元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
2人のトールは地下室の扉を開いた
ソリットは、前戦――――ブレイク男爵との戦い以降、何かが変わった。
それは教会で共に暮らす者たち、ハイド神父、レナ姫、グリアの3人も気づいている。
ついで、今もメイド服で奉仕活動を行っているイケメン女性騎士カイルでも気づいているほどだ。
しかし、4人は、トールの変化を踏み込んで彼自身に聞く事はしない。
なんとなくわかるのだ。 その変化に一番の動揺を見せているのはトール・ソリット自身である事を――――
1人、早朝の教会から出かけたトールは冒険者ギルドに入る。
ギルド自体は緊急の依頼があるため24時間閉まる事はない。
しかし、今日のトールは、ある意味では私用。
こそこそと隠れるように裏口から入った。
丁度、夜勤と日勤の交代時間だったらしく、受付嬢から
「おはようございますトールさん、今日も精が出ますね」
「あぁ、おはよう」と返してから、少し考えてから「お疲れ様」と付け加えた。
「くすッ」と笑って帰宅していった彼女。
「そう言えば……」とトールは、この姿になって初めて冒険者ギルドに来た時、対応してくれたのが先ほどの受付嬢である事を思い出した。
(そう言えば、魔力計測の水晶を割ったの弁償しなくてもよかったのだろうか? ……いや、なにより正式な謝罪をしていなかったな。今度、何かしなければ……)
そんな思考が、のちに大きな騒動を起こすのだが……それは、もう少し先の話である。
トールはギルド長の部屋の前に、ノックをして返事を待ってから入室する。
「う~ん、あれトールくんだ。 なんだか若返てない?」
ギルド長リリアの醜態を晒していた。 仮眠用のベッドに寝転んでいる。
服は乱れ、一部が脱ぎ棄てられている。 そして、ベッドの足元には酒瓶が少々……
「酔っているのか?」
「ンっ? 酔っぱらってないよ! リリアさんは酔ってません!」
「……水を汲んでくる。コップを借りるぞ」
「だめっ! どこ行くの!」
「むっ!?」とトールは驚いた。
古い顔馴染み……幼馴染と言っても良い関係性という事もって、普段はすることもない油断もトールは見せた。
背後から首根っこを掴まれ、そのまま引き倒される。
「ふっふっふ……捕まえた。いくらトールくんでもここじゃ私が王様なんだからね」
「うっ! 酒臭い」
「あれれ? トールくんは、まだお酒が弱いんだ。きゃわわわっ!」
「何がきゃわわわっ! だ。いい歳して……」
ピキッ! と空気が凍る音がしたが……トールは地雷を踏み抜いた事に気づいていない様子だった。
「あのね! 私だって朝まで飲酒をしたいわけじゃないのよ! 私だって家に帰りたい! でも、できないの……なんでかわかる?」
「い、いや、わからないが……」
「私が独身だからよ! 独身で仕事ができるからギルド長なんて……したくもない出世をしちゃったの! そして、それがどうしてか! わかりますか? トールくん!」
「い、いや……すまない」
「トールくんが私と結婚してくれなかったからです!」
「?!?!」
「なに、意外と心外が結婚したみたいな顔してんの? そうでしょ?」
「そんな事はない……と思うぞ」
「いいえ、あります! 若い頃の私は冒険者ギルドで働く受付嬢。トールくんは新進気鋭の剣士冒険者。 ところが、魔王たちの攻撃が活発化! 冒険者たちも戦争として参加しました。その時、私がトールくんに言った言葉――――覚えてる?」
「……覚えているさ」
「戦争で死ぬかもしれないから、結婚はできない。けど、もし生きて帰ってきたら――――その時は一緒になろうっていったじゃない!」
「そうだった……いや、待てよ? 本当にそんな事を言ったか? 俺が……いや、言ってないぞ!」
「あれ? そうだったけ? まぁいいや。責任取って結婚してねトールくん」
「はいはい。酔いが醒めたら思い出して、ベッドで足をバタバタさせた身悶える事になるんだから水を飲め、水を」
「はい、トールくん優しい~!」
ゴクゴクと勢いよく飲み込んだリリアは、
「ぶっはぁ!」と気管に入ったらしく、壮大に吹き出した。
気を緩めているトールだったが、流石に正面から顔面に受ける事はなく、実戦さながらの機敏さで回避した。
げほげほ……と咽るリリアの背中をさすり、
「もう、酔いを醒ますよりも寝た方がいいみたいだな」
「はい、もう寝るね」とリリアは目を閉じる。
「あっ! その前にギルドの地下室の……」
「ん? 使用許可ね。わかった、わかった。鍵は机の中にあるから、自由に使っ……」
リリアは最後まで言うことなく寝息を、それから大きなイビキをかきはじめた。
トールは、ギルド長室の部屋を出ると、
「……ここ数日あった心の乱れが鎮まっている。こういう場合はアイツといると落ち着くと言うか……もしかして癒されているのか? 俺は?」
その事に気づくと軽く笑った。 そもそも、ギルドの地下室に来る理由は、心の動揺と治めるためだ。
地下には、捕獲された魔物……それも龍種に並ぶ強敵が閉じ込められている。
それらと戦い無心となるために訪れたのだが、
「まぁいいさ。俺の乱れは、おそらく――――」
(あぁ、不完全な形で俺と同化しちまったからな。こればっかりはしょうがねぇさ)
トールの心の奥底、もう1人の声――――復讐鬼の声が聞こえて来た。
(いいか? 俺とお前は同一じゃない。決勝が始まるより前に――――)
「わかっているさ。別物が精神で混同しているなら、俺はお前をコントロールしてみせる」
(へっ! ソイツは楽しみにしておいてやるぞ。いざとなったら、俺がお前をコントロールしてやっても構わないんだぜ?)
「そいつは面白い冗談だ。さて、地下室の向こうに――――」
(あぁ、俺たちを餌だと思って待機中だ。 教え込んでやろうぜ? 食事マナーってやつをよ!)
そうして2人のトールは地下室の扉を開いた。
それは教会で共に暮らす者たち、ハイド神父、レナ姫、グリアの3人も気づいている。
ついで、今もメイド服で奉仕活動を行っているイケメン女性騎士カイルでも気づいているほどだ。
しかし、4人は、トールの変化を踏み込んで彼自身に聞く事はしない。
なんとなくわかるのだ。 その変化に一番の動揺を見せているのはトール・ソリット自身である事を――――
1人、早朝の教会から出かけたトールは冒険者ギルドに入る。
ギルド自体は緊急の依頼があるため24時間閉まる事はない。
しかし、今日のトールは、ある意味では私用。
こそこそと隠れるように裏口から入った。
丁度、夜勤と日勤の交代時間だったらしく、受付嬢から
「おはようございますトールさん、今日も精が出ますね」
「あぁ、おはよう」と返してから、少し考えてから「お疲れ様」と付け加えた。
「くすッ」と笑って帰宅していった彼女。
「そう言えば……」とトールは、この姿になって初めて冒険者ギルドに来た時、対応してくれたのが先ほどの受付嬢である事を思い出した。
(そう言えば、魔力計測の水晶を割ったの弁償しなくてもよかったのだろうか? ……いや、なにより正式な謝罪をしていなかったな。今度、何かしなければ……)
そんな思考が、のちに大きな騒動を起こすのだが……それは、もう少し先の話である。
トールはギルド長の部屋の前に、ノックをして返事を待ってから入室する。
「う~ん、あれトールくんだ。 なんだか若返てない?」
ギルド長リリアの醜態を晒していた。 仮眠用のベッドに寝転んでいる。
服は乱れ、一部が脱ぎ棄てられている。 そして、ベッドの足元には酒瓶が少々……
「酔っているのか?」
「ンっ? 酔っぱらってないよ! リリアさんは酔ってません!」
「……水を汲んでくる。コップを借りるぞ」
「だめっ! どこ行くの!」
「むっ!?」とトールは驚いた。
古い顔馴染み……幼馴染と言っても良い関係性という事もって、普段はすることもない油断もトールは見せた。
背後から首根っこを掴まれ、そのまま引き倒される。
「ふっふっふ……捕まえた。いくらトールくんでもここじゃ私が王様なんだからね」
「うっ! 酒臭い」
「あれれ? トールくんは、まだお酒が弱いんだ。きゃわわわっ!」
「何がきゃわわわっ! だ。いい歳して……」
ピキッ! と空気が凍る音がしたが……トールは地雷を踏み抜いた事に気づいていない様子だった。
「あのね! 私だって朝まで飲酒をしたいわけじゃないのよ! 私だって家に帰りたい! でも、できないの……なんでかわかる?」
「い、いや、わからないが……」
「私が独身だからよ! 独身で仕事ができるからギルド長なんて……したくもない出世をしちゃったの! そして、それがどうしてか! わかりますか? トールくん!」
「い、いや……すまない」
「トールくんが私と結婚してくれなかったからです!」
「?!?!」
「なに、意外と心外が結婚したみたいな顔してんの? そうでしょ?」
「そんな事はない……と思うぞ」
「いいえ、あります! 若い頃の私は冒険者ギルドで働く受付嬢。トールくんは新進気鋭の剣士冒険者。 ところが、魔王たちの攻撃が活発化! 冒険者たちも戦争として参加しました。その時、私がトールくんに言った言葉――――覚えてる?」
「……覚えているさ」
「戦争で死ぬかもしれないから、結婚はできない。けど、もし生きて帰ってきたら――――その時は一緒になろうっていったじゃない!」
「そうだった……いや、待てよ? 本当にそんな事を言ったか? 俺が……いや、言ってないぞ!」
「あれ? そうだったけ? まぁいいや。責任取って結婚してねトールくん」
「はいはい。酔いが醒めたら思い出して、ベッドで足をバタバタさせた身悶える事になるんだから水を飲め、水を」
「はい、トールくん優しい~!」
ゴクゴクと勢いよく飲み込んだリリアは、
「ぶっはぁ!」と気管に入ったらしく、壮大に吹き出した。
気を緩めているトールだったが、流石に正面から顔面に受ける事はなく、実戦さながらの機敏さで回避した。
げほげほ……と咽るリリアの背中をさすり、
「もう、酔いを醒ますよりも寝た方がいいみたいだな」
「はい、もう寝るね」とリリアは目を閉じる。
「あっ! その前にギルドの地下室の……」
「ん? 使用許可ね。わかった、わかった。鍵は机の中にあるから、自由に使っ……」
リリアは最後まで言うことなく寝息を、それから大きなイビキをかきはじめた。
トールは、ギルド長室の部屋を出ると、
「……ここ数日あった心の乱れが鎮まっている。こういう場合はアイツといると落ち着くと言うか……もしかして癒されているのか? 俺は?」
その事に気づくと軽く笑った。 そもそも、ギルドの地下室に来る理由は、心の動揺と治めるためだ。
地下には、捕獲された魔物……それも龍種に並ぶ強敵が閉じ込められている。
それらと戦い無心となるために訪れたのだが、
「まぁいいさ。俺の乱れは、おそらく――――」
(あぁ、不完全な形で俺と同化しちまったからな。こればっかりはしょうがねぇさ)
トールの心の奥底、もう1人の声――――復讐鬼の声が聞こえて来た。
(いいか? 俺とお前は同一じゃない。決勝が始まるより前に――――)
「わかっているさ。別物が精神で混同しているなら、俺はお前をコントロールしてみせる」
(へっ! ソイツは楽しみにしておいてやるぞ。いざとなったら、俺がお前をコントロールしてやっても構わないんだぜ?)
「そいつは面白い冗談だ。さて、地下室の向こうに――――」
(あぁ、俺たちを餌だと思って待機中だ。 教え込んでやろうぜ? 食事マナーってやつをよ!)
そうして2人のトールは地下室の扉を開いた。
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