元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

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教会の戦い ハイド対コリン開戦②

 ハイド対コリン。

 その戦いは閃光のようだった。

 ハイドは剣を上へ――――上段の構え。

 一撃必殺の剣撃を狙ってくる。

 それを「……らしくない」とコリンは呟く。

 「何か言ったかい?」

 「暗殺者としては堂々と構え過ぎている」

 「――――私が貴方を正攻法で倒せないと」

 「笑うなよ。ハッタリが――――」

 コリンは最後まで言えなかった。 それよりも早くハイドが剣を振り降ろしたからだ。

 対して、剣を受けようとコリンは動く。 しかし――――

「……すり抜けた……だと!?」

 コリンには、ハイドの剣筋が見えていた。 そして、間違いなく受けたはずだった。

「いいえ、私の魔剣は刃が伸縮可能でしてね。ほら」

 ハイドの剣は、ナイフのように短くなっていた。 それがコリンが防御をすり抜けたように錯覚した理由。

 ハイドは、上段から袈裟斬りのモーションを行いつつも、同時に刃を短くしていたのだ。

 そして、既にハイドの剣はコリンの胸を貫いていた。 

「はい、刺突です」

 まるで、確かめ直すようにコリンの胸――――かつて心臓を一突きしたのと同じように――――貫いて見せた。

 「これで死ぬはずですが……」

 「あいにくだが……私は不死身なので」とコリンは胸に刺さった剣を掴もうとする。

 しかし、

「おっと危ない。 奪われるわけにはいきません」とハイドは後ろに飛ぶことで奪われるよりも速く剣を抜き取った。

「惜しい……武器さえ奪えば――――勝てないまでも、有利になったのに」

「どうでしょうかね? 間合い操作だけで翻弄されるほど力量差ならば、他の武器でも同じだとおもいますよ。でも――――」とハイドは言葉を続ける。

「この魔剣の名前は、トポロジーの縮剣。私の相棒と言えるほど信頼している武器なので、貴方に奪われるわけにはいきませんので」

 そう言いながら、距離を取る。 言葉とは裏腹に彼の本音は――――

(困りましたね。心臓を破壊しても痛がる素振りなし……内臓は機能として成立していない。例え心臓や脳を破壊して体外に取り出しても、思考と機能の遜色が起きないのでしょうね……言うならば因果操作系の不死身ですか)

 ハイドは瞬時に対不死身用の戦法を思い浮かべた。

 永遠と殺し続ける方法。

 どこかへ隔離して封印状態にする。

 あるいは精神汚染系の攻撃により、体より心を破壊する。

(さて、現時点で可能な方法は――――全てですね)

 ハイドが持つ魔剣 トポロジーの縮剣。 それは彼が言うように間合いを狂わせるためだけの剣――――ではない。

 間合い変化は、真の能力から漏れ出す効果の1つに過ぎない。

 しかし、ハイドが勝敗を急ぐのを躊躇する理由。 それはコリンが持つ能力にある。

 不死鳥から得た不死身の肉体……それだけではない。

 もう1つの能力。 それを直感的にハイドは気づいていた。

 そしてコリンは――――それを発動させる。

「私の不死身の肉体と拙い剣技で倒せないとなると、もう1つ……天使の力を使わせていただきます」

 コリンの背後、輝く何かが顕現する。 白く――――白銀の光。

 白き片翼。 天使の力を開放させた。

「……私も神の信徒なのですがね。天使を相手にするとなると……信仰心が試されますね」

 その笑いは余裕か? それとも――――

 ハイドは、魔剣を煌かした。しかし、目前のコリンは消えたかのように、高速で移動していく。

「速い! 身体能力が人間を――――」

 人間を超越している。そう言う暇すらなかった。  

「ちっ! 肉眼で捉えきれない速度で背後を襲うか!」

 それでも反応して、剣撃を払えるのはハイドの卓越した技術によるものか?

 コリンの猛攻。 ハイドは受けるのみ。

 反撃の糸口すら見当たらない。しかし――――

 一見すると防戦一方。 苦戦必至のように見えるのだが、それでも決定打を与えられない。

 コリンには仕留めきれない焦りというものはなかった。しかし、それでも疑問は浮かぶ。

(なぜ? 防御の時は、剣を短くして小回りを利かせている? そんな事だけで――――むっ!)

 コリンは引く。

 一瞬の隙をついてハイドの反撃。 刃をさらに短くして、体の末端を狙ってくる。

 手足……動脈を正確に狙い、コリンの体力を消耗させて――――

 強打として長剣を振る戦法。

(すごい。人の技術だけで、ここまで私に攻めてこれるなんて……残念です)

 ハイドの動きが急に止まる。 その足元には魔法陣が存在していた。

「無詠唱魔法。天使の力ですか?」

「はい、元より私の魔法は、相手の動きを少々封じる程度でしたが……今では貴方の動きですら封じられるみたいですね」

 コリンは剣を振るった。
  

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