元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
決着? トール対復讐鬼
ほら、よく言うだろ?
『復讐からは何も生まれない』 ……ってな。
そりゃ復讐から生まれた俺を全否定した言葉だぜ。
そもそも復讐心なんて精神の問題じゃねぇの?
何も生まれないって……そんな生産性があるとか、非生産性って話に持っていこうとしてるのは無理があるんじゃねぇかよ!
ゲラゲラゲラ…… なんてな。
俺だって本当はわかってるんだぜ? 俺は仮初の人格だってな。
復讐は何も生まれないって……本当に俺は存在してないんだよなぁ。
笑っちまうだろ? ゲラゲラゲラ…… でも、そりゃそうだ。
実際に復讐心を抱いて、そのまま復讐を実行する奴なんてほとんどいない。
家族とか、恋人とか、友人とか……誰かが他者に殺されたって、みんながみんな……悲しみを乗り越えて生きていくんだ。
だから、ほら――――復讐鬼なんて存在は、消え去っていくだけなのさ。 遅かれ早かれ……な?
けど、だからこそ――――ほしいじゃねぇか? 俺が生きた証ってやつがよ!
そんな意思……闘魂と言える精神の炎。 それが復讐鬼の全身を包み込む。
まるでトールから放たれる攻撃、打撃から守ってくれるように――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
打撃。
攻撃が通らない。だが、わかる――――他でもないトール・ソリットには、目前の復讐鬼がどのような状態なのか理解できてしまう。
他ならぬ自身の存在を燃やして、炎に変えて向かってきているのだ。
復讐鬼の存在が薄れて行く。だからこそ、彼は強く――――どこまでも強く――――
滅びに、破滅に向かっている。
だからこそ――――
「フン!」と蹴り。これは虚……だが、実際に当てる。
こうすると意識が足に行く。 少なくとも当たった瞬間の痛みに意識は持っていかれる。
だから当たる。 防御の意識から外れた顔面。
渾身の右ストレートに魔力を乗せて――――打ち抜く。
「?」
何が起きた?
記憶がない。 しかし、目前の復讐鬼の様子。
疲労が濃く、与えた記憶のないダメージが刻み込まれている。
(意識を失ったまま、戦っていたの? この精神世界で!?)
おそらく相打ち。 こちらの計画を読んでいて、カウンターを打たれたのだ。
しかし、精神の強弱が影響を与える精神世界で失神したまま戦っていたってどうい事だ?
いや、意識はあったのか? 記憶が継続されてないだけで瞬間瞬間の意識はあったのか?
――――いや、止めよう。 戦いの最中だ。
この思考が隙になる。 ほら、反応が遅れた。
一撃が俺の顔面に入る。 体が重い。
反撃が遅れて、さらに追加の攻撃を受ける。
ここで一気に終わられる気か? 復讐鬼の両足が地面から離れる。
大技だ。 飛んでから蹴り? 何が来る?
だが――――
「だが、舐めるなよ!」
飛びからの回し蹴り。 食らえば、そのまま決着となる。
しかし、そんな大技を食らうまで消耗してると思ったら大間違いだ。
防御したまま、間合いを詰める。
空中に浮いた復讐鬼にとってみたら蹴りを放つ空間《スペース》を潰された事になる。
2人は密着したように、地面に――――トールは復讐鬼を地面に叩きつけた。
精神世界に地面や体重の概念がどれほど反映されるのだろうか?
2人分の体重を浴びせられ復讐鬼は頭から地面に叩きつけられた。
トールは素早く立ち上がり、間合いを取る。
寝技の選択肢はない。
寝技の体力消費量は、想像以上に凄まじい。気を抜けば、すぐに動けなくなる。
そんな決着は望んでいない。 この精神世界での勝敗は曖昧では意味がない。
どこまでもわかりやすく――――誰が見ても納得するものでなければならない。
そう――――倒すべきは自分自身。 俺が勝ったと納得できねば勝ちではない。
だが、トールは願う。この世界の勝利条件には矛盾してる願い。
(頼む――――もう立ってくるなよ)
その一方に確信している。 必ず復讐鬼は立ち上がってくると――――
(早く――――立ってこい!)
その願い通り復讐鬼は立ち上がってきた。そして彼は言う。
「ここまでやっておいて決着を嫌うかよ。 どんだけ、自分に厳しいだ」
「あぁ、やるなら徹底的だ。 お前には、もう絶対に俺に勝てないと刻み込まないとな」
「――――へっ、あんたイカれてるよ」
「それはお互いさまだろ?」
「ゲラゲラゲラ……笑わせるなよ。笑うだけで体力がなくなっちまうぜ」
「そうか……終わりが近いな」
「なにが、終わりが近いな……だよ。 キリッ!みたいな顔しやがって」
「……」
「もう限界だぜ。これで決着をつけないと俺とお前の両方が消滅しちまう」
「え? そんなに危険な状態なのか? これ?」
「……相変わらず、危機感が欠如してんな。まぁいいぜ。これが最後の攻防のつもりで来い。俺は――――受け止めてやる」
「いいのか? それが最後の言葉で? それじゃ……お言葉に甘えて」
両者は間合いを縮めた。 そのまま拳を叩きこむ。
一撃、一撃が魔力を込められた一撃必殺の魔拳。
それでいて、どちらも倒れない。 どちらも後ろに下がらない。
だが、やがて――――どちらともなく攻撃が止まった。 勝敗は決した。
崩れ行く肉体。 それでも――――
「じゃな、俺は先に地獄へ落ちておくぜ。まぁ、疑似人格の俺に地獄があるなんてわからねぇが――――」
「いいや、消させないぞ?」
「てめぇ……何を? しやがるつもりだ」
「だって、お前は――――俺の人格の一部だろ? だったら――――
そのまま俺の中にいろよ」
『復讐からは何も生まれない』 ……ってな。
そりゃ復讐から生まれた俺を全否定した言葉だぜ。
そもそも復讐心なんて精神の問題じゃねぇの?
何も生まれないって……そんな生産性があるとか、非生産性って話に持っていこうとしてるのは無理があるんじゃねぇかよ!
ゲラゲラゲラ…… なんてな。
俺だって本当はわかってるんだぜ? 俺は仮初の人格だってな。
復讐は何も生まれないって……本当に俺は存在してないんだよなぁ。
笑っちまうだろ? ゲラゲラゲラ…… でも、そりゃそうだ。
実際に復讐心を抱いて、そのまま復讐を実行する奴なんてほとんどいない。
家族とか、恋人とか、友人とか……誰かが他者に殺されたって、みんながみんな……悲しみを乗り越えて生きていくんだ。
だから、ほら――――復讐鬼なんて存在は、消え去っていくだけなのさ。 遅かれ早かれ……な?
けど、だからこそ――――ほしいじゃねぇか? 俺が生きた証ってやつがよ!
そんな意思……闘魂と言える精神の炎。 それが復讐鬼の全身を包み込む。
まるでトールから放たれる攻撃、打撃から守ってくれるように――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
打撃。
攻撃が通らない。だが、わかる――――他でもないトール・ソリットには、目前の復讐鬼がどのような状態なのか理解できてしまう。
他ならぬ自身の存在を燃やして、炎に変えて向かってきているのだ。
復讐鬼の存在が薄れて行く。だからこそ、彼は強く――――どこまでも強く――――
滅びに、破滅に向かっている。
だからこそ――――
「フン!」と蹴り。これは虚……だが、実際に当てる。
こうすると意識が足に行く。 少なくとも当たった瞬間の痛みに意識は持っていかれる。
だから当たる。 防御の意識から外れた顔面。
渾身の右ストレートに魔力を乗せて――――打ち抜く。
「?」
何が起きた?
記憶がない。 しかし、目前の復讐鬼の様子。
疲労が濃く、与えた記憶のないダメージが刻み込まれている。
(意識を失ったまま、戦っていたの? この精神世界で!?)
おそらく相打ち。 こちらの計画を読んでいて、カウンターを打たれたのだ。
しかし、精神の強弱が影響を与える精神世界で失神したまま戦っていたってどうい事だ?
いや、意識はあったのか? 記憶が継続されてないだけで瞬間瞬間の意識はあったのか?
――――いや、止めよう。 戦いの最中だ。
この思考が隙になる。 ほら、反応が遅れた。
一撃が俺の顔面に入る。 体が重い。
反撃が遅れて、さらに追加の攻撃を受ける。
ここで一気に終わられる気か? 復讐鬼の両足が地面から離れる。
大技だ。 飛んでから蹴り? 何が来る?
だが――――
「だが、舐めるなよ!」
飛びからの回し蹴り。 食らえば、そのまま決着となる。
しかし、そんな大技を食らうまで消耗してると思ったら大間違いだ。
防御したまま、間合いを詰める。
空中に浮いた復讐鬼にとってみたら蹴りを放つ空間《スペース》を潰された事になる。
2人は密着したように、地面に――――トールは復讐鬼を地面に叩きつけた。
精神世界に地面や体重の概念がどれほど反映されるのだろうか?
2人分の体重を浴びせられ復讐鬼は頭から地面に叩きつけられた。
トールは素早く立ち上がり、間合いを取る。
寝技の選択肢はない。
寝技の体力消費量は、想像以上に凄まじい。気を抜けば、すぐに動けなくなる。
そんな決着は望んでいない。 この精神世界での勝敗は曖昧では意味がない。
どこまでもわかりやすく――――誰が見ても納得するものでなければならない。
そう――――倒すべきは自分自身。 俺が勝ったと納得できねば勝ちではない。
だが、トールは願う。この世界の勝利条件には矛盾してる願い。
(頼む――――もう立ってくるなよ)
その一方に確信している。 必ず復讐鬼は立ち上がってくると――――
(早く――――立ってこい!)
その願い通り復讐鬼は立ち上がってきた。そして彼は言う。
「ここまでやっておいて決着を嫌うかよ。 どんだけ、自分に厳しいだ」
「あぁ、やるなら徹底的だ。 お前には、もう絶対に俺に勝てないと刻み込まないとな」
「――――へっ、あんたイカれてるよ」
「それはお互いさまだろ?」
「ゲラゲラゲラ……笑わせるなよ。笑うだけで体力がなくなっちまうぜ」
「そうか……終わりが近いな」
「なにが、終わりが近いな……だよ。 キリッ!みたいな顔しやがって」
「……」
「もう限界だぜ。これで決着をつけないと俺とお前の両方が消滅しちまう」
「え? そんなに危険な状態なのか? これ?」
「……相変わらず、危機感が欠如してんな。まぁいいぜ。これが最後の攻防のつもりで来い。俺は――――受け止めてやる」
「いいのか? それが最後の言葉で? それじゃ……お言葉に甘えて」
両者は間合いを縮めた。 そのまま拳を叩きこむ。
一撃、一撃が魔力を込められた一撃必殺の魔拳。
それでいて、どちらも倒れない。 どちらも後ろに下がらない。
だが、やがて――――どちらともなく攻撃が止まった。 勝敗は決した。
崩れ行く肉体。 それでも――――
「じゃな、俺は先に地獄へ落ちておくぜ。まぁ、疑似人格の俺に地獄があるなんてわからねぇが――――」
「いいや、消させないぞ?」
「てめぇ……何を? しやがるつもりだ」
「だって、お前は――――俺の人格の一部だろ? だったら――――
そのまま俺の中にいろよ」
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