戦っているのか? しかし、これは――――」

 トールは、その方向に目を向ける。

 爆破を連想させるような戦いの震動と破壊音。

 そして、遠く離れていながらも、それが何者か? すぐに目視できる巨体。

「あれは……いや、あれが白龍ジュニア? 親よりも遥かにデカい!」

 驚愕に似た絶賛。それからすぐにトールは気づく。

「ならば、誰が戦っている?」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

トールが島に到着するより、僅か前――――

「くそっ! 檻が限界だ。 そろそろ壊れるぞ」

「まだだ、まだ出場者が島に到着していない!」

「言ってる場合か! 俺たちの命は誰が守ってくる!」

 その叫びに似た声たちは4大冒険者ギルドのメンバーたち。

 彼等は、出場者である白龍ジュニアの運搬に関わっていた。

 しかし、麻酔で眠らせていた白龍ジュニアが目を覚ますと暴れ始めたのだ。

 本来は極寒の地に生殖する竜種である白龍。 それが、突如として南国の熱風に晒され、狂乱とも言える暴走を開始したのだ。

「もういいだろ! どうせ出場者は、黙っていても到着すりゃコイツと戦ってくれる! ギリギリまで俺たちが持ちこたえなきゃならねぇ理由なんか――――」

 そんな怒声が飛び交う中、突如として凛をした言葉が響いた。

 それは、決して大きな声ではなかったにも関わらず、透き通るようで、その場にいた者の耳に自然と届いた。

「大義である!」

 その声の主は、黄金帝 ルキウス王。

 彼は出場者でありながら主催者という立場から、たの出場者の誰よりも早く到着していたのだ。

「うむ……戦いの時間よりは早まったが、やむを得まい。 俺――――黄金帝 ルキウスの命により、これより――――ブラテン国代表者決定戦……決勝大会の開始を宣言しよう!」

そう叫ぶと同時に白龍ジュニアを束縛する檻が崩れ落ちた。

中からは、山を見上げるに等しいほどの巨体――――それでいて美しい白き竜が現れた。

「うむ……俺の初戦としては相応しい相手。 ならば貰うとしようか……龍殺しの称号を!」

 黄金帝。 その二つ名に相応しい黄金の剣。

 それを抜き、白龍の向け―――― だが、白龍は顎を開き、ルキウス王の目前まで、すでに迫っていた。

 その巨大――――いや、巨大すぎるとも言える顎《アギト》を開き、ルキウス王が立っていた場所……場所自体に食らいつき、空間そのものを捕食した。

 その場所は、地面が削られて大きな穴が生まれていた。

 ならばルキウス王は? 白龍に、その身を食べられ胃袋へと落下したのだろうか?

 ――――否。 捕食よりも早く、回避する。

 さらにその身を翻し――――遠心力をつけての回転斬りを白龍に叩き込んでいた。

 それは斬撃というよりも鈍器による打撃のような物。 その威力は白龍の頭部ですら大きく揺らした。

「魔力より不可視の筋肉を再現。 今の俺は貴様よりも力持ちであるぞ?」

 生態系……食物連鎖の頂上たる竜種を相手に不遜と思わないのは、人類の頂点である王だからか?

 初弾の一撃に怯みを覚えた白龍に対して、余裕すら見せて――――

「そら、どうした頂上? 人の頂点が相手であるぞ? 戦いを通して共に分かり合おうではないか!」

 二発目。 ルキウス王の打撃によって、白龍の頭部が弾かれたように動き――――

「そら、そら、そら……どうした? このようなものか?」

 連撃。

 剣だけではなく、突きや蹴りといった打撃技ですら、白龍の巨体を大きく揺らす。

 だが、白龍もやられるだけではない。 僅かに、極僅かではあるが、全身を覆う鱗が動く。

 かつて、トールと戦った白龍が見せた震動を利用した衝撃波。

 それを子供である白龍ジュニアも執行する。 だが――――

「――――っ! 音速の攻撃。 流石に避けれぬわ」

 そういうルキウス王は、言葉とは裏腹に音速の攻撃を避けていた。

「最も、事前に攻撃が分かればその限りではないがな!」

 再び、猛攻に出ようと前に飛び出る。 しかし、白龍が欲しかったのはこの間合い。
 
 竜種最強の攻撃。 それは、離れた間合いにこそ可能。

 それこそ――――『息吹ブレス

 白龍の顎から、極寒の地を思わせる一撃がルキウス王を襲った。

 驚くは、その威力。

 見ろ! ここは灼熱の南国と言える地。

 それが息吹が放たれた跡は、試される北の大地の如く変貌を遂げてしまったではないか!

 その広範囲、範囲攻撃とも言える白龍の『息吹』

 ルキウス王は避けようとも、安全地帯なぞ存在しなかっただろう。

 いや、影が1つある。 それはルキウス王の形を残していた。

 それは氷像と化したルキウス王の亡骸――――いや、待て!

 パラパラと、僅かな氷が落ちて行きながら――――

「見事な一撃だ。 この俺、ルキウス王ですら死を覚悟させるほどの一撃!」

 全身に纏わりついていた氷が砕け落ち、ルキウス王は無傷で動き出す。

 その姿に凍傷どころか、超低温の影響が見て取れなかった。

「だが、俺の鎧は、建国王から受け継いだ物! その程度は吐息のようなもの。さぁ、見せてみろ白龍! 竜種の全力を!」       

  

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