元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
レナとのデート?
「凄いですね! 特別指令となると依頼達成前から報酬がこんなにも貰えるなんて!」
「あぁ、数日かかる場所への旅賃も含まれているからな。それに、準備に必要な予算と考えれば……それでも大きな報酬になるか」
「なりますよ! トールさまは元SSSランク冒険者だから、その報酬の高さに金銭感覚がマヒしてるのです!」
「まぁそうか……」とトールは投獄される前の貯金はどうなったのか? と思い出そうとしていた。
そもそも特別指令は2人で行うものではない。 Aランク冒険者でれば、人数は10人以上の大規模で行うものだ。
そのため、人件費が浮いたというのもある。
「そうか、今は移動手段と宿泊施設の予約はギルドが請け負ってくれるようになっているのか? それじゃ必要な装備と備品の買い出しを今日中に終わらせて出発は明日で構わないか?」
「そうですね。 それでは買い物と参りましょう」
レナは照れたように小声で言ったが、トールの耳には届いていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「回復術士の装備か……北の町は、ここよりも寒い。もう冬用の装備で想定していた方がいい」
「本格的な冬まで3か月くらいはありますよ? そんなに寒いのですか?」
「特別、標高が高い地域だからな。もうすでに雪は降っているはずだ」
「この時期に冬用装備って打ってますかね?」
「あるさ。古くから冒険者専門を謳っている店なら」
2人は、商店街を歩く。
「ん? おかしいな。平日とは言え、午後でこんなに人が少ないものなのか?」
商店街は閑散としていて、人の気配すら少ない。
もう閉店して久しいような店も多く見えた。
「トールさま、近くに大型の複合商業施設《コンプレックス》ができて、多くの皆さんが、買い物をそちらで済ますようになりました」
レナの説明にトールは天を見上げて、時の速さを噛み締めた。
「たった10年で、ここまで変わるものなのか……」
「あっ、でも商店街も素敵ですよ。 こう……独特なファッションや個性的な小物もありますね」
レナは店の中にあるぬいぐるみを指さした。
「あれは……リザードマンのぬいぐるみか?」
「もう、トールさま。馬のぬいぐるみですよ」
「……馬?」と小首を傾げるトール。 彼の知る馬とは、大きく違っていた。
「何だい? 冷やかしはお断りだよ」と店の中から老婆がギロリと睨みつけて来た。
「す、すいません。何か買います」とレナは謝罪するが……
「いいや、ばあちゃん。客だよ。北の町に行くから冬用の装備を急いでいるんだ」
「……あんた? 仕方ないね。じゃ適当に見繕ってやるよ」
老婆は店の奥に姿を消した。
「あの……目的の店ってここだったのですか?」
「あぁ、ばあちゃん。まだ現役でよかった」
暫く待つと、老婆が荷物をもって現れた。
「今更だけど、冬場は鉄の装備は危険だからね。冬用の緩衝着と羊毛のサーコートだよ」
「うん、これだけで剣や槍でも耐えれそうだ」
「馬鹿言うんじゃないよ。 そんな甘い事言ってたら命なんて簡単になくしまうんだからね! こっちは女性用だ。お嬢ちゃんはサイズをちゃんと合わせるんだよ」
老婆は、レナに服を投げて渡すと、更衣室を指さした。
「それじゃ着替えてきます」とレナは簡易的とも言える更衣室の中に入っていた。
残されたトールは老婆に値段を尋ねた。
「おばあちゃん。それで、全部でいくらになりそう?」
「賃金はいらないよ」
「はい?」
「爺さんも亡くなってな……この店も今月中に畳む事になったわ」
「そう……だったのか」
「店じまいに在庫をタダで配ったりしてたんだ。あんたは運が良い。持って行きな」
「わかったよ。それじゃ……あと」
「なんだい?」
「店がなくなる前に、今月中にまた来るよ」
「はっ馬鹿な子だね。北の町で仕事があるんだろ? くだらない事で雑な仕事をするんじゃないよ」
「いえ、必ず来ます」
「――――そうだね。《《また》》待ってるよ」
そう会話を交えていると、
「どうですか?」と着替えたレナが顔を出した。
普段、トールと同じで軽装の装備を好むレナだが、分厚く温かい生地の服を確かめるようにクルクル回って動きを確認する。
「問題はなさそうだ。 普段通りに動けるか?」
「ん~ 問題はありません」
「それじゃ、これに決めるか?」
「はい」と彼女は微笑んだ。
2人が店を出ようとすると――――
「待ちな。コイツは餞別だよ」と老婆は箱を手渡してきた。
「これは?」
「爺さんの遺言でね。もしも、あんたが店に姿を見せたら渡せってね。帰ってから開けな」
「ありがとう。大切に使わせてもらう」
「礼は私じゃないよ。帰ってきたら、爺さんに礼を言いな」
「あぁ必ず……」と言い残して、今度こそ店を後にしたトールだった。
「あのお婆さん、トールさまの事を気づいてましたね」
「あぁ、10年以上前からの付き合いだからな。髪型や色を染めただけじゃわかるか」
「……そうですか」
「心配か? あのお婆さんが俺の事を通報するかもって?」
「いえ、それはありません。トールさまの顔を見れば、あの方を信頼しているのがわかりますから」
「うん、早く特別指令を終わらす理由ができたな」
「そうですね。あ……あの……」
「ん?」
「もう少しだけ、買い物を……いえ、デートを続けてもいいですか?」
「そうか、それじゃ新しくできたって言う複合商業施設の案内を頼もう」
「やりました! はい、喜んで」とレナは微笑んだ。
「あぁ、数日かかる場所への旅賃も含まれているからな。それに、準備に必要な予算と考えれば……それでも大きな報酬になるか」
「なりますよ! トールさまは元SSSランク冒険者だから、その報酬の高さに金銭感覚がマヒしてるのです!」
「まぁそうか……」とトールは投獄される前の貯金はどうなったのか? と思い出そうとしていた。
そもそも特別指令は2人で行うものではない。 Aランク冒険者でれば、人数は10人以上の大規模で行うものだ。
そのため、人件費が浮いたというのもある。
「そうか、今は移動手段と宿泊施設の予約はギルドが請け負ってくれるようになっているのか? それじゃ必要な装備と備品の買い出しを今日中に終わらせて出発は明日で構わないか?」
「そうですね。 それでは買い物と参りましょう」
レナは照れたように小声で言ったが、トールの耳には届いていた。
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「回復術士の装備か……北の町は、ここよりも寒い。もう冬用の装備で想定していた方がいい」
「本格的な冬まで3か月くらいはありますよ? そんなに寒いのですか?」
「特別、標高が高い地域だからな。もうすでに雪は降っているはずだ」
「この時期に冬用装備って打ってますかね?」
「あるさ。古くから冒険者専門を謳っている店なら」
2人は、商店街を歩く。
「ん? おかしいな。平日とは言え、午後でこんなに人が少ないものなのか?」
商店街は閑散としていて、人の気配すら少ない。
もう閉店して久しいような店も多く見えた。
「トールさま、近くに大型の複合商業施設《コンプレックス》ができて、多くの皆さんが、買い物をそちらで済ますようになりました」
レナの説明にトールは天を見上げて、時の速さを噛み締めた。
「たった10年で、ここまで変わるものなのか……」
「あっ、でも商店街も素敵ですよ。 こう……独特なファッションや個性的な小物もありますね」
レナは店の中にあるぬいぐるみを指さした。
「あれは……リザードマンのぬいぐるみか?」
「もう、トールさま。馬のぬいぐるみですよ」
「……馬?」と小首を傾げるトール。 彼の知る馬とは、大きく違っていた。
「何だい? 冷やかしはお断りだよ」と店の中から老婆がギロリと睨みつけて来た。
「す、すいません。何か買います」とレナは謝罪するが……
「いいや、ばあちゃん。客だよ。北の町に行くから冬用の装備を急いでいるんだ」
「……あんた? 仕方ないね。じゃ適当に見繕ってやるよ」
老婆は店の奥に姿を消した。
「あの……目的の店ってここだったのですか?」
「あぁ、ばあちゃん。まだ現役でよかった」
暫く待つと、老婆が荷物をもって現れた。
「今更だけど、冬場は鉄の装備は危険だからね。冬用の緩衝着と羊毛のサーコートだよ」
「うん、これだけで剣や槍でも耐えれそうだ」
「馬鹿言うんじゃないよ。 そんな甘い事言ってたら命なんて簡単になくしまうんだからね! こっちは女性用だ。お嬢ちゃんはサイズをちゃんと合わせるんだよ」
老婆は、レナに服を投げて渡すと、更衣室を指さした。
「それじゃ着替えてきます」とレナは簡易的とも言える更衣室の中に入っていた。
残されたトールは老婆に値段を尋ねた。
「おばあちゃん。それで、全部でいくらになりそう?」
「賃金はいらないよ」
「はい?」
「爺さんも亡くなってな……この店も今月中に畳む事になったわ」
「そう……だったのか」
「店じまいに在庫をタダで配ったりしてたんだ。あんたは運が良い。持って行きな」
「わかったよ。それじゃ……あと」
「なんだい?」
「店がなくなる前に、今月中にまた来るよ」
「はっ馬鹿な子だね。北の町で仕事があるんだろ? くだらない事で雑な仕事をするんじゃないよ」
「いえ、必ず来ます」
「――――そうだね。《《また》》待ってるよ」
そう会話を交えていると、
「どうですか?」と着替えたレナが顔を出した。
普段、トールと同じで軽装の装備を好むレナだが、分厚く温かい生地の服を確かめるようにクルクル回って動きを確認する。
「問題はなさそうだ。 普段通りに動けるか?」
「ん~ 問題はありません」
「それじゃ、これに決めるか?」
「はい」と彼女は微笑んだ。
2人が店を出ようとすると――――
「待ちな。コイツは餞別だよ」と老婆は箱を手渡してきた。
「これは?」
「爺さんの遺言でね。もしも、あんたが店に姿を見せたら渡せってね。帰ってから開けな」
「ありがとう。大切に使わせてもらう」
「礼は私じゃないよ。帰ってきたら、爺さんに礼を言いな」
「あぁ必ず……」と言い残して、今度こそ店を後にしたトールだった。
「あのお婆さん、トールさまの事を気づいてましたね」
「あぁ、10年以上前からの付き合いだからな。髪型や色を染めただけじゃわかるか」
「……そうですか」
「心配か? あのお婆さんが俺の事を通報するかもって?」
「いえ、それはありません。トールさまの顔を見れば、あの方を信頼しているのがわかりますから」
「うん、早く特別指令を終わらす理由ができたな」
「そうですね。あ……あの……」
「ん?」
「もう少しだけ、買い物を……いえ、デートを続けてもいいですか?」
「そうか、それじゃ新しくできたって言う複合商業施設の案内を頼もう」
「やりました! はい、喜んで」とレナは微笑んだ。
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