元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

チョーカー

決着 レナ対グリア  そして、もう1つの戦いも…… 

 『煉獄龍 攻勢の一撃』

 それはソリット流剣術において、攻撃の連続技の最後に使用される技。

 連続して剣を振るう事で得る反動や遠心力。 それらを利用して放たれる強烈な一撃。

 『華の盾フラワーシールド

 レナの魔法防御壁。しかし、強固であるはずの防御壁はグリアの剣に僅かに触れるだけで砕ける。

 「けど、欲しかったのは僅かでも止まる……その動きです!」

 レナは魔法の執行と同時に杖を走らせていた。 

 グリアが強烈な一撃によって防御壁を砕く僅かな時間。 どうしても起きる僅かなタイムラグに狙いを定めて、レナは突きを走られた。

 その瞬間、2人は同時に理解する。

 「「相打ち……でも――――」」

 そう理解しても攻撃を止めない。 攻撃を緩まない――――そのつもりだった。

 (でも、それでも私は――――)

 そう思ったのはグリアだったのか? レナだったのか?

 彼女は攻撃の手を緩めてしまったのだ。 

 当たれば死ぬ。 恨みはない相手どころか、好意すら抱いている相手を殺める……

 その事に彼女の決心は揺れ、剣のキレが落ちた。

 つまり――――

「すいません、甘えてしまいました。 グリアさんなら必ず私を殺したくない……そう思うはずだと……その気持ちを利用して、私は前に進みます!」

 その言葉を聞いたグリアの体から力が消え去り、手にした武器を地面に落とした。

 彼女は、途切れる意識を―――― 意識がなくなるよりも早く――――

 言わなくてはいけない。

「ううん、大丈夫だよ。レナちゃん……私はたぶん、貴方よりも本気じゃなかったんだ。貴方に取って大切な物を取り戻すための戦いだって……私は、知ったはずなんだけなぁ……」 

 最後には話す声ですら、途切れ途切れになり……それでも彼女はレナに伝え、意識を失った。

「……見事である」と離れた場所。 この戦いの主催者であるルキウス王は呟くように絶賛した。

 これは彼にとっても予想外の好勝負だった。

 ハッキリ言えば両者共に見劣りする。 いや、レナとグリアが弱者だと言うつもりはない。 だが、ルキウス王が用意した他の出場者は、いずれも規格外。

 よくぞ自分の代で生まれ、育ってくれたと王を持ってすら歓喜と感謝を示さんばかりの猛者揃い。

 そんな領域の戦いに2人を組み込んだのは、当事者たちの熱心な立候補があってこそ……

 多少なりに人数合わせと思っていた。 多少なりに見劣りするであろうと思っていた。

 「しかし、どうだろうか?」とルキウス王は問うように呟く。

「両者がここまでの戦いを見せた――――いや、見せれた理由は、おそらく精神力。言ってしまえば根性論のようなもの……しかし、それが見事に2人を花咲かせてみせたのだ……見事! それ以上の言葉があるだろうか? いや、ない!」

王自ら喝采を上げ、それに伝播するように王の護衛たちも喝采を送った。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

―――翌日―――

教会にて

「3人ともベッドから起き上がれないとなると私の負担が大きいですね」

「やれやれ」とハイド神父は濡れタオルの準備して、トール、レナ、グリアの看病に勤しんでいた。

「せっかく、新しい宝具が手に入りそうだと盗賊……いえ、顔見知りの商人さんから連絡があったのですがね」

 本当に残念そうにため息をついた。

「う~ん、それはすまない事をした。 動けるようになったら、何かお礼を」

 そう言うのはレナとグリアよりも早く回復傾向にあるトールだった。

「結構です。そうあらためて言われると……いえ、お礼と言うならば、勝ち抜いて国をとりもどしてくださいね」

「看病の礼としては、規模が大きいな」とトールは笑った。それから――――

「本当にいいのか?」と聞いた。

「何がですか?」

「何がって……本来なら今日は、試合の日だろ?」

 トールの言う通り……本当ならば、ハイド・アトキン対コリン・G・ハートの試合が行われる予定だった。

 しかし、ハイド神父は3人の看病を優先させて、戦いの場にはいかなかった。

「いやですね、トールさん。苦しんでる3人を置いて戦うなんて聖職者ぽくないじゃないですか」

 冗談交じりに笑うハイド神父は、まるで会話を早く終わられるように見えた。

 そして一方……試合の開催地。

 あいにくの天候。 土砂降りの中……ルキウス王は簡易的な(それでも十分すぎるほど豪華な)天幕の中でいた。

 それに対して、コリン・G・ハートは雨に打たれ、来るはずのないハイド神父を待ち続けていたのだが……やがて、激高し始めた。

「おのれ! おのれ、おのれ、おのれ……ハイド・アトキンめがぁぁぁぁ!?」

それを見たルキウス王も「もうよい」と言い放ち……

「勝者、コリン・G・ハート……見事? であった……」と自分の言葉に疑問符をつけなから立ち去った。

1人雨の中で残されたコリンは激怒の咆哮を上げた。 いつまでも……いつまでも……

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