元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!

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今週の人工魔獣2号

 レナとグリアの2人が忘れていた冒険者ギルドから受け取った依頼内容。

 推奨ランク A

 討伐対象  人工魔獣《キメラ》


人工魔物キメラ討伐という事は……」

「うむ、さっきのは粘獣スライムじゃよ」と科学者はニンマリと笑う。

「それじゃ、次の人工魔物じゃ! いでよ!」

「――――ッ!」と2人はすぐさま戦闘事態に切り替わる。

「来ます!」とレナ。

「これが人工魔物《キメラ》の圧力!」とグリア。

 上から巨大な何かが落下してきて――――

「うむ! これが人工魔物第二弾……機神 ゴーレムじゃ!」

「え?」 「ん?」と2人はそれぞれ驚きの声を漏らした。

「ちょっと! アンタ、これのどこがキメラよ!」

「いや、機神ゴーレムと言ったじゃろ? メインイベントキメラまで、まだまだあるのじゃよ!」

 機神 ゴーレム。

 先ほどの粘獣と同じくらいの巨大さ。

「見た目が、明らかに従来のゴーレムとは違います!」とレナ。

「体が岩や鉱物じゃありません! 金属……それも鍛冶屋さんが鍛えて金属加工されているような滑らかな……」

「全身の外装を鍛冶屋で加工したって……幾ら予算をつぎ込んだのよ!」

 グリアは頭の中で鍛冶屋で発注した場合の値段を試算している。

「デュフフフ……冒険者ギルドから年末に余った特別予算を流してもらった特別人工魔物よ! さっきの粘獣を倒した貴様らでも、コイツは……いや、待て! 何をしようとしている!」

 科学者は焦った。 機神が起動するよりも早く、接近したレナは杖を振り回して――――

「止めろ! 止めんか! いきなり、弱点の足元を叩くな!」

 巨大な二足歩行。 その弱点は下半身、足元にある。

 頭部など重い箇所が高い部分にあるために自然と重心が高い。

 つまり、バランスが悪い。

 それを知ってか? 知らずか?

 「この! 倒れてください!」と豪快な打撃音が狭くない室内に轟く。

 レナの剛腕から繰り出されるフルスイングが何度も叩き込まれる。


 加えて――――

 高さが2倍になるに比例して重さは2乗になる事を考えれば、

 その重さは尋常ではなくなる。 稼働するのに必要な魔力《エネルギー》を節約して、戦闘速度を向上させるために、必然的にその装甲は軽量な素材に集中する。

「むむむ……やはり、二足歩行は無理か。 思い切って下半身を車輪にするか? しかし、それは可愛く……いや、ありじゃな」

「おやおや、依頼者さま。ずいぶんと余裕じゃないですか? ご自慢のゴーレムが倒れかけようとしているのに」

グリアの言う通り、ついに機神は大きくバランスを崩して倒れていく。 

「へっへっへ……ご自慢のゴーレム? その通りじゃ! 転んだ程度で打破できるとはゆめゆめ思わぬことじゃぞ!」 

「なんですって?」

「はっはっは……知っておるか? 昔の偉い人はこういう格言を残している?

 足なんてタダの飾りです……偉い人には、それが分からんのですとな!」

 機神の下半身に赤い線が入る。 そこに魔力が集中していき――――

 接近して打撃を繰り出すレナには、いち早くその正体に気づいた。

「風魔法と火魔法の属性? 2種類の魔力が混合しています」

 彼女の言う通り、機神の下半身は切り捨てられ、

 號――――と異音。

 機神の上半身は浮かび上がっている。

「予定とは、少しばかり違ってしもうたが……これで機神の飛行モードよ!」

「――――っ! レナちゃん、私が前線に行くわ!」

 グリアも前に、前衛を行う。 そのままレナは後退して、本来の役割である後衛に戻った。

「支援します。 すぐに結界魔法を――――『聖なる領域サンクチュアリ』」

 機神、その重量的な体を浮き上がらせる魔力には、膨大な魔素《マナ》と周囲から吸収する必要があるはず。

 だから、その供給をストップするために結界を張ったレナだったが……

「これは……妙です。魔素の流れを止めてもゴーレムの動きが滑らかなまま……」

 だが、事実。下半身を失った機神は機動力が落ちる様子もなく、 グリアに攻撃を開始している。

「こいつ、速い! その上、私の体を掴んで拘束しようとしてくる……このエッチ!」

「なら、こっちが逆に拘束してあげましょう! 『茨の罠スオントラップ』」 

 魔法の茨が機神に絡みつく。 一瞬、動きが止まった隙にレナは攻撃魔法を叩きこんだ。

『『聖なる光ホーリーライト』』

「や、やりましたか?」と半信半疑ながら、勝利の確信も――――

 だが、機神の動きは止まっていなかった。

 それどころか、その両腕に魔力が集中しているのがわかる。

「この魔法は! 私の――――」

 レナが何かを言い終えるよりも早く機神の魔法が終了する。

茨の罠スオントラップ

「――――っ! 魔法を、私の魔法を再現してみせた? ゴーレムがどうやって!」

 驚きの声を上げるも、地面からは魔法の茨が追尾してくる。 そして、それはレナだけではなくグリアにも及んだ。

「この! ――――!? しまった!」とグリアの足に茨が巻き付かれ、そのまま逆さ吊りで拘束された。

「グリアさん、なんとか助けます。すこし我慢していてください!」

 そう言いながら走り続けるレナだったが、その背後には捕縛魔法が追尾している。


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