元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

チョーカー

4人の頭目は曲者

 拮抗状態。

 戦闘冒険者集団のトップ。 狂戦士の武道家――――レイ・ガナハ

 武道武術の探求者 自称 極東の侍兼忍者――――トウゴウ・サトウ。 

 対するはトール・ソリットを頭目とした、レナ、グリアの3人。

 さらに北の町を代表する王室関係者のアナスタシア。その護衛も2人。

 トウゴウ・サトウとレイ・ガナハのコンビに合わせて、2人の護衛も動き始める。

「うむ、これは私闘ではすまないな」とガナハ。

「今なら、我々は引いてもいい……でござる」

アナスタシアは、トールの方を向くと、

「2人は、そう言っていますが――――トールさんでしたかね? どうされます?」

「俺は、自分の仲間を傷つけさえしなければいい。けど――――」

トールの精神。 普段、封じてある復讐鬼が囁く。

「殺せ!」とだけを繰り返し――――

「これ以上、やるなら自分を押さえれる自信はない」

「わかりました。 みなさん、武器を収めましょう。 こちらのトールさんの実力を確かめるのが、目的なら十分果たせたのでは?」

「うむ、俺は構わん。どうする? トウゴウ?」

「拙者も、構わない……でごわす」

「口調が変わってるぞ。……まぁいい、実力を見せてもらった」

 皆、それぞれ武器を収める。  

「では、これで……ところで今回の件で遺恨は残しませんよね? 依頼に支障がでたら困りますから」

「そこは、安心してください。皆さんはちゃんとした頭目ですから」とアナスタシアの言葉を受けて、トールたちは天幕の外に出た。

「すまなかった。助かったぞアナスタシア」

「はい? さっきまで私たちは敵対してませんでしたか? ガナハさん?」

「言わせるな。お前が敵対する事で、全面的な戦闘を回避してくれたんだろ?」

「さて?」とアナスタシアは微笑む。

「食えねぇ女だぜ。しかし―――」とガナハは考えるように、

「……何者だ? あの新人魔導士は――――名前が」

「えぇ、トール・ソリット。おそらくは本物でしょうね」

「年齢が違い過ぎる。それに剣士ではなく魔導士。だが……あの顔は10年前に戦った時と同じだった」

「拙者たち、忍びの情報によると――――トール・ソリットは脱獄して、以降の情報は何もない……でござるが、あの一行にいた女性はブレイク男爵のご息女だった……ござった」

「ねっ? だから、本物なのよ。 わかった」

「悪いが、俺はアンタほど妄信的じゃない。けど――――もしも、奴がトール・ソリット本人で、俺たちを殺す気だったら、誰も生きて帰れなかっただろう」

「……」と沈黙が天幕内を支配した。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「すまなかった。俺がもう少し、しっかりしてれば……戦闘そのものを回避できたはずだ」

 珍しく、うなだれるトール。 

「い、いえ、そんな事はありませんよ。トールさま」

「そうよ。レナちゃんの言う通りね。 アイツ等、好戦的過ぎだわ」 

「しかし、これが禍根が残る結果になって依頼が失敗に成ったら……」

「考えすぎですよ。アナスタシアさまも言っていたように、皆さんは冒険者として立場がある人間ですから依頼に私情を持ち込みませんよ」

 そんな慰めも届かず「はぁ」とトールはため息をつく。

 すると――――

「おやおや、元気が少ないみたいでんな。トールはん」と姿を現したのはフランカ・エチカ。

 商人気質の強い冒険者。 4人の頭目でいち早く、天幕から出て行った男だ。

「どうですか? エルフの秘薬の効果は? 何か、不都合な事はありまへんか?」

「……何の事だ?」

「かまへん、かまへん。エルフの霊薬をハイドはんに流したのも、脱獄のために首輪の職人を紹介したのも、全部自分でんがな! 全部、知ってますねん」

「ハイド神父……」とトールは頭痛がしてきた。

「そんなに心配せんでも、会話の盗み聞きを封じる魔道具を使ってますから」とエチカはズレた事を言う。

「せやせや、そのマント。 それもわてが御譲りした商品ですが新しい情報を――――おっと、これはアフターケアですから、無料でんがな」

 エチカはトールに紙を渡した。 それから「ほな! また用があったら来ますわ」と去って行った。

 どうやら、エチカが渡した紙に書かれている内容はマントの情報らしい。

「ん~ このマント……効果が全部わかってないのか。いや、呪われてないよな?」

 そう言いながら、トールは確認した。 冗談のつもりの言葉だったが、事実…・…

「これは……呪わてるじゃないか!」

 マントに隠されているとある効果を知り、愕然とするトールだった。

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